アナザーワールドシェフ

しゃむしぇる

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第一章 龍の料理人

第4話

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 来た道を戻り、再び中庭へとやって来たが……

「ただでさえこちらの世界の野菜や植物のことを知らないのに……こんなに雑草だらけでは、食べられそうな植物を探すことすら大変そうだな。」

 下手したらこの植物の中に毒があるものも紛れているかもしれない。だがまぁ……ひとまず食べられるか食べられないかは別として探してみないことには始まらないか。

 念のため見つけられたものはカミルに見てもらった方がよさそうだ。
 わからないことは聞く。それが一番失敗せず上達する方法だ。変に意地を張って、わからないことをそのままにして失敗するよりかは遥かに合理的。まぁ時には自分で調べることも大事だがな。

 ……っと、さてここで立ち往生している暇があったら手を動かすとしようか。

 生い茂った腰の背丈程もある雑草を手で掻き分け、食べられそうな植物を探す。芋とか、香り高い香味野菜みたいなのがあれば最高だが、そんなに都合よく自生しているものだろうか?

 少し不安になりつつも根気よく、雑草を掻き分けながら周辺を歩き回っていると……。

「…………おっ?これは……芋づるか?」

 雑草を掻き分けているとようやく、城の城壁へと向かって伸びている蔓のようなものを見つけることができた。
 その蔓にはむかごのような実もくっついていることから、芋づるで間違いないだろう。

「よしっ、後はこれを辿って根本を掘り起こしてみよう。」

 自然薯のようなものがあるのなら、それを使った付け合わせとかスープとかが作れるだろう。

「こんなことになるんだったらスコップとかも買っておくべきだったな。」

 まぁまさかこんな異世界に急に放り出されるなんて日本にいた頃は思っても見なかったけどな。

 愚痴を言いながらも、その辺に転がっていた石と自分の手を使って蔓の根本を掘る。幸い土が柔らかいし、土の中に石がごろごろと転がっているわけではないからサクサクと掘り進められた。

 そして蔓の根本を少し掘り進めると、私が求めていたものが姿を現した。

「よし……よしっ!!芋だ。」

 自分の予想が当たっていたことに大きな喜びを覚える。何せ日本で取得した知識が、こちらの世界でも通用することがわかったのだから。

 一度喜びというものを味わうと、途端に楽しくなってしまい掘るペースも上がった。するとあっという間に……。

「採れたッ!!」

 泥だらけになった両手で土の中から自然薯のような芋を丁寧に取り出す。これでまず一つだ。

「そういえば……これをインベントリとやらに仕舞うことはできるのか?」

 ひとまずインベントリを呼び出してみるか。

「インベントリ。」

 念を込めてインベントリと言うと、目の前にさっき見た画面が表示された。

「えっと?どうすればいいんだ?近づけてみればいいのか?」

 どうすれば仕舞い込めるのか分からないので、ひとまずこの芋を画面に近づけてみることにした。

 するとどうだろう?手に持っていた芋が一瞬で消え、インベントリの欄に追加されたのだ。

「この方法で合ってたみたいだな。」

 よし……この調子でどんどんいくぞ。開いたインベントリを閉じて私は再び雑草を掻き分け、食べられそうな植物を探し始めるのだった。









「ふぅ……意外に集まったな。」

 顔を伝っていた汗を拭い、私はインベントリを開く。するとそこには、採取した食べられそうな植物がいくつか並んでいる。

 あの自然薯のような芋を採取した後、私はいくつか見たことがあるような植物を見つけていた。
 例えば球根が玉葱のようになっていた植物や、アサツキのように細いネギのような植物、後は大根や人参等の根菜のような植物等々様々なものを集めることができた。
 
「後はカミルが帰ってくるのを待つだけ……だな。」

 カミルはこの野菜っぽい植物を見たときどんな反応をするだろう?「そんな草なんかを食べるのか!?」とか言いそうだな。
 
 と、そんなことを思っていると私の上空で何かが羽ばたく音が聞こえてきた。ふと、上を見上げるとそこには……ドラゴンの姿になっているカミルがいた。その手には大きな鶏のような生き物が抱えられている。

「待たせたようじゃなミノル!!」

 バサバサと大きな翼を羽ばたかせ、カミルは私の前に降り立った。

「おぉ?それは……鶏か?」

「うむコカトリスじゃ!!……と言ってもわからぬよな。まぁちょっと大きな鶏という認識で構わぬ。ちと石化の魔眼が厄介じゃがな。」

 くつくつと笑いながらカミルはさらっとコカトリスのことを教えてくれた。
 なにやら視線を合わせると相手を石に変えてしまう、厄介な魔眼という物を持っているらしい。

「今これと目を合わせても大丈夫なんだよな?」

「問題ない、もう既に息絶えておる。死んだものは魔法を使うことはできぬからな。」

「なら安心だ。調理中に石にされたらたまったもんじゃないからな。」

 にしても鶏……か。また色々と使い道があるやつを用意してくれたな。解体して余ったガラからはいいブイヨンがとれそうだ。それに焼いて出てきた脂は鶏油としても活用できるだろう。
 まさに棄てるところが見当たらないな。全て活用させてもおう。

「さてじゃあ早速料理に……と言いたいところなんだが、その前にカミルに確認してほしいものがあるんだ。」

「ふむ、なんじゃ?」

「これらの植物に毒があるかないかを確認して欲しい。」

 私はインベントリから先ほど採取した植物をカミルの前に並べた。

「まっ、まさかミノルお主!?」

「もちろん、毒がなければな。」

 まさかカミルが本当に予想通りの反応をしてくれるとは思っていなかった。思わず笑みがこぼれてしまう。

「うぅ~これらに毒はないが……本当にこんな物が食べられるのかの?こいつなんかネバネバして土の味しかせんし、こっちの丸いのは辛いし……。」

 どうやらカミルは一度これらを食べたことがあるらしい。しかしながら美味しく食べることはできなかったようだが……。

「まぁ任せてくれ。もし、私の料理を食べて美味しくなかったら……。」

「そ、そこまで言うのなら……わかったのじゃ。」

 よし……それじゃあ一つ、存分に腕を振るわせてもらうとしようか。カミルに私がこの世界とは違う世界で学んできた料理というものを見せてやろう。
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