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第3章
急な呼び出しと急な判断
しおりを挟む一通り遊びまわったパンが眠りの世界へ入る頃、ククちゃんが迎えにきて小さくて元気すぎるドラゴンは自分のお家に帰って行った。
飛んでいく親子ドラゴンを見送り、お家に帰ろうと歩き出したところで、コルダからとーさまが呼んでいると聞き、急遽ヨハネスに抱えられて全力疾走。
とーさまがあんまり時間がないのと、僕が走るよりも僕を抱えてヨハネスが走った方が早いということで…もう無駄な抵抗はせずヨハネスに身を預ける。
結果
アビスの森からお家まで馬車20分のところをヨハネス爆速便で10分で到着。
身体強化の魔法を使ったにしても早すぎる。
一体うちの使用人達はどうなっているんだ…
「雑い。」
「申し訳ございません。急いでますので。」
とーさまが待つ執務室の前まで来て、地に下ろされた僕の体に付着した土や汚れをパパパパン!!!と手で叩かれ落とされる。
痛くはないけど、雑な扱いについ口から苦情が零れ出たけどヨハネスは口先だけで謝って、顔や態度はまったく申し訳なさそうではなかった。
まぁ、ヨハネスは護衛であって生活のお手伝いをしてくれる使用人ではないからね…主人の扱いが雑くても仕方ない、仕方ない。
コンコン
「入れ。」
「失礼します。」
執務室の扉をノックすると中からとーさまの真剣味のある声が聞こえてきて、ピンっと背筋が伸びる。
こういった感じの雰囲気の中とーさまに会うことは滅多にないので身内であっても緊張する。
中に入ると机に向かい書類と睨めっこしているとーさまと忙しそうに動き回るワイアットの姿があった。
そこで、そう言えば大体はワイアットが扉を開けてくれるのに今回はそれがなかったなと思い出した。
「ルナイス。少し座って待っていてくれ。」
「はい。」
とーさまは僕をチラリと見て、すぐに書類に視線を移し、僕にソファに座って待っているように告げた。
殺伐とした現場に、前世の言葉『社畜』を思い出す。
うちのとーさま社畜。
「ふぅ…待たせて悪いな。あまり時間がないので担当直入に聞く。ルナイス、アーバスノイヤーの家業を継ぐ気はあるか。」
しばらくぼーっと社畜をしているとーさまを見ていると、お仕事にひと段落つけたとーさまが溜息を吐きながら向かいのソファに腰を下ろした。
腰を下ろしてすぐに放たれた言葉と向けられた強い視線に体が反射的に唾を飲み込み、喉からゴクリと音が鳴った。
以前考えておくように言われて、でもそんな急いで決めることじゃないって雰囲気だったのに、こんなに判断を急がれるということはきっと何かあったのだろう。
しかし、その何かをとーさまは先に僕に伝える気はなさそう。
「家業…とは裏のお仕事っという認識であっていますか?」
「そうだ。」
「表立った領地経営や社交はにぃ様が行い、領主はにぃ様…間違いないですか?」
「あぁ。しかし、アドルファスからは裏家業を全てルナイスにさせるつもりはないと言われているし私も全てをルナイスに押し付けるつもりはない。」
とーさまと視線をしっかり合わせながら、一番確認しておきない事項を質問する。
「つまり、僕はにぃ様の部下。」
「まぁ…そうだな。」
「なるほど…なら継ぎます。」
にぃ様の部下だなんて、安泰間違いなし。
超ホワイトな環境であると保証されているも同然。
そんな素敵な職場へのお誘いをここで断るわけにはいかない!と頷けば、何故か微妙なお顔をしたとーさまが。
「…決して楽な仕事ではないぞ?」
「仕事に楽なものなんてないです。変な人の元でこき使われるくらいならにぃ様の部下として忙しく駆け回る方が僕はいいです。」
「…分かった。ではその方向でこれから動く。ルナイスにもこれまでより訓練に励んでもらわなくてはならない。」
「…訓練の件は理解しました。とーさま…そろそろ何故こんなにも結論を急いだのか説明を求めます。」
これまでよりも厳しい訓練に取り組むのは僕もつよくなりたいので全然問題なし、なのだが、僕が継ぐか継がないかの結論は卒業間近まで急がないはずだった。
それが今のタイミングで結論を出すように言ってきた理由をきちんと教えてもらわなくては。
有耶無耶に流されませんよっとキッと強くとーさまを見据えた。
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