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第六章 【二つの世界】
6-438 決戦10
しおりを挟む「……ラファエル」
『はい、サヤ様』
推測を語っている途中で、急に名前を呼ばれたラファエルは、物語の中から現実に引き込まれたような感覚になる。
そしてサヤから投げかけられた質問は、ラファエルにとっては然程遠くもないつい最近のような時期で、その人物は前国王の関係者でもあったためよく覚えている内容だった。
「カメリアはアンタとの所に何度か質問をしに行ってたよね?」
『はい……ですが、カメリアからの質問に関しては、知っていること知らないこと含めて”答えられない”ものがほとんどでしたが』
「つまりあまり人間に知られないように、情報の制限をしていたわけだね……」
「そしてカメリアは、ある方法を見付けてしまったらしいんだ……」
『ある方法とは……それは一体?』
期待を寄せるラファエルの意識を弄ぶように、サヤはその答えをかなりの間を開けてじらした。
そして、ラファエルの意識がすべて自分に向いたことを感じて、サヤは楽しそうに止めていた言葉を告げる。
「……それは、”四元素”の習得方法と、精霊の人型を創るための方法だったんだ」
『え!?……あれは、偶然に起こるものだと』
「だけど見つけたみたいなんだよね?でも、それができたのはカメリアだけじゃないみたいなんだよ、今までにもその方法にたどり着いてた人間もいたんだ……だけど」
『ま……まさか、消されてしまっ…た?』
「そう、そこにいる奴にね」
ラファエルはこの世界において全ての精霊を管理はしていたが、その全てを把握していたわけではなかった。
人間との契約が終り、人間と共に生活をしている精霊たちには、それぞれ好きなようにさせていた。
その一部の精霊たちが”消された”としても、ラファエルにはそれを感じ取ることはできなかった。
先ほどのサヤの話しだと、自分たちの存在を創り上げた盾の創造者がある特定の精霊――もちろんその主の人間も含む――を消していたことに驚いた。だが、これまでのことをみると、それは決してあり得ない話ではないと納得する。そのままラファエルは恐怖と驚きを一緒に喉の奥に飲み込み、なるべく盾の創造者と視線を合わさないようにサヤのことを視界に固定した。
『サヤ様……しかし、なぜ”そのような”ことをする必要があるのでしょうか?現に人型の精霊は多くはありませんが、一定の数は存在しております。その者たちが消されない理由は……?』
「それはね……”コイツ自身”の身が危ないからだと思ったんじゃないかな?」
サヤはそう言って、親指だけを立てて横に向け、クイックイッと二回と近くにいる身動きの取れない盾の創造者を指す。
ラファエルは、そう返答を受けたがその内容は全く理解できないものだった。それに対し、さらに質問をしてもいいのかどうか迷っているうちに、感じ取ったサヤが言葉を繋げた。
「アタシが思うには、人型になるっていうのは、生き物を創造するための機能の一つなんじゃないかな?」
そう言ってサヤは、盾の創造者の顔を横目で見る。剣の創造者からの情報と自身の推測の答え合わせを、盾の創造者からの表情で探ろうとしていた。しかしその結果は、全く変化のない表情からは何も読み取ることはできなかった。
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