野花のような君へ

古紫汐桜

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和解と知らなかった真実

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独身男性が使うにはバカでかい4人掛けのダイニングテーブルに座ると
「引っ越さないんですか?」
と、思わず聞いてしまった。
すると蔦田さんは小さく笑い
「中々、決心が着かなくてね」
そう言いながら、僕の前の席に座った。
「このテーブルもさ、美鈴がきみも一緒に暮らす事を考えて購入したんだよ」
蔦田さんはゆっくりと話し出すと
「美鈴はね、ここで俺達夫婦と子供。そして創君と暮らすのが夢だと言っていたんだ」
遠い目をしてそう呟いた。
僕は居た堪れなくなって
「あの……深沢先生をご紹介してくださったのが、蔦田さんだとハルさんから聞きました。ありがとうございました」
そう言って頭を下げる僕に、蔦田さんは困った顔をすると
「悠希君、話しちゃったんだ……」
顔を片手で覆い、真っ赤な顔をして蔦田さんが呟いたので
「あの!本当に感謝しています。ハルさんに教えてもらって良かったと思っています。そうで無ければ、僕は此処に来る事も無かったので」
と慌てて伝えた。
「創君?」
驚いた顔をする蔦田さんに
「仏壇を拝見して、美鈴を大切にしてくれていたのが分かりました。あの……噂を間に受けて失礼な態度をしていてすみませんでした」
そう言って頭を下げると
「頭を上げてくれないか?きみにそんな風に謝ってもらえるような人間では無いんですよ。俺は……」
と悲しそうに笑った。
「俺と美鈴は……契約結婚だったんだ」
「契約結婚?」
蔦田さんの言葉を繰り返すと、蔦田さんは小さく頷いて
「俺は女性を愛せない。それは美鈴も気付いていて、婚約の話が来た時に『私には、ずっと好きな人が居ます。でも、私ではその人を幸せには出来ません。だから、貴方の力をお借りしたいのです』と言って来たんだ」
そう言うと、テーブルの上で組んだ手に視線を落とした。
「美鈴に好きな人?」
驚いた僕に蔦田さんはゆっくりと視線を僕に向けると
「そう。それはきみだよ、創君」
と呟いたのだ。
「え?」
驚愕する僕に
「美鈴はずっときみが好きだった。でも、きみが高杉家でどんな仕打ちを受けて居るのかを知って居るようだったよ。彼女は『私じゃ創を救えない』と言ってね。高杉家の力が及ばない俺に、きみを救い出して欲しいと頼んで来たんだ。その為なら、俺との間の子供を絶対に産むからと……」
蔦田さんの言葉に、僕は口を押さえた。
美鈴が僕の為に、自分の人生を投げ捨てていた事がショックだった。
「勘違いしないで欲しい。きみにこの話をしたのは、きみとはじめ君との結婚を邪魔したくて話したのでは無いんだ。むしろ、美鈴も高杉の姓を捨てられた事を喜んでいる筈だよ」
衝撃な事実に、蔦田さんの声が遠くに聞こえる。
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