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婚姻編
婚姻編11 そして魔王様に掴まった。(後)(完)
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そこからの記憶は全て曖昧です。
カーティスの太い指は似あわぬ繊細な動きで私の身体に触れて、敏感な場所を発掘しては際限なく苛み続け。
その唇は言葉少なに愛を語りつつも、指同様、私がドロドロにとろけるまで貪り尽くし。
私の身体に巻きつけられていた布を留めていた金の飾りは、いつの間にかカーティスに取り除かれて、私が身をよじるたび、自然と緩んだ布がズレてきて。
中途半端に隠れてるのが余計に恥ずかしい……。
いっそ脱がして欲しいのに、カーティスはそれを楽しむかのようにわざと脱がせてはくれません。
私がこんなに痴態を晒してるのに、カーティスは玉座にいた時と同じ魔王様然とした服装のままで嬉しそうに乱れる私を腕の中で踊らせます。
言葉通り、やむことのないカーティスの愛責に、囲い込まれたその腕の中、逃げ場もなくただただ私は喘ぎ続け。
「も……むり……!!」
どうしようもない限界を何度もみせられて、やめぬと言われようがなんだろうが、勝手に私の意識が終わりを懇願し始めて。
「まだだ……」
けれども私を追い詰めるカーティスの愛責は、休むことはあれど止むことはなく、決して余裕など与えてはくれません。
それから一体何時間経ったのでしょう。もう時間の感覚がありません。
めくるめくような快楽の波に流されては引き戻され、何度も意識を手放してはしつこいほどにカーティスに愛し尽くされた私は、ただもう終わりの欲しさに懇願を繰り返し。
「おねが……、カ……ティス」
けれどカーティスの堅牢な筋肉の檻は、私に逃げる隙など一瞬も与えず、たとえそんな隙があったとしても、絶えず続く愛責で、私の身も心も溶けきって、自力でベッドから這いずり出ることさえ出来はせず。
何度も何度もカーティスに私の知らなかった快感を引き出され、どこまでも追い詰められて。
いつものことですが、途中何回も意識を失っているので記憶があやふやなのです。
「か、カーティス、許して……もう、おかしく、なる」
「ああ、知ってる」
何度も懇願してますが、返って来る答えは同じです。
「安心しろ、まだまだよくなる」
そんなの全然安心出来ないっ!!
こうなってくるともはや拷問です。
「お願い、カーティス、もう、我慢できないの……貴方が欲し……」
追い詰められ切羽詰まって、前世読んだ作品の記憶から精一杯カーティスに響きそうなセリフを引っ張り出して重ねます。
それを聞いたカーティスが、顔を朱に染めて視線を外しました。
「クソ、愚か者。せっかくここまで我慢したものを……まだ痛むぞ」
「いいの、もうなんでもいいから来て……ッ!!」
それでとっとと終わらせて!
そう叫ぼうとする私の口を塞ぐようにカーティスの唇が私の唇を乱暴に奪い、仕上げとばかりに激しさを増したカーティスの愛責に、再び私の全身が激しくブルブルと震えだし。
あと一歩、身体が緊張しきって息が詰まって、目前が暗くなってきて気を失うその直前。
「……クソ。そんな物欲しそうな顔しおって……知らんぞ」
盛大な喘ぎとともにそう言い捨てたカーティスが、私の上で膝立ちになり、鋭い眼差しで見下ろしてきます。
お陰でやっとその終わりのない責め苦から開放されました、が。
でもこれだけの長時間、散々カーティスに愛でまわされた今の私は、自分自身でさえ目を背けたくなるほどの惨状で。
もうイヤ! 誰かカーティスの後ろ頭力いっぱい殴って記憶を今すぐ全部飛ばして!
そんなことを思ってはみても、もうゼイゼイと息をするので精一杯です。
暫くの間、無言でそんな私の様子を見下ろしていたカーティスが、おもむろに指を鳴らして身につけていたすべての衣服を消し去りました。
私を見下ろす一糸まとわぬ姿のカーティスは、勇猛な戦士の彫刻にも負けぬ、美しく猛々しい全身の筋肉を私に見せつけて、見惚れる私を熱を灯した二つの瞳がじっと見下ろしていて。
見つめあったまま、徐々にその上半身が再び私に覆いかぶさって、私の身体をすっぽりと中に収めて……。
そして──
「────ッ!!」
痛みはあります。
間違いなく裂けてます!
