ゆめも

toyjoy11

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わざわざ異界に悪魔を封印したのに呼び出した模様

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39年前。

「これは駄目だ!既にこの悪魔は手に負えん。」
「そんな!消滅できないって言うの?!」
「くぅ!仕方あるまい!このままではこの世界の方が消滅してしまうわい!」
「賢者!どうにか!どうにかできないのか!?」
「そもそも、悪魔を呼び出した帝国の尻ぬぐいじゃと言うのに・・・勇者よ!最終手段じゃ!あやつを異界に封印する!」
「そんな!できるのか!賢者よ。」
「・・・犠牲を覚悟せにゃならんが・・・。勇者よ。儂の子や孫に遺言を頼む。」
「・・・分かった。すまない賢者よ。」
「決して、決して今後、召喚の儀等に手を出さぬよう。勇者召喚も悪魔召喚も決してしてはならん。」
「・・・伝える。」
「そうか、すまんな。勇者よ。さらばじゃ。」

そうして、賢者は自分の肉体と魂を犠牲にして、この世界に訪れた悪魔を異界に封印しました。

***
「帝国の奴らがまた、戦争を仕掛けてきました!」
「くっそ、我が神聖王国の命令をことごとく無視して、我が神はさぞお怒りしておるぞ!」
「そ、そんな!」
「仕方あるまい!こうなったら、最後の手段じゃ!勇者召喚の儀を行え!」
「しかし、それは禁呪でございます!」
「宰相よ!他に方法は無いのか!」
「大丈夫です!勇者召喚を行う準備は既にできています。同時に隷属の準備も出来ておりますので、バレません。」
「よし!ならば、行え!」
「はっ!」

数十人の魔術師が首輪をつけた獣人数百人を生贄に使い、勇者召喚の儀を行った。
召喚されたのは31人ほどの制服を着た異世界人。
10代前半に見える幼さを残した少年少女たち。

皆一様に戸惑っていた。
その中でただ一人王に向かって、話し始めた。
「おお!!これは、召喚の儀ではございませんか!素晴らしい!」
少年とも少女ともつかない美形の子供は王にそう話しかけた。
「そうじゃ、素晴らしかろう。」
「勿論でございます!さすが、王族!さぞ、大量の魔力が必要だったでしょう!それを貴方様はなんの不足もなくこの人数を召喚したとはまさしく神の所業!」
「おおぉ、そうじゃろそうじゃろ。」
「貴方様とあろうお方がこんな下々の者を呼び出すのはさぞ、苦しい理由があったのでしょう。」
「そうなのじゃ。とっても崇高な理由があるのじゃ。」
「国の責任、いえ、貴方様はこの世界の神でしたね。この世界の責任は、貴方様が背負うのでしょう。素晴らしいことです。流石でございます。」
「そうなのじゃ、儂はとても素晴らしいのじゃ。」
「これから訪れるこの異界から呼び出された少年少女たちの苦難は全て、この世界の責任。ひいては、貴方様が第一に責任を取られるのでしょう。なんと崇高な!」
「そうなのじゃ、儂は崇高なのじゃ!」
「そんな崇高で神聖な貴方様こそ、この指輪の持ち主に相応しい。」
そう言って、美しいその子供は一つの豪華な指輪を王に差し出した。

「貴方様が受けきれない責任は貴方様の一族が、そして、次はその民が、そして、最後にこの世界の住人が取ることになると思いますが、大丈夫です。貴方様は神と等しき方、きっと乗り越えられます。だって、貴方様はこの世界の代表なのですから!」
「そうなのじゃ、儂はこの世界の代表なのじゃ!」
「王、ちょ。」
「その証明にこの指輪を。」
豪華な指輪にはピンポン玉サイズの大きなブルーの宝石がついている。台座もプラチナで出来ており、装飾も素晴らしい一品だった。
デザインは酷くダサいが、使われている材料はまさしく国家予算並みの物。
王は喜んでその指輪を受け取り、自らの指にはめた。
宰相の制止も聞かずに。

しかし、その場では何も起こりはしなかった。
先程迄、大声で王を称えた美形の子供は急に静かに何の表情も無くなってしまっているのだけが、変わったこと。
そして、一瞬の沈黙の後、当初の予定通りに隷属の腕輪を30人のクラスメイト達に配られ、皆、一様にその腕輪をつけてしまう。

