王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰

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第5章

成人しても疲れたらすぐ寝る

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殿下にエスコートされ進んだ先には馬車の停留所があり、そこにはアーバスノイヤー家の馬車が停まってあった。

これはとーさまが乗って帰られるものですよっと殿下に伝えると、そのとーさまからこの馬車に乗ってアーバスノイヤー家へ帰宅するようにとの言伝を預かっていると教えてくれた。

殿下を伝言に使うとーさまって…と思わんでもないが、殿下は気にされていないようだし僕も気にしないことにしとく。







アーバスノイヤー家に着くと、にぃ様とノヴァが出迎えてくれた。

にぃ様は僕と入れ違いに戦地に赴かねばならず、世話しない見送りになってしまったことが気にかかるので後程きちんとにぃ様の無事を祈ろうと思う。



ワイアットにまずは食事をっと勧められて、どうやらご飯を食べずに待っていてくれたらしいノヴァと食事を摂った後、とりあえず寝ることにした。

やっぱり慣れていない場で神経使ったことで疲労感がすごかった僕はベッドに入って数秒で意識を飛ばした。




体を揺すられたことで意識が浮上し、目を覚ました僕の目の前にノヴァの綺麗な顔。

歳を重ねるごとに綺麗さが増していく彼には僕という相棒がいるというのに令嬢、令息達からの熱い視線とアピールが向けられている。





「ルナイス?起きてるか?」

目を開けてノヴァを見つめたまま何も喋らず動かない僕にノヴァが苦笑いで僕の目尻の辺りを親指で優しく撫ぜる。



「起きた」


「ん。公爵様が帰宅された。夕飯を食べながら少し話をしようということだ」



そう言われてんーっと意味のない音を発しながら、体をぐりんぐりんして徐々に起き上がっていく僕をノヴァは急かすことなく見守っていてくれる。

これがヨハネスなら「起きてください。時間ありません」って冷たく言うんだ。


っていうのも、ノヴァはこんな状態になる僕を見越して予定よりも早めに起こしにかかってくれるのだけど、ヨハネスは気持ち良さそうに眠る僕を起こすことに躊躇してギリギリの呼びかけになってしまうので、起きてからノヴァは待っていてくれるし、ヨハネスは急かすのだと知っているから別に嫌なわけじゃない。




むしろこの歳になって起こしてくれる人が居るっていうのはありがたいことだと思う。







のろのろと着替えて、ノヴァに手を引かれながら歩く廊下で少しずつ意識がしっかりとしてくる。


食堂に着く頃にはちゃんと自分であるけるくらい意識がはっきりした僕は扉が開かれて見えたとーさまにハグをしてから席に着く。

ノヴァもすればいいのに、ペコリとお辞儀して席に座ってしまう。




「ルナイス、今日はよくやった」


「はい。あっ、パン!」


「パンなら影から出してクク様の所へ返した」


「よかった!ありがとうノヴァ」




影の中からパンを出してあげるのを忘れて眠ってしまっていたから、慌てて影からパンを出そうとする僕にノヴァが既にパンをククちゃんの所に返してくれたことを教えてくれた。

どうやって影から出したの?と聞くと、眠ってる僕を半分覚醒させてどうにか影からパンを出したのだとか…その記憶が僕にはまったくないのだけど、まぁパンが無事ならそれでいい。



坊はほとんど僕の影の中に好んで居るし、あの子は自分の意思で僕の影に入れるし出れるので、坊については何も心配はいらない。







「とーさま。まだホルス様達にこの国に戻ってきてもらうのはリスクが高いと思うのです」


「あぁ。焦ることはない。騎士はしっかりと鍛えられているし、今の所戦況は悪くないと聞いている。本来この戦は我々で納めないとならないところを助けてもらっているのだ。それにアドルファスがいるんだ。ドラゴンがいないから負けたなどという情けのない結果には決してならないよ」


戦場で今も戦っているだろうにぃ様を思い浮かべて、とーさまに言うと、とーさまは心配いらないと笑った。

とーさまの言葉に心配は変わらずしてしまうけれど、幾分か心が軽くなった気がする。





「もし戦況が悪くなったらまた俺が駆り出されるだろうから大丈夫」

ノヴァからもそう言われて、確かにっと僕は完全に体の力を抜いてお肉を口に放り込む。






「ルナイス達のおかげで、一番懸念していたアマ国王の理解も得られたことで敵になりうる国はぐっと数を減らした。きっとあと少しで戦も落ち着くだろう」


「そうだといいのですが…アマ国王はすごい御方ですね。厳しいことも言われましたけど、ああ言うのは国王として当然というか、あの方が自分の上司であれば安心だなって印象を受けました」



「彼は自国の王位継承争いで命を狙われていて、アーナンダ国へ亡命していた時期があって、その経緯があるから我が国とアマ国は同盟国になっている」



「そうだったのですね。それにしては凄くアーナンダ国に厳しかったような…」




「獣人の男は縄張り意識と保護意識が高い。だからこそ自国にとって良くないことを企んだ国は例え過去に助けてくれた国であっても容赦しないだろうな。特に彼はそういう人だ」




記憶を思い起こしているように目を閉じるとーさまを見て、たぶん知り合いなんだろうなっと察する。

ヤチホコ様はとーさまについて何も言ってこなかったし、とーさまも明言しないという事はそれほど深い仲ではないのかもしれないけれど…とーさまの様子を見るに決して悪い仲ではなかったことが伺える。








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