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王立魔法学園~甘いは誰のため~(ざまぁはないよ!)

乙女ゲーム:甘くない入園式

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 いつもはシンと静まりかえっている学園の講堂が、ヒソヒソとした囁き声に包まれていた。
 その声音には、明らかな不快感が含まれている。
 皆の視線の先には、平民でありながら魔力量が多い為に特別枠で入園したショコラ。
 あからさまに「平民のくせに」や「恥知らず」と言った言葉さえ聞こえてきた。

 それでもショコラは、毅然と前を向いて座っていた。
 来たくて来たわけじゃない!そう言う事は簡単だったが、それでは負けたような気がする。
 自分は正式な手続きのもと、ここにいるのだ。
 あんた達になんか負けない!
 そう決意も新たに入園式に臨んだ。

「誰かこの方に、常識を教えて差し上げたら?」

 一際冷たい声が講堂に響いた。
 侮蔑を含んだ声が指し示す『この方』が自分の事だと、ショコラにもわかった。
 声の主はゆっくりと、そう、ゆっくりと優雅にショコラの前に立つ。
 さすがにショコラも目の前に立たれれば見ないわけにはいかない。

 そこには、淡い蜂蜜色の髪とブルーベリーの様な瞳を持つ、一目で高貴だとわかる女が立っていた。
 髪は緩やかなウェーブを描き、瞳と同じ色の髪留めで耳から上の髪を後頭部で留めてある。
 少し釣り上った目がきつい印象を与え、ホイップクリームのような真っ白い肌にサクランボの様な真っ赤な唇が更にそれを助長する。
 これで優しい笑みでも浮かべていればまた違うのかもしれないが、声と同じように冷たい表情がその顔には浮かんでいる。

「初めまして。エクレール公爵家長女、シフォンティーヌと申します」
 扇で口元を隠しながら、見下ろすようにショコラの前に立つ女〈シフォンティーヌ〉が声を発した。


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