「すまない……」
それなのに。
この状況で、カーティスは今にも泣きそうな顔で私を見下ろしてくるのです。
本当に、馬鹿な人です。
いえ悪魔です。
あんなヒドイくらい私を追い詰めたクセに、こんなことで泣きそうな顔をするなんて。
今までのすっごく辛い拷問のような快楽漬けの時間は、全てこの痛みを和らげたい一心からだったのでしょう。
でも分かってない。
痛いけど、辛いけど、私イヤじゃ全然ないのに……
身体の痙攣が治まって、やっとまともにカーティスの顔が見れた私は、だから頑張って笑顔を作ります。
そして、震える腕を叱咤して、カーティスに伸ばしながら声を絞り出しました。
「いいの。好きだから……」
ちゃんと言葉にして言ってあげないと、この人は本当に理解できません。
今まで生きてきた環境や常識が全く違うのです。
私の言葉にカーティスが余計顔を歪ませて、慌てたように私のお腹に手を載せます。
「今俺の身体から魔力が溢れてるからすぐ癒える」
ああだからさっきから痛みが減って来ているのね……
でもだからこそ、さっきよりカーティスの存在感が薄れてきて、今度は何か切なくなってきました。
「お願い、抱きしめていて」
私の言葉を聞いたカーティスが苦しげに喘いで、それでも疲れきって弛緩した私の上半身を起こし上げてくれます。
向かい合わせでカーティスの力強い身体に自分の身体をクタリとよりかけ、カーティスに全てを任せているのがとても安心します。
視線を上げれば、カーティスが唇を噛んで耐えているのがすぐ頭一つ上に見えて。
カーティスでも辛いんだ……
そう思うと、私の胸に強い愛しさがこみ上げてきて、萎えた手を持ち上げてカーティスの首筋を抱き寄せて。
驚くカーティスの唇を舐めました。
噛まれていた唇が痛々しくて、それを解すように自分の唇で何度も食みます。カーティスも同様に私の唇を食み、伸ばされた舌が絡みあい、お互いにそれを求めて吸いあって。
「────!」
熱い吐息とともにカーティスが呻いて、私を包み込むすべての筋肉が硬直し、大きく数回震えて……。
私たちは強く抱き合い震えつつ、同時に最後までのぼりつめました。
……普通こんなにもはっきりと感じられるものなのでしょうか?
ドクン、ドクンと、カーティスの熱が私の中に注ぎこまれているのがしっかりと分かります。
そして次の瞬間、それは突然始まりました。
「アアアアアア、アアア、アアアア!!!」
身体中が一気に燃え上がり、熱が身体を駆け巡り、身体が熱くてたまりません。
「すまない……」
そんな私を抱く腕に力を込めて拘束しつつ、私に謝るカーティスの悲痛な声が耳元に聞こえます。でもそれさえもなぜか遠く感じて。
しっかりと抱きしめてくれているカーティスの身体が、冷たくさえ感じてきました。
あまりの熱さにもがき暴れだす私を、カーティスの四肢が押さえつけます。その背や二の腕、どこでも手が届く場所に爪をたて、ただただ熱さから逃れようとしがみつきますが、熱は全然去りません。
あまりの熱さに涙が溢れ、頭が反って、息が出来ないのにまた身体が跳ねて。
「すまない」
それをやっぱり泣きそうな顔でカーティスが見下ろしています。
ああ、これ……。きっとこれがカーティスが言っていた私が魔族になる過程なのね……。
そしてカーティスにもどうしようもないのだわ……
頭の中のどこか冷静な部分の私が納得しました。だけどまだ熱で身体が暴れます。
私の爪がカーティスの肉を抉り、私の手がカーティスの血に染まりだし。それがなぜか余計私の身体を熱くして──
──あ、でもこれは血まみれ筋肉のせい……?
