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第六章 【二つの世界】
6-282 ハルナの決断
しおりを挟む『……来ましたね。どうやら、その顔の表情や身なりから考えると、決断されたようですね?』
「はい、よろしくお願いします」
創造者からの言葉に、ハルナは力強く返事をする。
創造者の後ろには、ラファエルが控えている。
ラファエルはハルナの姿を見ても、視線は合うがその奥に何の感情も感じ取ることができない。
そんなラファエルに対し、ハルナは挨拶の言葉を掛けようとしたが、その言葉を創造者によって遮られてしまった。
『……よいでしょう。では、ここから先は誰も何が起きるかわからない領域です。わたくしもハルナが望む未来へと導けるように力を貸してあげます』
そう告げた後、創造者は自分が持つ能力と役割について説明を始めた。
『繰り返しになりますが、この世界において私は生き物たちを創生する役目でした。もう一人の創造者が世界を創り出したのです……』
さらに続く説明では、今回の最終目的は”もう一つの世界”を消してしまうことだと告げる。
本当であれば、どちらかの世界が消えるだけで資源の安定は保たれるはずだというが、こちらの世界で味方につけるにはもう一つの世界の方を犠牲にするしかないと創造者は告げた。
創造者は、ステイビルたちが”できればそのようにしてほしい”と願っていることを確認し、消滅させてしまうのはこの世界ではないと決定した。
向こうの世界とかかわりがあったハルナは、その決定に対しスッキリと飲み込めないところが大いにあった。
しかし、どちらかの世界を犠牲にしなければならないという創造者の決定を覆すだけの手段が見つからない。
(二兎追う者は一兎をも得ず……だったっけ)
ハルナは、向こうの世界にいた時の言葉が頭の中に過る。
とにかく、行動を起こしてみなければこのまま大惨事が起きることを、ただ見守っているだけになる。
それだけは絶対にしてはならないと、この決断を下す話し合いの中でも、何もしないまま後悔することは絶対にやめようと真っ先に決めた。
「……それで、これから私は何をすればいいのですか?」
ハルナは創造者に対して、これらか自分が行うべき行動について聞いた。
『では、あの世界に向かいましょう』
「え?あの世界に行けるのですか!?」
『はい……その方法をようやく見つけたのです』
創造主が説明したのは、”オスロガルム”の残滓を発見し、その解析を行ったという。
それにより、オスロガルムやサヤ、モイスが使っていた不思議な空間の中へと移動できる能力が使えるようになったという。
その空間から、あの世界へと続く通路を見付けたのだと創造者は告げる。
『ですが、まだ一度も試したことがないのです。多分、大丈夫だとは思うんですけど……』
「ほ……本当に……大丈夫ですか?」
『えぇ。わたくしも創造者としてこの世界を創り上げた実力がございます。安心してくださいな……ですが、新しいことを試すのは久しぶりのことですので、失敗してもお許しくださいね……ふふふ』
その言葉にハルナは、不安を感じながら、ただ創造者の楽しそうな姿を見守っていた。
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