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番外編

甘い匂い※ <中編>

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<side哉藍セイラン

ああ、昨夜の瑞季ルェイジーは実に麗しかった。
仕事をしつつも、ついつい瑞季ルェイジーの昨夜の淫らな姿を思い出して興奮してしまう。

あれほど私を興奮させるのは世界広しといえども、瑞季ルェイジーだけだ。
ヒートでもないのに、私があそこまで瑞季ルェイジーを求めてしまうのだからな。
実際にヒートになったら、どれだけ燃え上がるのだろうか。
想像するだけで滾ってしまう。

おそらく、私たちが初めて出会った時以上の興奮が訪れることは間違いない。
早く仕事を終わらせて、瑞季ルェイジーが望んでいるように医師の診察を受けさせなければな。

とはいえ、昨日愛しすぎたせいで 今の瑞季ルェイジーを人に見せることはできない。
あんなにも色香漂う姿を見ていいのは私だけなのだから。

はぁーーっ。
目の前に積み上げられた書類の山が憎くてたまらない。
ずっとベッドで甘い時間を過ごしていたかったのに、この仕事のせいで瑞季ルェイジーとの時間が奪われたかと思うともはや怒りのようなものが込み上げてくる。

その怒りのままに目の前の仕事を終わらせる。

滄波ソウハは私のあまりの気迫に声もかけられないようだが、声をかけられて邪魔はされたくない。
今の私には無駄な時間など1秒たりともないのだ。

みるみるうちに書類の山が消えていき、驚くほどの速さで仕事が終わった。

「今日はこれでいいな?」

「は、はい。陛下。今日はいつにも増して気迫のこもった仕事っぷりでございました。何かございましたか?」

瑞季ルェイジーが私の帰りを待っているのだ。それしかなかろう」

滄波ソウハにそう告げた途端、胸元に入れていたリンの音が鳴り響いた。

これはっ!!

――何かあればそのリンを鳴らすのだぞ。

そう言っておいても瑞季ルェイジーはいつも私のことを最優先に考えるから、どんな時であっても私の仕事の邪魔をしたくないと言って、今まで一度も鳴ったことはなかった。

そんな瑞季ルェイジーリンを鳴らしたとすれば、とんでもないことが起こっているに違いない。

瑞季ルェイジーーっ!!!」

大声で瑞季ルェイジーの名を呼びながら、執務室を飛び出した。

ああ、なんで私は瑞季ルェイジーを一人にしてしまったのだろう。
執務室から瑞季ルェイジーのいる自室までの道のりがやけに遠く感じる。

早く、早くっ!!

ああ、瑞季ルェイジー
どうか無事でいてくれ!

ようやく部屋に辿り着くと扉の向こうから微かに瑞季ルェイジーの香りを感じる。

まさか……っ!!!

「お前たちっ、すぐに部屋の前から離れろっ!!! 部屋には絶対立ち入るでないぞ!! もし、邪魔をするものがいれば、即刻首を刎ねる!!! よいなっ!!」

そう叫び、私は自室の扉を開けた。

くっ――っ!!!!

むせ返るようなΩの、いや瑞季ルェイジーの香り。

これはヒートか。
しかもあの時よりも随分と強い。

だが、番となった今は私しか感じられないのだな。
それだけはよかった。

はぁっ、はぁっ。

瑞季ルェイジーの花のような香りを一心に浴び、一気に興奮状態に陥った私は、瑞季ルェイジーの強い香りがする場所にフラフラと吸い込まれていく。

寝室の扉を勢いよく開け放った瞬間、

「ぐぅ――っ!!!」

今までとは比べ物にならないほどの甘やかな香りに包まれて、茫然と佇むことしかできない。

私の視線の先にこんもりと盛り上がった服の山。
これは全て、私の服か。

もしや、これが巣作りというものか。

ああ、これを実際に見られるとは思っていなかったな。

愛情の深さに比例して、大きくなるというこの巣作り。
今では作らないΩも多いと聞くが、それほど私が瑞季ルェイジーに愛されているということだ。

このまま襲いかかりたくなる気持ちをグッと抑えてその巣に近づけば、モゾモゾと動く服の山の下から瑞季ルェイジーの顔が見える。

私の服に包まれて恍惚としている瑞季ルェイジーを見ているだけで愛おしさが募る。

瑞季ルェイジー、私が帰ってきたぞ」

「せ、いら、ん……っ」

巣の横に腰を下ろし、瑞季ルェイジーの髪を撫でながら

瑞季ルェイジー、上手に巣作りできてるな。偉いぞ」

と褒めると、幸せそうな表情を向けながら甘い言葉をかけてくれる。

「ん……っ、せ、いらんも……はやく、きてぇ……」

「ああ、瑞季ルェイジーっ!!」

なんの衣服も身につけず桃色に染まった素肌を無自覚に晒し、私を誘う瑞季ルェイジーの姿に興奮が抑えきれず、私はそのまま瑞季ルェイジーのもとに飛び込み抱きしめた。

すると、

「やぁ――っ、ぬい、でぇ……っ!!」

とほんのり涙目で訴えられる。
ふふっ。甘えるような言葉も私にとっては可愛いでしかない。

「ああ。そうだな、悪かった」

急いで服を脱ぎ去り、

「これでどうだ?」

と裸体を見せつければ、

「すごい……っ、せい、らん……っ。いい、におい……っ」

恍惚とした表情で巣穴から出てくると私の昂りに顔を近づけて、小さな口を目一杯開いてそのままパクリと咥えた。
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