いつの間にかスイッチが入っています。
深層の性癖が解き放たれて、手に付く血を見てもまるで罪悪感が湧いてこず、それどころかただただ愛おしくて。
カーティスの美しい筋肉の隅々まで血が綺麗に広がるように、何度も何度も撫で回してしまいました。
そして最後に血まみれのその大胸筋に頬を寄せ、スリスリと何度も擦り付けて──
「……我が妻は強いな」
──ふと、カーティスの呆れかえった声が落ちてきて、そこでやっと私は正気に戻りました。
うっわ!
私ったら全身血まみれ!
一体なにをどうしたのか、カーティスの身体だけではなく、私の全身まで浴びたように血だらけなのです……。
腰までずり落ちていた純白のドレス生地が、自分とカーティスの血液で真っ赤に染まって見る影もありません。
「お前がお前で本当によかった……」
状態の酷さに驚いてる私を気にする余裕もなく、大きく息を吐き出したカーティスが嬉しそうに私を抱きしめています。
「心配するな。それはお前の中の古い血が俺の精に追い出されて全て排出されただけだ」
腕の中の戸惑う私を見下ろして、カーティスが全く安心出来ない説明をしてくれました。
「全部の血……」
「ああ。俺の魔力に染まりきれなかった血液が全て、だ。お前には前もって俺の血が入ってたから大した事ない」
「大したことない……って見てよ、これのどこが大したことないのよ!?」
真っ赤に染まった自分の両手を突きつけながら叫んだのに、
「どこか痛いか?」
痛いのかと問われれば、驚くほどどこも痛くありません。
「……痛くはないわ」
「言っただろう。お前の身体なら充分に耐えられる。ここまでも、ここからも……」
確かに言ってた、言っていたけれど……なんでカーティスがまた絡みついてきてるの???
「ここからって、イァ……」
「まだ数回、続けるぞ」
ムリ!
もう絶対ムリ!!
そう思って思いっきり叫ぼうとしたのですが、
「待ってもうムリ! 身体が……あれ」
いえ、本当に、ムリだと思ってたのに、気づくと身体はどこも痛みませんし、それどころか疲れもほとんど感じていません。
おかしいでしょう、ついさっきまであんなに辛かったのに、そう思っていると──
「大丈夫だ、俺の精をしっかり受けたお前の身体は今までとは比べ物にならぬほど丈夫になっている。もう気を失って快感を逃すこともない」
──カーティスが聞きたくもない新情報を出してきました。
うそ!
気絶できないってそれ、どこまでもどこまでもあの甘い責め苦が続き続けるって言うの!!??
「イ、イヤァァァ───!!」
……そして、それから次の日の夜明け、早起きな森の小鳥たちが迷惑そうに鳴き始めるまでのたっぷりの時間。
絶えることなく、掠れてもなお止めようのない私の悲鳴が、静かな夜の森にずっと響き続けまたのでした……。
* * *
「カーティス、二つ目の約束をして」
目覚めた私は、激しい言い争いの後、カーティスからセーフワードの確約を取りました。
週に五回まで、私が「セド!」っと叫んだらそれ以上続行しないという、お互いかなりの妥協案です。
セドには悪いけど、一番カーティスが嫌な顔をしてくれたので今後もずっとこれで行きます。
でも不安になるんですよ。だって半永久の夫婦生活でしょ?
