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第三章 魔族と人間と

第157話

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 イフリートが一人必死になって頑張っているなか、私達はシルフが連れてきたウンディーネとノームと楽しくお菓子を交えたお茶会を開いていた。

「イフリーまだやってるね。ねっ?」

「あいつは頑固だからナ~。意地張ってるんじゃないのカ?」

「それがイフリートちゃんですから~ね。健気で可愛いじゃないですか。」

 イフリートの他の三人の精霊は、イフリートが頑張る姿を眺めながらお菓子とお茶を嗜んでいる。
 そんな彼女達の姿を見てイフリートが声をあげた。

「何であんた達はそこで呑気にやってるのよ!!」

「お主が言ったのじゃろう?……とのぉ~。」

 くつくつと笑いながらカミルは言った。そして見せつけるようにお菓子を一つまた口の中へと放り込んだ。

「ん~っ!!相変わらずノノ、お主が作る甘味は最高じゃの~。」

「えへへ、ありがとうございます!!あ、こっちも食べてみてください。」

「ぐぬぬぬ……ちょっとそこの獣人の子!!あたしにもお菓子頂戴よ!!」

「あぅ……ご、ごめんなさい。お師様にダメって言われて……。」

「なっ!?なんですってぇ~っ!!」

 すると、ジロリとイフリートは私の方を睨み付けてくる。そんな彼女に私はポツリと一言だけ言った。

「カミルと協力してくれたらお菓子をあげてもいいぞ?」

「うっ……で、でもこのぐらい……もう少し時間があれば。」

「ちなみにお菓子は有限だからな。ここにあるので全部だぞ?」

「なっ!?」

 時間をかけてでも一人で完遂しようとしていたイフリートに私は追い討ちをかけるように、そう付け加えた。

 すると、その一言で彼女の心はポッキリと折れてしまったらしい。

「あたしもお菓子食べたいわよ~!!ぐすっ……もう協力するからぁ~。」

「まったく、最初からそうしておけば良かったものを。……どれ、あまり気は進まんがサクッと終わらせてくるのじゃ。」

 なんだかんだ言いながらも、カミルは腰をあげてイフリートの方へと向かう。

「繊細な制御は任せるのじゃ。生憎妾は強すぎる炎の制御は苦手でのぉ~。」

「任せられたわよ。」

「制御できねばこの森が火の海になるからの?頼んだぞ~。」

「ふん!!」

 カミルがホムンクルスの核に向かって手を翳すと、昨日とは比べ物にならないぐらいのスピードで核が真っ赤になっていく。

「あと一押し……じゃな。耐えれるかの?チビ助。」

「ぐぐぐ……誰に物言ってんのよ!!このぐらい余裕よ!!余・裕!!」

 さらにカミルが火力を上げると、ようやくホムンクルスの核がドロリと融けて一つになった。

 後はこれを型に流し込んで固めれば……。

「二人ともよく頑張ったな。ホムンクルスの核の完成だ。」

 多分、イフリートがもっと早くに折れててくれれば……もっと早くできたんだろうが。まぁ、終わりよければ全て良しってやつだな。

「ふん!!このぐらいどうってことないわよ!!それよりもあたしにもお菓子食べさせなさい!!」

 そうしてイフリートはノノにお菓子を貰いに行った。

「まったく、手間のかかるやつじゃったのぉ。」

 戻ってきて、私のとなりにどかりと座り込んだカミルはため息混じりに言った。

「まぁでも、イフリートの力がなかったら……無理だったんだろ?」

「う~む、融かせんことは無かったと思うのじゃが……辺り一帯が灰になるやもしれんかったのじゃ。」

 なるほどな。昨日はカミルが自分で制御できる限界の力でやってたってわけか。

「ま、こうして妾が全力を出すことができたのは、紛れもなくあやつの力のお陰じゃな。」

「お、カミルがそんな風に褒めるなんて珍しいな。」

 彼女は、私達……カミルの城に居候してる面子には比較的優しく接してくれるが、なかなかこういう風に他のだれかを褒めることはあまり無い気がする。

「妾だって褒めるときは褒めるのじゃ。その証拠に良くミノルやノノの事を褒めておるではないか。」

「それは身内だからだろ?少なくとも私は今まで一緒にいて初めて聞いたぞ?」

「う~む?そうじゃったかの~。」

 ま、カミルが褒めるほどイフリートは優秀だったってことだな。ちょっと性格はあれだが……慣れれば扱いやすいのかもしれない。

「まぁ、そんなことは置いておくとしてじゃ……ミノルや。約束は忘れておらんじゃろうな?」

「成功報酬のことだろ?」

「うむ!!」

 カミルは満足そうにうなずいた。

「今食べてるだろ?」

「………………はっ!?」

「マームとヴェルは城でお留守番してる。その間にカミルはこうしてお菓子をつまんでる。……これ以上ない成功報酬だと思うが?」

「なんとな!?そ、そうとあっては呑気に食べている場合ではないのじゃ。ノノ!!妾にどんどんお菓子を持ってくるのじゃ~!!」

「ちょっとあんた食べ過ぎじゃない!?さっきからずっと食べてたでしょ!!」

 賑やかなお茶会はお菓子が無くなるまで続いたのだった。

 帰ってからマームにお菓子の匂いを感付かれ、結局皆にもお菓子を作るはめになったのは言うまでもない。
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