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―楽園編―
とっても危険な仮想世界
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『ええぇ……どうしよう、さとりくん?』
藍里も困惑している。
『とにかく、首都というのに行ってみましょう。いざとなったら、ミコがこの世界を滅ぼしてあげましょう……』
ミィコが怖い。
僕らは街道をひたすら歩いた――意外と広い。それなのに獣やらモンスターにも遭遇しない。
――今、僕は気付いた! この世界、どこかで見たことがあるような気がしてずっと引っかかっていたのだが、今朝読んでいたパソコン情報誌に載っていた”MMORPG”の世界とそっくりだ。
雪音さんはもしかすると……?
「あの、ミィコ、ちょっと聞いてもいいかな?」
「なんですか? サトリ。変なこと聞いたら許しませんよ」
「いや、そんなじゃなくて……あのさ、雪音さんってゲーム好きだったりする?」
「ユキネはものすごいゲーマーです! 見た目にそぐわないゲームオタクです。ヤバいです。ユキネは最近、パソコンのネットゲームとかにハマってるらしくて、口を開けばそのことばかり。トカゲから皮を剥いでいくら稼いだとか、荷馬が野党に襲われたとか、そんな話ばっかりでミコ呆れちゃいます」
「なるほど……ミィコ、もしかすると、この世界は雪音の話していたゲームの世界とよく似ているんじゃないかな」
「うーん、確かに? そう言われてみればそうですね。雪音の話によれば、その辺に生えてる雑草の中に薬草も混じっていて、それが高く売れるのだとか――サトリ、草むしりをしてくるのです!」
「え!?」
僕は渋々、ミィコに言われるがまま、雑草をナイフで刈り取っていった。
藍里はずっと無言だ。あれから、一言もしゃべっていない。まだ気分が悪いのだろうか?
「藍里、具合大丈夫?」
僕は聞いてみた。
――しかし、藍里は無言のままだった。
「ど、どうかしたの?」
僕は心配になった。
「あ、あれ、ごめんなさい! この世界ってテレパシーで会話するものなのだと思っていて……ずっとテレパシーを使っているつもりだったのだけど、もしかして聞こえていませんでした?」
「はい……」
僕はげんなりした。でも、雪音さんと話していた時は藍里もちゃんと念話が使えていたのに、不思議だ。
「あああ、心配させちゃってごめんなさい!」
「アイリ、そういうのをなんて言うか知っていますか? “あざとい”です」
そんな藍里に対して、ミィコがツッコミを入れていた。
「え、え、そんなつもりじゃ!?」
「でも、ミコは別にそういうのは嫌いじゃないですけどね」
「そうなの? ミコちゃん可愛いですね」
藍里はミィコの頭をナデナデしていた。ミィコはその状況を嫌がりながらも、なんだか嬉しそうにしていた。
確かに藍里は、天然なのかあざといのかよく分からない。
だが……海風博士を知った今、あの親にしてこの子あり――場の空気を読まない天然さというのは遺伝するのかもしれない。
「とりあえず、これだけ雑草集めれば少しは薬草も混じっているのかな?」
そういって僕は、刈り取った大量の雑草をミィコに見せた。僕は色々と考え事をしながらも、黙々と草を刈っていたのだ。
「そうですね、サトリは『ファーマシー』のスキルがゼロっぽいので判別できないでしょうけど」
「あ、私、少し分かるみたいです! ファーマシーのスキルが少しだけあるみたいですね」
「さすがアイリです。サトリと違って初期能力が高めみたいです!」
僕は悲しくなった……ミィコはいつも一言多い。
「ミィコは、どうして他者のスキルが分かったりするの?」
僕は不思議に思った。
「なんだかミコには、『アナライズ』っていうスキルが多めに割り振られているようです」
「ほう、なんだか便利そうだな」
「ミコちゃんすごい!」
「えへへ、そんなことはないです。普通です」
ミィコは喜びつつも否定している。
