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第六章 【二つの世界】
6-386 異変
しおりを挟むローディアたちは初めて目にし、アーテリアも人生の中で一度だけ目にしたような光景に驚く。
アーテリアは自身が参加した王選の際に、一度だけこの場面を見たことがあった。
ローディアたちは、ほんの数日前まで行われていた精霊使いになるための講習の際に、誰かがアーテリアに対して大精霊の質問を投げかけた時に話してもらった内容を思い出していた。
光の中のシルエットがはっきりし始めた頃、新たな奇跡に期待しながらローディアたちはその正体が姿を現すことを待っていた。
この場ではサヤだけが、今起きていることに対して強い警戒感を示していた。
サヤは、ヴァスティーユとヴェスティーユの二人を自分の後ろに下げようとしたが、二人も事前の情報がない状態でも初めて見る不思議な現象に目を外すことができないでいた。
(――ちっ!?)
サヤは心の中で舌打ちをして、再び光の塊の方へ目を向ける。
光の塊の中のシルエットはその正体をハッキリと認識できる程になっていた。
「……ラファエル。アンタ、どうしたんだ?」
完全にその姿をこの場に晒したラファエル、その姿に違和感を感じたのもサヤだけだった。
精霊の契約の確率操作を依頼した際と異なる空気を纏っていた。
「この方が……ラファエル様!?」
ローディアが驚きの声をあげ、その言葉がきっかけとなりその場の空気が動き始める。
ラファエルの掌の上に、元素が集まり通常の精霊使い達が扱う量よりも危険と感じる量が集まっていく。
「アンタ……何してんだ!?」
その声と同時に、ラファエルは光の塊をアーテリアたちに向かって放った。
「――ちっ!?」
本来、緊急時には防御態勢をとるべき教員たちも、大精霊の姿を目にして魔法に掛けられたかのように迫る危険に対して行動を起こすことができていない。
サヤは急いで、背中の盾を掴み円盤のように投げた。ちょうど良いタイミングで、ラファエルの放った光の塊の手前を盾が通過し、その攻撃は盾の能力によって元素へと還っていった。
そのサヤがとった行動により、アーテリアも今の状況を理解し始めた。
「あなた達は、ローディアを守りなさい!」
「は、はい!!」
ヴァスティーユとヴェスティーユも、教員によばれその後ろに回るように指示された。
そして状況を見て、ローディアたちと共にこの場を離れるように告げられた。
ローディアたちは自らの身を護るために、緊急時に避難する際の訓練も受けていた。
こういった行動は、精霊使いとなった後でも必要な行動のため、訓練の段階で取得する技術のひとつであった。
ヴァスティーユ達は、そう言った講習を受けていないため、この場はローディアたちにその判断を任せついていくように言われた。
そのことを確認したサヤは前に出て、この場の中にいる誰よりもラファエルに近い位置に移動する。
地面に転がる盾を手に取り、投げて転がった際に付着したちぎれた葉を払いのけながら再び背負う。
「何とか言ったらどうなんだい?……ラファエル」
その言葉には、冷静さを失った怒りの感情がこもっていた。
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