その時には既に先程の子供の姿は無くなっていた。
王や宰相は戸惑ったが、1人居なくなったくらいじゃ問題ないと思ったのか、当初の予定通りに異世界人を使って、戦争の準備を始めた。

反論する子供たちを鎮める為に、見せしめをと思い、王は騎士に指示をした。
そして、一人の少女が切りかかられた。
「うぎゃああああああああ!!!!!」
途端に響く青年の叫び声。

切られた少女は無傷。
ならば、誰が?
騎士は戸惑う。
なぜ、王太子が剣で切られたように怪我を負ったのか?
王太子は王の隣に立っていた。
切られた少女とはかなり離れていた筈だった。
しかし、死に体になっているのは、王太子。

パニックを起こした違い兵士が今度は少年を切り裂いた・・・ように見えた。
しかし、切り裂かれたのは王の隣に居た少女。
王の末の姫。

流石に気付いた宰相と王。
騎士をいったん下がらせた。

同時に無理矢理召喚した少年少女たちを用意していた住居に無理矢理移動させた。
殴ったりしたら、その度王族が怪我をした。
途中気付いて止めさせた。
丁重に、移動させたが、既に王も王族もボロボロに傷ついていた。

そしたら、宰相の耳元に懐かしい声が聞こえた。
「100年どころか40年と持たんかったんか。情けない。」
と。

それは、宰相の祖父、40年前に勇者一行に同行していた賢者と呼ばれた祖父の声だった。
彼は、子孫に
「決して、召喚を行ってはいけない!勇者も悪魔もどんなものも召喚してはいけない。」
と遺言を残した。
しかし、召喚は実に魅力的だった。
何故なら、召喚の儀で呼び出されたものは等しく人ならざる強大な能力を有する可能性が高いからである。

しかも、世の中の理も知らない少年少女なら簡単に動かせる筈。
加えて、この40年の間に隷属の腕輪も発明された。

やらない手は無かった。
戦争に勝ち、この神聖王国を更に栄えさせるために。
我が神を讃え続ける為に。

それに、私たちは正義なのだと王も宰相も信じて疑っていなかった。

賢者の忠告を忘れて召喚を行った宰相はうすら寒いものを覚えた。そして、急いで過去の資料をかき集める為に急いで帰宅した。
王は召喚した少年少女たちに危害を加えるなと命令をした。

王はイライラして、食事を摂った。
しかし、いくら食べてもお腹が減り続ける。
10人前食べても空腹のまま。
それどころかなんの味も感じない。

30人前ほど食べてやっと落ち着いた王は、そのまま自室に戻り、眠りについた。

朝の5時。
突然の痛みに跳び起きた。
急いで兵士に異世界人に危害を加えるなと命令した。

どうやら、命令を聞かずに異世界人を当初のスケジュール通りに訓練をさせる為に起こさせた模様。
その際、言うことを聞かなかった異世界人を兵士が殴ったらしい。
その痛みをすべて王は感じて飛び起きたのだ。
異世界人は隷属の腕輪をした筈なのに全く言うことを聞かなかった。
何度も文句を言い続ける。

それに食事を与えていないと言うのに元気なままだ。

それにおかしい。
なんだか、体がだるいのだ。

そう思いながら、侍女を呼び着替えをさせようとしたら、侍女が叫ぶ。
「王よ!どうしたのです!!」
「その前に医者を医者を呼びなさい!」

訳も分からず、ベッドに逆戻り、立てない程でもないのにと思いつつ、言うことを聞いたのだが、医者が現れ、その医者も無声の叫び声をあげた。
「ど、どうして?王・・・なのですか?」
「きゃあああ!!!」
遠くで悲鳴が聞こえた。

そして、メイドの一人が王の寝室に駆け込んできた。
「第二王子が!」
「第二王女が!!」
次々にメイドや侍従が押し寄せてきた。

分かったのは、皆が一様に老化したということ。

まるで、1日で10年ほど歳を取ったように老けたのだ。

パニックを起こした王はそれでも周りの者に説得させられ、ベッドで休んだ。
しかし、第三王子は16歳だったのに、おっさんに老け、加えて肥え太って豚のようになった為、誰の制止も聞かずに異世界人を切りに行った。
結果、第三王子が殴った少女の傷を第一王女が受け、蹴った傷を第二王子が受け、切りつけた傷がそのまま第三王子に降りかかり、第三王子は死亡した。

次々に死んでいく王族たち。

しかもそんな中、各教会から司祭が王城に前触れもなく訪れた。
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