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襲来2

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 凄い、お姉様!
 姉はいにしえの策士の生まれ変わりではなかろうか。私は、上がる口角を抑えて口を開いた。
「……お母様、実はですね、ユリウス様はこう仰ってくださいますが、実は嘘なんです」
 背後霊のようにぶつくさ呟けば、母は煩わしそうな顔を私に向けた。
「なによもう」
「あのですね、私の本当のお相手は……」
 ターゲットを見れば、本人はビクリと身体を強張らせる。
 しかし迷わず手を引いた。ごめんなさいと懺悔しながら抱き付いて、屈強な体躯が途端に硬直した。
「この方です!」
 同様に固まる王子、母、父。
 きっついなぁ……この状況。
 お姉様だけがグッと指を立てて楽しげだ。
 大丈夫、お姉様の情報なら……。
 息を吐いてから静かに言葉を紡いでいった。
「背中に小さな切り傷跡。右胸の下に三角形に配置された三つのホクロ……。左内腿に青いアザ」
「えっ……、えぇ?」
 ご本人が一番驚いていらっしゃる。
 どう調べたかは分からない。お姉様の情報網は、計り知れないのだ。
「ご確認ください。褥を共にせねば、分からぬことかと思います」

 その後、側近さんは部屋の隅で王子に脱がされた。見るも無惨に服を剥かれ、上半身裸の寒々しいお姿になった。
「あら……」
 母が口に手を当てる。さっきとは違う意味だ。
「あるな……」
 王子の声色は数トーン低くなっていた。
 生気が抜けて、心なしか青くなっていた。
 ちなみに、内腿のアザは王子と父が別室で確認した。
 しっかりあったそうだ。
「そういうわけですので」
 踏ん反り返る私に、側近さんは慌てて弁明する。
「お、お待ち下さい! 私は違ってメティシア様とは……」
 しかしすかさず、抱き付いた。
「確かに昨晩は違います。けれど、お忘れですか? あの夜のことを……」
 これも姉のカンペに書いてあった技だ。
 側近さんほどの歳の男性であれば、一度や二度の酔い潰れた経験はあるだろうと。
 私は、いつのことだと呆れながらも側近さんをジッと見た。
「えっ……まさか…………、異国の酒を飲んだ日……?」
 私は小さく頷いた。
 無論、そんな日は知らない。
「まさか……」
 信じられないというように、側近さんは眉を寄せる。私は、二マリと笑んだ。
「そういうわけですので!」
 ふふ、勝ったわ!
 一先ず退散する王子と側近さんを見送って、飛び跳ねながら部屋へと戻っていった。

 それから間をおいて、あれ? 私ってかなりの尻軽設定になってない⁉︎ と気が付いたけれどもうどうでも良いことだ。

 王子とさよならできればなんでも良いんだから!
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