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第二章 平和の使者

第118話

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 エルフの国から帰って来て、ノノと共に料理支度を進めている最中、私はカミル達にあることを問いかけてみた。

「そういえば……カミル達はアベルに他の龍の説得を頼まれてたんだよな?そっちは上手くいってるのか?」

 すると、ギクッとまるで痛いところを突かれたようにカミル達は顔を青くした。その表情で私は全てを察した。

「あまり芳しくないようだな。」

「まず、その提案をするために五龍集会を開かねばならんのじゃ~。」

「そうそう、それが一番面倒なのよね。どこをほっつき歩いてんのかわからないボルトを探さないといけないし、岩に擬態してるアスラを見付けないといけないしでね~。」

 はぁ~……と大きく二人は溜め息を吐いた。

 どうやらその五龍集会を開くためには色々と準備が必要みたいだな。

「まぁ、あまりその五龍のことを知らないから……大した言葉をかけてはやれないが、できることから始めたらいいんじゃないか?」

「できることから……のぉ。」

「となると、やっぱりウルからよね。」

「確かそのウル……ってやつは海街のウルジアにいるんだよな?」

 前に海街のボルドに行くときにウルジアかボルドかの二択になったことを覚えている。

「その通りじゃ。」

「なら明日にでもウルジアに行ってみればいい。最近肉料理が続いてたし、ついでに新鮮な魚も買いにいきたい。」

「う~……あまり気は進まぬが、何か行動を起こさねばならんのも事実。行くしかないかのぉ~。」

「現状居場所がわかってるのがウルしかいないしね~。まぁ、でも今回はミノルがちゃんと魔王様の料理人だって証明書もあるし、問題は起きないと思うわ。」

「そうだと良いんじゃがのぉ~。」












 そして次の日……。私達はいよいよ水龍のウルとやらがいるウルジアという街に向かって飛んでいた。

「なぁ、カミル。ウルジアってどんな街なんだ?」

「この国で一番大きな海街じゃ。ボルドの倍ぐらいあるのではないかの?」

 そんなに大きいのか、なら色々な魚を見ることができそうだな。少しワクワクしていると、私を抱えて飛んでくれているカミルが呟いた。

「見えてきたのじゃ。」

 カミルが眺めている方に視線を向けてみると、そこには高い壁で囲まれた白一色の街が見えてきた。その街の向こう側にはキラキラと輝く海がある。

「真っ白な街なんだな……。」

「ウルが支配するようになってから街全体を塗り直したんじゃ。」

「じゃあ前は普通の街並みだったってことか?」

「そういうことじゃな~。」

 街全体を白に塗り直させるって……。マジか。驚愕の事実に驚きを隠せずにいると、奥に見える海に大きな渦潮が見えた。

「ウルがこちらの気配に気が付いたようじゃな。」

 すると、その渦潮の中心から大きな水飛沫をあげながら一匹の蒼い龍が姿を現した。

「あれが水龍のウルじゃ。」

 ウルはゆっくりとこちらに向かって飛んでくると、私達の前で止まり口を開いた。

「ふあぁぁ~……こんな朝早くに何の用?」

「ウル、7日後に五龍集会を開きたい。今回は特にお主とボルトには絶対に来てもらわねばならん。」

「えー……面倒だなぁ。それってそんなに重要なことなの~?」

 面倒くさそうにウルは言う。

「後々この国の明暗を分けることになる程重要じゃ。」

「……へぇ?それは面白そう。」

 カミルの言葉に、ウルの表情が変わる。

「わかった。場所はいつものとこでいい?」

「うむ。」

 ウルが五龍集会に来ると約束してくれて一安心していたのだが、そんな時……さっきまで晴れていた空が突然黒い雲で覆い尽くされた。
 そしてその黒い雲の中から大きな声が雷鳴のように轟いた。

「話は聞かせてもらったぜ!!」

 その声が響いた次の瞬間、バチッ……と電気が弾けるような音がしたと思うと、大きな雷が私達の前に落ちた。その中から稲妻を体に纏う金色の龍が姿を現した。

「なんじゃ、ボルト。お主も居ったのか。」

「はっ、テメェ等の集まる気配がしたからな。ここに向かって飛んできたらよ、なんかおもしれぇ話してんじゃねぇか?お?」

「聞いておったなら話は早い。7日後に五龍集会を開くからお主も来い。」

「あ~あ~!!それはもう聞いた。俺が聞きてぇのはその後の話だ。さっきカミルこの国の明暗を分けるつってたよな?それはどういう意味だ?」

「あ~……それはじゃな。」

 今ここであれを言うべきか悩むカミルにヴェルが声をかけた。

「どうせアスラは賛成するんだし、今ここでこの二人説得しちゃえば?」

「……それもそうじゃな。」

「「説得?」」

 説得……という言葉にウルとボルトの二人は首をかしげる。

「単刀直入に言わせてもらう。魔王様は人間との平和を望んでおる。その望みを叶えるためお主等の力を貸せ。」

「ふぅん……そういうことだったんだ。」

「…………おもしれぇ話だと思ったんだが、ガッカリだぜ。悪いが、俺はそんな生温い思想の為に力を貸すなんざ御免だぜ。」

「生憎僕も人間と仲良くするなんて御免だね。正直な話、カミル……君が抱えてるその人間を見てるだけでイライラするんだ。」

 どうやらウルには私が人間であるということがバレている。そして私が人間であると知ったボルトは体にバチバチと雷を纏い始めた。

「この人間は魔王様が探しておった人間じゃ。殺すことは許さぬぞ。」

「はっ!!そいつは好都合だぜ、いい加減あのお優し~いの配下になってんのは飽きてたんだ。そいつをぶっ殺して、俺は自由になる!!」

「ボルト、この際カミル達も殺しちゃえばいい。そうすれば後はアスラだけだし?」

「ウルにしちゃあ頭が回るじゃねぇか、そうと決まればテメェ等まとめてぶっ殺してやるぜ!!まずは……テメェからだ人間ッ!!」

 ボルトが私に狙いを定めた次の瞬間……私の首に向かって雷撃が飛んできた。
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