「ええと、アナライズによると、サトリは『リーパー』のスキルが多めに割り振られているみたいです。あと、『スティール』、盗みのスキルもありますね」
「え、ちょっとまって、リーパーって草刈りとかそういう? しかも、盗みってもしかして、僕は盗賊?」
「確かに、リーパーは草刈り適正を上げるみたいです。でも、それ以外にもクリティカルヒット率を上げる効果があるみたいですね」
「クリティカルヒット率とはいったい!?」
僕は一撃必殺みたいなド派手なモーションの攻撃を想像した。
「ええと、首切り攻撃です。首のあるモンスターなら巨人だろうと、ドラゴンだろうと、一撃で屠れます! 短期間でドラゴンを倒すには最適な手段ですね」
僕はそれを聞いて、神社での出来事を思い出した。
うーむ、ここが仮想空間とはいえ、神社で起こったあのトラウマ級の出来事を自ら再現することになろうとは……。
だが、僕の頭の中は既に、神社で一緒だった愛唯のことを考え始めていた。
――ダメだ。僕は頭を切り替えた。
「なるほど、あまり乗り気はしないけどクリティカルヒット率重視でいこう」
頭を切り替えた僕がそう言うと、ミィコはにこやかに、『うんうん』と頷いた。こういう時のミィコは可愛いと思う。
「というわけなのです! サトリが薬草を採集することでリーパーの熟練度があがり、採集した薬草をアイリが錬金して高価な薬品を生産します! その薬品をミィコが街で売りさばけば、全員分の強い装備と冒険に必要な道具一式を揃えられます! そのうえ、宿賃も稼げます! さらに、ご飯も食べられます!」
「なるほど、それはいい考えだ」
「それと、サトリの盗みのスキルを活かした作戦をミコは考えました! 名付けて、『お城に潜入して宝物庫からお宝を拝借しよう!』作戦です。おそらく、宝物庫には強力な武器が保管されているはずです」
え、何それ? そのまんまなんだろうけど、どういうこと? ミィコさん、それ、どういうこと……?
僕は心の中でミィコの発言に困惑した。何でもありとはいえ、さすがにそれは――
「いいと思います! さとりくんなら、きっと大丈夫です!」
藍里はまさかの乗り気だ。
「結構は明日の夜です! 今日は首都の周辺で草刈りです! さあ、働けです! ミコとアイリは街で薬の調合と情報収集することにします。ミコには『サーチ』のスキルもあるので、サトリの居場所はばっちり分かりますので!」
それは、『サボっていたらお仕置きするぞ』という意味なのだろうか。
藍里も困惑している。
『とにかく、首都というのに行ってみましょう。いざとなったら、ミコがこの世界を滅ぼしてあげましょう……』
ミィコが怖い。
僕らは街道をひたすら歩いた――意外と広い。それなのに獣やらモンスターにも遭遇しない。
――今、僕は気付いた! この世界、どこかで見たことがあるような気がしてずっと引っかかっていたのだが、今朝読んでいたパソコン情報誌に載っていた”MMORPG”の世界とそっくりだ。
雪音さんはもしかすると……?
「あの、ミィコ、ちょっと聞いてもいいかな?」
「なんですか? サトリ。変なこと聞いたら許しませんよ」
「いや、そんなじゃなくて……あのさ、雪音さんってゲーム好きだったりする?」
「ユキネはものすごいゲーマーです! 見た目にそぐわないゲームオタクです。ヤバいです。ユキネは最近、パソコンのネットゲームとかにハマってるらしくて、口を開けばそのことばかり。トカゲから皮を剥いでいくら稼いだとか、荷馬が野党に襲われたとか、そんな話ばっかりでミコ呆れちゃいます」
「なるほど……ミィコ、もしかすると、この世界は雪音の話していたゲームの世界とよく似ているんじゃないかな」
「うーん、確かに? そう言われてみればそうですね。雪音の話によれば、その辺に生えてる雑草の中に薬草も混じっていて、それが高く売れるのだとか――サトリ、草むしりをしてくるのです!」
「え!?」
僕は渋々、ミィコに言われるがまま、雑草をナイフで刈り取っていった。
藍里はずっと無言だ。あれから、一言もしゃべっていない。まだ気分が悪いのだろうか?
