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乙女ゲーム本編突入です。

第44話:デビュタント(開会)

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 バカ殿下がチョコアと開かれた扉の前におります。
 呼び出しの人も戸惑っちゃってるじゃん。チョコアを三度見位してたよ。
 そして、デビュタントの入場ルール無視かよ。
 お前、初等部から成長してないな。
 いやいや、まず扉が開いてからパートナーに手を差し出すんだよ。
 なに最初から腕組んじゃってんの?
 なにそのまま歩いて来てんの?挨拶は?

 私達の横をバカ殿下とチョコアが通り過ぎて行った。
 こうして正装してるのを見ると、『甘王公式本』のマカディーアに似てきたな。
 でも残念。ライジ殿下の王子様姿の足元にも及ばない。
 金髪も瞳の色も、ライジ殿下の方が鮮やかで綺麗だ。バカ殿下の瞳は、王族らしからぬ赤みがほとんどない色だしな!

「フォンティーヌ様、マカルディー殿下がこちらを見ていらしたわよ?」
 ミリフィールが口元を羽根付きの扇子で隠しながら話しかけてくる。
 あ、そっか。扇子で隠せば多少誤魔化せるか?
「他の女を連れて来て、お前は1人だザマアミロってところでしょうか?」
 思わず舌打ちしちまったぜ。
「フォンティーヌ嬢、口元を隠してる意味があまりありませんよ」
 ルーベンからのツッコミいただきました!


「ねぇ、サプリチョコアはどこまで付いていく気なのかしら」
 ジェラールの言葉にバカ殿下とチョコアに目をやれば、王族が集まっている場所まで歩いて行っていた。
 バカ殿下は後ろ姿だから表情がわからないけど、ライジ殿下が爽やかな笑顔で迎えている。
 絶対に裏があるだろ、腹黒殿下。

 バカ殿下が所定の位置に着くと、有無を言わさず陛下の開会の挨拶が始まる。
 バカ殿下の隣にはチョコア。
 本来なら私が居る位置である。
 不安気にバカ殿下の腕にしがみつきしなだれ掛かる様は、学園や街中なら許されるかもしれないが、公の場では悪手でしかない。
 見慣れてる学園の生徒は呆れ位で済んでいるが、それ以外の貴族は嫌悪すら見られる人もいる。

 自分にもたれかかるチョコアの耳元に何やら言っているバカ殿下。
 それに対してチョコアは「え~でも~」みたいな事を言って、馬鹿の腕を更に抱き込む。
 これは、前世の電車で見ていてもイラッとする案件だわ。

「ここにいるチョコア嬢は平民でありながら、なんと魔力があるのが判明しておる。
 王立魔法学園に在籍しておるので、特別にデビュタントとなった」
 いきなりの陛下の言葉に、会場内の視線全てがチョコアへと集まる。
 えぇ、もう、衆人監視の中でのイチャコラですよ。
「キャッ」なんて言って、バカ殿下の腕を持ったまま、後ろに隠れるして更にしなだれ掛かります。
 側妃の顔が青くなり、今度は赤くなりました。

 チョコアの事を引き離そうと側妃がドンッと押しますが、パン屋で鍛えられたチョコアはびくともしません。
 ヤバイ。笑いそうになった。
 コントかよ。
 バカ殿下は、呆然と立ち尽くしてます。
 こちらを見た気もしましたが、笑いを堪えるのに扇子で顔を隠したのでよくわかりませんでした。


 開会のファーストダンスは、本来王子2人とパートナーだったけど、パートナー変更によりライジ殿下達だけになりました。
 はぁ……何でスマホないんだろう。
 動画撮りたい。うるわしい。
 バカ殿下がこちらに来ようとしたのがチラリと見えましたが、兄と義姉を盾にします。
 この鉄壁の守りを越えられる猛者はいないぜ。

 ダンスが終わったライジ殿下がフロア中央からはけて、バカ殿下の肩をポンと叩きます。
 次はお前だ、的なヤツですかね?
 バカ殿下があからさまにこちらを見てますが、今日のお前のパートナーはそこの平民チョコアだ。
 頑張って踊れ。私は知らん。

 本来、開会のダンスが終わったら誰が踊っても良いのだが、ライジ殿下の肩ポンがあった為に誰もフロアに出ない。
 会場内の雰囲気が『早くマカルディー殿下踊れ』となってます。
 誰も踊っていないフロアに楽団の素晴らしい調べが響く。
 さぁ、早く踊ってくださいましな。
 マカルディー殿下。


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