最初からこんなに飛ばし続けてたらあっという間に飽きてしまうんじゃないかって……。
なのにベッドの上でそれを打ち明ければ、擽ったそうに笑った魔王様が、私をまた自分の上に載せて、ドロドロに甘い顔で私を見ます。
「お前といれば、永遠も一瞬もかわりはない」
そして私にそっと頬を寄せ、耳を濡らしつつ囁くのです。
「俺がお前を飽きさせるなどと思うなよ。お前が望むならともに逝くまでひたすら交わい続けてやるぞ、我が愛しい妻よ」
甘い吐息混じりにとんでもない言葉を耳に吹き込みつつ、妖しい笑みを浮かべた悪魔が舌なめずりしてこちらを見ています。
でもそれに抵抗するどころか微かな期待を胸に捕まえられている愚かな私は「結局これはかなりとっても幸せな結末だったのかも」、な~んて思ってしまうのでした。
婚姻編(完)
カーティスの太い指は似あわぬ繊細な動きで私の身体に触れて、敏感な場所を発掘しては際限なく苛み続け。
その唇は言葉少なに愛を語りつつも、指同様、私がドロドロにとろけるまで貪り尽くし。
私の身体に巻きつけられていた布を留めていた金の飾りは、いつの間にかカーティスに取り除かれて、私が身をよじるたび、自然と緩んだ布がズレてきて。
中途半端に隠れてるのが余計に恥ずかしい……。
いっそ脱がして欲しいのに、カーティスはそれを楽しむかのようにわざと脱がせてはくれません。
私がこんなに痴態を晒してるのに、カーティスは玉座にいた時と同じ魔王様然とした服装のままで嬉しそうに乱れる私を腕の中で踊らせます。
言葉通り、やむことのないカーティスの愛責に、囲い込まれたその腕の中、逃げ場もなくただただ私は喘ぎ続け。
「も……むり……!!」
どうしようもない限界を何度もみせられて、やめぬと言われようがなんだろうが、勝手に私の意識が終わりを懇願し始めて。
「まだだ……」
けれども私を追い詰めるカーティスの愛責は、休むことはあれど止むことはなく、決して余裕など与えてはくれません。
それから一体何時間経ったのでしょう。もう時間の感覚がありません。
めくるめくような快楽の波に流されては引き戻され、何度も意識を手放してはしつこいほどにカーティスに愛し尽くされた私は、ただもう終わりの欲しさに懇願を繰り返し。
「おねが……、カ……ティス」
けれどカーティスの堅牢な筋肉の檻は、私に逃げる隙など一瞬も与えず、たとえそんな隙があったとしても、絶えず続く愛責で、私の身も心も溶けきって、自力でベッドから這いずり出ることさえ出来はせず。
何度も何度もカーティスに私の知らなかった快感を引き出され、どこまでも追い詰められて。
いつものことですが、途中何回も意識を失っているので記憶があやふやなのです。
「か、カーティス、許して……もう、おかしく、なる」
「ああ、知ってる」
何度も懇願してますが、返って来る答えは同じです。
「安心しろ、まだまだよくなる」
そんなの全然安心出来ないっ!!
こうなってくるともはや拷問です。
「お願い、カーティス、もう、我慢できないの……貴方が欲し……」
追い詰められ切羽詰まって、前世読んだ作品の記憶から精一杯カーティスに響きそうなセリフを引っ張り出して重ねます。
それを聞いたカーティスが、顔を朱に染めて視線を外しました。
「クソ、愚か者。せっかくここまで我慢したものを……まだ痛むぞ」
「いいの、もうなんでもいいから来て……ッ!!」
それでとっとと終わらせて!
そう叫ぼうとする私の口を塞ぐようにカーティスの唇が私の唇を乱暴に奪い、仕上げとばかりに激しさを増したカーティスの愛責に、再び私の全身が激しくブルブルと震えだし。
あと一歩、身体が緊張しきって息が詰まって、目前が暗くなってきて気を失うその直前。
「……クソ。そんな物欲しそうな顔しおって……知らんぞ」
盛大な喘ぎとともにそう言い捨てたカーティスが、私の上で膝立ちになり、鋭い眼差しで見下ろしてきます。
お陰でやっとその終わりのない責め苦から開放されました、が。
でもこれだけの長時間、散々カーティスに愛でまわされた今の私は、自分自身でさえ目を背けたくなるほどの惨状で。
もうイヤ! 誰かカーティスの後ろ頭力いっぱい殴って記憶を今すぐ全部飛ばして!
そんなことを思ってはみても、もうゼイゼイと息をするので精一杯です。
暫くの間、無言でそんな私の様子を見下ろしていたカーティスが、おもむろに指を鳴らして身につけていたすべての衣服を消し去りました。
私を見下ろす一糸まとわぬ姿のカーティスは、勇猛な戦士の彫刻にも負けぬ、美しく猛々しい全身の筋肉を私に見せつけて、見惚れる私を熱を灯した二つの瞳がじっと見下ろしていて。
見つめあったまま、徐々にその上半身が再び私に覆いかぶさって、私の身体をすっぽりと中に収めて……。
そして──
「────ッ!!」
痛みはあります。
間違いなく裂けてます!