「藍里、具合大丈夫?」
僕は聞いてみた。
――しかし、藍里は無言のままだった。
「ど、どうかしたの?」
僕は心配になった。
「あ、あれ、ごめんなさい! この世界ってテレパシーで会話するものなのだと思っていて……ずっとテレパシーを使っているつもりだったのだけど、もしかして聞こえていませんでした?」
「はい……」
僕はげんなりした。でも、雪音さんと話していた時は藍里もちゃんと念話が使えていたのに、不思議だ。
「あああ、心配させちゃってごめんなさい!」
「アイリ、そういうのをなんて言うか知っていますか? “あざとい”です」
そんな藍里に対して、ミィコがツッコミを入れていた。
「え、え、そんなつもりじゃ!?」
「でも、ミコは別にそういうのは嫌いじゃないですけどね」
「そうなの? ミコちゃん可愛いですね」
藍里はミィコの頭をナデナデしていた。ミィコはその状況を嫌がりながらも、なんだか嬉しそうにしていた。
確かに藍里は、天然なのかあざといのかよく分からない。
だが……海風博士を知った今、あの親にしてこの子あり――場の空気を読まない天然さというのは遺伝するのかもしれない。
「とりあえず、これだけ雑草集めれば少しは薬草も混じっているのかな?」
そういって僕は、刈り取った大量の雑草をミィコに見せた。僕は色々と考え事をしながらも、黙々と草を刈っていたのだ。
「そうですね、サトリは『ファーマシー』のスキルがゼロっぽいので判別できないでしょうけど」
「あ、私、少し分かるみたいです! ファーマシーのスキルが少しだけあるみたいですね」
「さすがアイリです。サトリと違って初期能力が高めみたいです!」
僕は悲しくなった……ミィコはいつも一言多い。
「ミィコは、どうして他者のスキルが分かったりするの?」
僕は不思議に思った。
「なんだかミコには、『アナライズ』っていうスキルが多めに割り振られているようです」
「ほう、なんだか便利そうだな」
「ミコちゃんすごい!」
「えへへ、そんなことはないです。普通です」
ミィコは喜びつつも否定している。
「ええと、アナライズによると、サトリは『リーパー』のスキルが多めに割り振られているみたいです。あと、『スティール』、盗みのスキルもありますね」
「え、ちょっとまって、リーパーって草刈りとかそういう? しかも、盗みってもしかして、僕は盗賊?」
「確かに、リーパーは草刈り適正を上げるみたいです。でも、それ以外にもクリティカルヒット率を上げる効果があるみたいですね」
「クリティカルヒット率とはいったい!?」
僕は一撃必殺みたいなド派手なモーションの攻撃を想像した。
「ええと、首切り攻撃です。首のあるモンスターなら巨人だろうと、ドラゴンだろうと、一撃で屠れます! 短期間でドラゴンを倒すには最適な手段ですね」
僕はそれを聞いて、神社での出来事を思い出した。
うーむ、ここが仮想空間とはいえ、神社で起こったあのトラウマ級の出来事を自ら再現することになろうとは……。
だが、僕の頭の中は既に、神社で一緒だった愛唯のことを考え始めていた。
――ダメだ。僕は頭を切り替えた。
「なるほど、あまり乗り気はしないけどクリティカルヒット率重視でいこう」
頭を切り替えた僕がそう言うと、ミィコはにこやかに、『うんうん』と頷いた。こういう時のミィコは可愛いと思う。
「というわけなのです! サトリが薬草を採集することでリーパーの熟練度があがり、採集した薬草をアイリが錬金して高価な薬品を生産します! その薬品をミィコが街で売りさばけば、全員分の強い装備と冒険に必要な道具一式を揃えられます! そのうえ、宿賃も稼げます! さらに、ご飯も食べられます!」
「なるほど、それはいい考えだ」
「それと、サトリの盗みのスキルを活かした作戦をミコは考えました! 名付けて、『お城に潜入して宝物庫からお宝を拝借しよう!』作戦です。おそらく、宝物庫には強力な武器が保管されているはずです」
え、何それ? そのまんまなんだろうけど、どういうこと? ミィコさん、それ、どういうこと……?
僕は心の中でミィコの発言に困惑した。何でもありとはいえ、さすがにそれは――
「いいと思います! さとりくんなら、きっと大丈夫です!」
藍里はまさかの乗り気だ。
「結構は明日の夜です! 今日は首都の周辺で草刈りです! さあ、働けです! ミコとアイリは街で薬の調合と情報収集することにします。ミコには『サーチ』のスキルもあるので、サトリの居場所はばっちり分かりますので!」
それは、『サボっていたらお仕置きするぞ』という意味なのだろうか。
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