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第六章 【二つの世界】
6-357 サヤとハルナと9
しおりを挟む「――ま、待って!?」
呼びかけに振り返ることもしない存在は、念のために脚を止めてその場に立ち止まった。
相手の行動に一旦は安堵した相手は、気持ちを落ち着かせる暇もなく語り掛ける。
その内容は、この場で一番確認しなければならないことだった。
「ま、待って!?どうしたの?今までずっと一緒にこの世界を創り上げてきたはずなのに……どうして急に一人でやろうとしているの!?」
「……もうこれ以上は、協力することが難しいと判断したからだ」
「”難しい”ですって!?……なんで?どうしてあなたがそんなことを言えるっていうの!?」
「まさに”それ”だよ。ならば、どうして自分が私と一緒にやっていけると思っているんだ?その自信はどこから出てくる?あなたはあなたのやりたいことをこれからやればいいし、私は私がやりたいことをこれからは行っていく」
「この世界は……監視しなくていいの?あなたにもその責任があるんじゃないの!?」
「勿論だとも、この世界の監視は続けていく。だが、先ほど言った一人だけで研究を行うことについては止めるつもりはない」
その言葉を聞き、これ以上自分の望む結果へと導くことは不可能であると判断した。
しかしその裏側では、自分の望み通りにいかない怒りと、これ以上強引に物事を進めては取り返しのつかないことになることはわかっていた。
だから、いまはこの流れの中でどのような対応を取ることが最善かを必死に思考を巡らせる。そして関係性を繋ぎ止めるための一つの”案”を思いついた。
「わかったわ……あなたの考えを尊重しましょう。でも、同じこの世界を創り上げた者としての責任があるわ。だからもし万が一のことが起きた場合に連絡を取り合う方法は必要じゃなくって?」
「……確かに」
これまで世界を創り出した二つの存在は、近くにいたためすぐに連絡を取り合うことができた。
これからは、別々に行動することになるため、この世界のどこにいるいるのかわからなくなるため、連絡を取るための手段が無い。
「それでこういうのはどう?今までは、この世界に関わることがなく過ごしてきたけど、この世界の中に入っていくというのは?」
「……?それは、どのようにして?」
二人は今までは、この世界の営みに直接介入することなく見守ってきた。
介入したとしても、外部から環境を変化させたり、新しいものを追加していくという手段を取っていた。
この提案は、この世界を研究していく者とし興味が持てる提案だった。
「私たちは姿を変え、この世界の一部になるの。そしてこの生き物たちの様子を探って、過ごしていくのよ。そうすれば、何かこの世界に異変が起きた場合、その生き物たちが察して騒ぎ出すはずだと思うの。そのくらいの知能はあるはずよ、きっと」
「そこで危険を察したうえで”修正する”……ということか?」
「その通りよ。それでどのように、この世界に入っていくかっていうことなんだけど」
「……ならば、私にいい考えがある」
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