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第六章 【二つの世界】
6-371 サヤとハルナと23
しおりを挟むサヤは流すことのできない嫌な言葉を聞き、警戒心を最大レベルまで引き上げた。
「――行かせないよ!!!」
サラはさらに踏み込んで、盾の創造者へと距離を詰める。
「シャッ!!」
サヤは手にした剣に魔素を込めて、剣が持つ能力を発動させながらハルナの身体を切断させるべく横に剣を薙ぎ払った。
しかし、その手には手ごたえが伝わってこない。軽いジャンプで、剣の軌道の一番端の場所までその身をかわしていた。
『……悪いわね。あなたの思い通りにばかりにはさせないわ。私にも少しは”いい思い”をさせていただけないかしら?だから、この場はあなたの勝ちでよいですわ。その代わりに、私はあちらの世界で好きにさせていただきますわね?』
「さ……させるかぁっ!?」
サヤは剣を持たない方の手を差し出し、その手のひらから高濃度の瘴気の塊をいくつもぶつけていく。
だが、今度は先ほどの反対に、全ての攻撃がその直前で塞がれて魔素へと還っていった。それは、その力を持つ盾を持たない状態でも特別な存在として、その身は守られていた。
これ以上自分への攻撃が続いてこないことを確認し、盾の創造者はサヤに向かって冷たい視線で微笑む。
『私はね……忘れてないわよ?あちらの世界にあなたの大切な人がいるってことを。そう、こちらの世界を諦めたのはそういうことよ。まぁ、向こうの世界を消した後については保証ができないけど。私もここまで人間に馬鹿にされて、黙っていられるはずはないわ?』
サヤはその言葉を聞きながら、焦る気持ちを抑えこの気持ちを悟られないようにし、盾の創造者へこの剣を突き刺すタイミングを見計らっていた。
呼吸は浅くなり、背中には汗が噴き出て、意識的に身体の力を抜いても無意識に力が入る。
きっと、この場面において盾の創造者を仕留める最後のチャンスであると踏んでいた。
この機を逃してしまえば、再びその存在を探して固定する策を練らなければならない。
こういう状況となってしまっては、相手も最大限にまで警戒をしていくだろう。
そうなれば、盾の創造者を仕留めて、この世界の崩壊を止めることは難しくなる。
(……)
サヤの姿を見て、盾の創造者は言葉が出てこないことに残念に思っていた。
今は自分の方が有利な状況だと判断していた、今の目標はサヤが悔しがる姿を見ること。
この場面で必死になって、自分の行動を阻止しに来るかと思っていたが、ただ余裕のない視線で睨みつけているだけだった。
『……そう、残念ね。本当は泣いて許しを請うことを期待していたのだけれど……アナタにも剣の創造者にもそれはやりたくないのでしょうね。今でも必死に”どうすれば私を倒せるか”、”どうすれば止めることができるか”を考えているのでしょう?』
そう言いつつ、盾の創造者は今いた場所から更に後方へと下がっていき、サヤとの距離を開いていく。
『そろそろ……時間ね、いつまでもこんなことをしていられないわ。それじゃあ私は、楽しいことをしにあっちに行ってるわね。お先に』
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