「すまない……」
それなのに。
この状況で、カーティスは今にも泣きそうな顔で私を見下ろしてくるのです。
本当に、馬鹿な人です。
いえ悪魔です。
あんなヒドイくらい私を追い詰めたクセに、こんなことで泣きそうな顔をするなんて。
今までのすっごく辛い拷問のような快楽漬けの時間は、全てこの痛みを和らげたい一心からだったのでしょう。
でも分かってない。
痛いけど、辛いけど、私イヤじゃ全然ないのに……
身体の痙攣が治まって、やっとまともにカーティスの顔が見れた私は、だから頑張って笑顔を作ります。
そして、震える腕を叱咤して、カーティスに伸ばしながら声を絞り出しました。
「いいの。好きだから……」
ちゃんと言葉にして言ってあげないと、この人は本当に理解できません。
今まで生きてきた環境や常識が全く違うのです。
私の言葉にカーティスが余計顔を歪ませて、慌てたように私のお腹に手を載せます。
「今俺の身体から魔力が溢れてるからすぐ癒える」
ああだからさっきから痛みが減って来ているのね……
でもだからこそ、さっきよりカーティスの存在感が薄れてきて、今度は何か切なくなってきました。
「お願い、抱きしめていて」
私の言葉を聞いたカーティスが苦しげに喘いで、それでも疲れきって弛緩した私の上半身を起こし上げてくれます。
向かい合わせでカーティスの力強い身体に自分の身体をクタリとよりかけ、カーティスに全てを任せているのがとても安心します。
視線を上げれば、カーティスが唇を噛んで耐えているのがすぐ頭一つ上に見えて。
カーティスでも辛いんだ……
そう思うと、私の胸に強い愛しさがこみ上げてきて、萎えた手を持ち上げてカーティスの首筋を抱き寄せて。
驚くカーティスの唇を舐めました。
噛まれていた唇が痛々しくて、それを解すように自分の唇で何度も食みます。カーティスも同様に私の唇を食み、伸ばされた舌が絡みあい、お互いにそれを求めて吸いあって。
「────!」
熱い吐息とともにカーティスが呻いて、私を包み込むすべての筋肉が硬直し、大きく数回震えて……。
私たちは強く抱き合い震えつつ、同時に最後までのぼりつめました。
……普通こんなにもはっきりと感じられるものなのでしょうか?
ドクン、ドクンと、カーティスの熱が私の中に注ぎこまれているのがしっかりと分かります。
そして次の瞬間、それは突然始まりました。
「アアアアアア、アアア、アアアア!!!」
身体中が一気に燃え上がり、熱が身体を駆け巡り、身体が熱くてたまりません。
「すまない……」
そんな私を抱く腕に力を込めて拘束しつつ、私に謝るカーティスの悲痛な声が耳元に聞こえます。でもそれさえもなぜか遠く感じて。
しっかりと抱きしめてくれているカーティスの身体が、冷たくさえ感じてきました。
あまりの熱さにもがき暴れだす私を、カーティスの四肢が押さえつけます。その背や二の腕、どこでも手が届く場所に爪をたて、ただただ熱さから逃れようとしがみつきますが、熱は全然去りません。
あまりの熱さに涙が溢れ、頭が反って、息が出来ないのにまた身体が跳ねて。
「すまない」
それをやっぱり泣きそうな顔でカーティスが見下ろしています。
ああ、これ……。きっとこれがカーティスが言っていた私が魔族になる過程なのね……。
そしてカーティスにもどうしようもないのだわ……
頭の中のどこか冷静な部分の私が納得しました。だけどまだ熱で身体が暴れます。
私の爪がカーティスの肉を抉り、私の手がカーティスの血に染まりだし。それがなぜか余計私の身体を熱くして──
──あ、でもこれは血まみれ筋肉のせい……?
