恋した人魚の慣れの果て
人外のモノが人になることは、果たしてハッピーエンドなのか?
「私が人になったのではありません。ただ、私の体が壊れただけです」
人に恋した人魚ほど、哀れなモノはこの世にない。飛んで火に入る夏の虫。中途半端に泡となり、歪んだ体で死ねやしない。
「お前が奪った全てを返せ」
「お前が歪めた全てを戻せ」
人魚は総じて容姿端麗。彼らの歌は人を惑わし海を操る。捕獲の難しい人魚を保持することが権力者のステータスであり、名門の子息にとって一人前になるための通過儀礼となっていた。
そんな世界で、とある人魚は泳ぐことも歌うことも下手糞。両親から半ば見放されながらも厳しい海の中で辛うじて生き残ってきた。だが成体となり、本格的に親から突き放された彼女はあっさり人間に捕獲されてしまう。人の世を知らない人魚は観賞魚になった。彼女の主人は人間不信な捻くれ男。何もかも彼には敵わない。自由はないが己には不相応な安全な生活。歪な関係の中、芽生えていった主人への感情は…彼女の体を変えていく。
「私が人になったのではありません。ただ、私の体が壊れただけです」
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「お前が奪った全てを返せ」
「お前が歪めた全てを戻せ」
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