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真のゲームが動き出す

ゲームの鍵を握る者

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カツンと保健室の鍵が掛かる音が聞こえたので、私は心が赴くままにオースティンに擦り寄った。


隙間なんかないくらい、私からも抱き着いた。


「私はオースティンと一緒に居て、嫌だと思った事は1度もないわ。あの最低な前世の記憶を否定してくれたのが、オースティンとの時間なの」


同じ行為でも、オースティンとアイツでは何もかもが違うのだと教えてくれた。


「その…………言葉にすると恥ずかしいけど…………あの……………オースティンと…するのは好き………気持ちいいから」


「本当に?」


不安そうに見つめるオースティンが愛おしくて、お臍の周りがキュンとして、無意識に股をすり寄せていた。


「嘘なんてつかないわ。だってオースティンになら分かるでしょう?ちゃんと私を見ていたからその…………気持ちいいと……あんなに……アソコが濡れるなんて………………知らなかったわ」


自分で言っていて恥ずかしいです。


でも、我慢です。


「本当の事を言うと、ランスロット様が婚約の破棄を受け入れるのは当然だと思っていたの」


「ん?お前ら仲は悪くなかったよな?」


「えっと悪くなかったけど、良くも無かったわ」


「だがリリーから頬や額にキスをしていただろう?」


よく見ているわね。


「あれは妥協していたの………その………ランスロット様が太ももに触れただけで鳥肌が立って、気持ち悪くてグーで殴った事があって、私から頬とかにキスするのは平気だったから、慣れるために仕方なくしていたの」


ランスロット様の名誉の為にも黙ってあげるように、アスランお父様に言われていました。


「もっと触って欲しいと思ったのはオースティンだけなの」


私からオースティンにキスをする。


触れるだけの軽いものでなく自分の舌を入れて、彼の口の中を撫でていく。


すると少し目を見開いてビックリした顔をした後、微笑む様に目を細めたオースティンが、私の後ろ頭に手を添え、私のキスに応えるように舌を絡ませてくれる。


グチュグチュと水っぽい音が頭の中に響き、胸がツンと反応していた。


「オレは、ちゃんとリリーを愛せているか?」


「私は幸せよ」


「そうか」


またギューって抱き締められた。


するとラフレアが腕に抱き着くクロフォード様の姿を思い出した。


私に微笑んだ後、ラフレアを見る目が笑っていなかった。


クロフォード様を私は知っている気がするのに思い出せない。


それにモーガンが好きだと言いながら、目の奥が冷めているマルガリータを思い出した。


本気で好きなのかしら?なんか違和感がある。


「ラフレアは、クロフォード様と一緒にいるのかも知れませんわ」


「ん?」


「ラフレアがクロフォード様に擦り寄っていたので、もしかしたら何か知っているかも?」


「そう言えばクロフォードもだが、ジャスパーとモーガンも休んでいるな」


オースティンとの婚約の後のジャスパーの反応は激しくて、ハッキリ言って困っていたので休んでいるとホッとしていた。


ゼロとジャスパーは決定的に、違いました。


ゼロは”止めて”と言うと止めたくれるし、最近は指輪をしているからか無理矢理キスしなくなった。


無理矢理に力で押さえ込む様にキスをするのはジャスパーだけでした。


ゼロは軽いキスだけ、それでもオースティンを好きな私には苦痛な事には変わりないけど、追い詰める様のことはしなかった。


ゼロの場合は、常に逃げ道がありました。


でもジャスパーは恐いです。


婚約してから、執拗に追い掛け回され唇を奪われる。


まるで前世のアイツみたいです。



するとカチリとピースがハマった気がした。


「前世のアイツはジャスパーだわ。クロフォード様は、もしかして前世の私の身内………父親?」


「何?!」


「それと、今思えば………マルガリータは本気でモーガンが好きだったのか疑問を感じますわ」



「あぁ中庭でキスしてるマルガリータの目が死んだ魚の様だったと、セシルが言っていたな」


「もしかしてマルガリータは、前世のアイツがモーガンだと勘違いしているのかも知れませんわ」


「なるほど、幼馴染みだからか」


「でもゼロではなく、なぜモーガンなのかしら?」


いや違う………マルガリータは誰も信用していないんだわ。



私とオースティン以外を疑っているんだ。


「これは本当に乙女ゲームなのでしょうか?このゲームは誰が何のために用意したモノなのでしょうか?」


「確かにな………オレはラフレアを弾き飛ばしていた力が気になる。なぜヒロインらしきマルガリータでは無く、リリーの好感度に左右されるんだ?まるでリリーに寄ってくる者達を特定している様に思えてならない」


「まるで私が囮の様ですわね」


「いや、実際に囮だろう。そしてマルガリータがリリーに害をなす者かを選別しているんだ。オレはリリーと居ることを許されたんだ」


「モーガンとジャスパーの所在を確認した方が良さそうですわね」


「…………リリーはジャスパーに近寄るなよ」


「一緒に居てくれますよね?」


「だが」


「何処にいても危険なのは一緒です。ならオースティンの傍がいいのです。置いていかないで」


私を守りたいと思ってくれるのは嬉しいけど、置いてけぼりはイヤです。


「守られるばかりは嫌ですわ。一緒に居てくれないなら、私も1人で動きますわ。その方が事態が動く気がしますから」


「それだけはダメだ!」


抱きしめる腕が痛いくらい私を引き寄せた。


「私が1人で待っていても、きっと向こうから寄ってくる気がするのです。動こうが動かまいが関係ないと思えてならないのです」


私もオースティンに力いっぱい抱き着く。


「だから1人にしないで」


その日の夕方から、オースティンがブルームフォンテーン公爵家で寝泊まりする様になりました。


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