いつの間にかスイッチが入っています。
深層の性癖が解き放たれて、手に付く血を見てもまるで罪悪感が湧いてこず、それどころかただただ愛おしくて。
カーティスの美しい筋肉の隅々まで血が綺麗に広がるように、何度も何度も撫で回してしまいました。
そして最後に血まみれのその大胸筋に頬を寄せ、スリスリと何度も擦り付けて──
「……我が妻は強いな」
──ふと、カーティスの呆れかえった声が落ちてきて、そこでやっと私は正気に戻りました。
うっわ!
私ったら全身血まみれ!
一体なにをどうしたのか、カーティスの身体だけではなく、私の全身まで浴びたように血だらけなのです……。
腰までずり落ちていた純白のドレス生地が、自分とカーティスの血液で真っ赤に染まって見る影もありません。
「お前がお前で本当によかった……」
状態の酷さに驚いてる私を気にする余裕もなく、大きく息を吐き出したカーティスが嬉しそうに私を抱きしめています。
「心配するな。それはお前の中の古い血が俺の精に追い出されて全て排出されただけだ」
腕の中の戸惑う私を見下ろして、カーティスが全く安心出来ない説明をしてくれました。
「全部の血……」
「ああ。俺の魔力に染まりきれなかった血液が全て、だ。お前には前もって俺の血が入ってたから大した事ない」
「大したことない……って見てよ、これのどこが大したことないのよ!?」
真っ赤に染まった自分の両手を突きつけながら叫んだのに、
「どこか痛いか?」
痛いのかと問われれば、驚くほどどこも痛くありません。
「……痛くはないわ」
「言っただろう。お前の身体なら充分に耐えられる。ここまでも、ここからも……」
確かに言ってた、言っていたけれど……なんでカーティスがまた絡みついてきてるの???
「ここからって、イァ……」
「まだ数回、続けるぞ」
ムリ!
もう絶対ムリ!!
そう思って思いっきり叫ぼうとしたのですが、
「待ってもうムリ! 身体が……あれ」
いえ、本当に、ムリだと思ってたのに、気づくと身体はどこも痛みませんし、それどころか疲れもほとんど感じていません。
おかしいでしょう、ついさっきまであんなに辛かったのに、そう思っていると──
「大丈夫だ、俺の精をしっかり受けたお前の身体は今までとは比べ物にならぬほど丈夫になっている。もう気を失って快感を逃すこともない」
──カーティスが聞きたくもない新情報を出してきました。
うそ!
気絶できないってそれ、どこまでもどこまでもあの甘い責め苦が続き続けるって言うの!!??
「イ、イヤァァァ───!!」
……そして、それから次の日の夜明け、早起きな森の小鳥たちが迷惑そうに鳴き始めるまでのたっぷりの時間。
絶えることなく、掠れてもなお止めようのない私の悲鳴が、静かな夜の森にずっと響き続けまたのでした……。
* * *
「カーティス、二つ目の約束をして」
目覚めた私は、激しい言い争いの後、カーティスからセーフワードの確約を取りました。
週に五回まで、私が「セド!」っと叫んだらそれ以上続行しないという、お互いかなりの妥協案です。
セドには悪いけど、一番カーティスが嫌な顔をしてくれたので今後もずっとこれで行きます。
でも不安になるんですよ。だって半永久の夫婦生活でしょ?
最初からこんなに飛ばし続けてたらあっという間に飽きてしまうんじゃないかって……。
なのにベッドの上でそれを打ち明ければ、擽ったそうに笑った魔王様が、私をまた自分の上に載せて、ドロドロに甘い顔で私を見ます。
「お前といれば、永遠も一瞬もかわりはない」
そして私にそっと頬を寄せ、耳を濡らしつつ囁くのです。
「俺がお前を飽きさせるなどと思うなよ。お前が望むならともに逝くまでひたすら交わい続けてやるぞ、我が愛しい妻よ」
甘い吐息混じりにとんでもない言葉を耳に吹き込みつつ、妖しい笑みを浮かべた悪魔が舌なめずりしてこちらを見ています。
でもそれに抵抗するどころか微かな期待を胸に捕まえられている愚かな私は「結局これはかなりとっても幸せな結末だったのかも」、な~んて思ってしまうのでした。
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