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第六章 【二つの世界】
6-385 奇跡のからくり
しおりを挟む儀式を終え、この場に集まったサヤとヴァスティーユとヴェスティーユ以外の者たちの表情は嬉しさと困惑が入り混じったものとなっていた。
その理由は、”全員が契約”というその結果が原因だった。
アーテリアとサヤだけが、今回のカラクリについて理解をしていた。
これまでの王国内での精霊との契約において、数名の参加で必ず契約ができない者もいた。
年によっては参加した中で、誰ひとり契約ができないという結果に終わった年もある。
だからこそ王国はその確率を少しでも上げるために、契約を受ける者たちの人格や家族歴などを考慮し、この場に連れてくる者たちの選択の条件を研究し続けてきた。
しかし今回の結果は、今までの研究結果が無に帰してしまうほどの結果が出てしまった。
アーテリアはサヤと二人きりになった際に、事前に話を持ち掛けられていた。
それは、今回連れてきた二人を精霊との契約に参加させる報酬として、”その場にいる者たち全ての契約を完了させる”という条件だった。
アーテリアは、初めてサヤの言葉にを聞いた時に自分の耳を疑った。
どんな手品を使ったらそんなことができるのかという思いが、真っ先に思い浮かんだ反応だった。
だが、サヤはその反応すらも予測していたようで、さらに言葉を続けていく……それは提案した具体的な内容だった。
精霊の契約は、各精霊の判断によって対象となる人物と契約するかの判断を任せている。
そのため契約に関して必要なってくる条件は、意思を持っている精霊と、それを待つ受けて側の人間の性格によるもと説明をした。
そこでサヤは、その問題を解決するには、強制的に契約をさせてしまえば問題が無いと告げる。
その考えは当然だが、強制的に契約をさせる手法と、それに伴うリスクについてはどう考えているのかと問うと、サヤはある大精霊の名を出した。
「あぁ、そのことはもう”ラファエル”に言ってあるから……もちろん、承諾してくれたからさ、安心していいよ?」
アーテリアは、サヤという人物がここで理解できた気がした。
だからこそ国王や大精霊たちも思い通りにすることができ、そして自分たちでは決して敵わない存在であるということも。
今回の件に関してはこの場ではアーテリア以外には、この事を伝えていない。
この事が広まってしまえば、サヤのところにいろんな話が持ち掛けられてくることになるだろう。
ステイビルやエレーナに話をした際にも、決してこのことを口にしないように約束させた。
「そう……でしたわね。サヤ様がおっしゃったことは、本当でした」
「あぁ、でも今回限りだからね?じゃないと……アンタたちも困ることになるだろうからさ」
二人は少し離れたところで、小さな声で言葉を交わす。
向こうでは、これからのことなどを教員がローディアたちに説明をしていた。
その話しも終わり、いよいよ馬車の場所まで戻ろうとした。
その時――
始まりの場所に光の塊が現れ、その中心には女性のようなシルエットが映し出されていた。
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