118 / 206
第3部 仇(あだ)
76:サマルカンド戦6
しおりを挟む
人物紹介
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主。
シギ・クトク:チンギスの寵臣。戦場で拾われ正妻ボルテに育てられた。タタルの王族。
ジェベ:チンギスの臣。四狗の一人。ベスト氏族。
ホラズム側
スルターン・ムハンマド:ホラズム帝国の現君主。
人物紹介終了
チンギスは捕らえた敵から、これがサマルカンド内の騎馬軍総出の逃走であるを知るや、近衛隊万人隊並びにシギ・クトク万人隊を除く、全騎馬隊を追撃に発すると共に、次の命を徹底した。
「騎兵の逃走を許すな。スルターンとの合流を決して許すな。殺せ。捕らえよ」と。
更にチンギスは次のことに注意を喚起することも忘れなかった。
「スルターンが共に逃げておるかもしれぬ。見つけ次第、必ず生け捕りにせよ」と。
あの者が軍の支配者というならば、己と同じく常に最大の軍勢を手許に置くを望もう。これだけの軍勢を残して立ち去るなど、チンギスにはどうしてもうなずけぬ、信じ難きことであった。
それを受けて、自ずと追跡する兵の士気も上がった。是が非にも己がスルターンを捕らえんと。さすれば恩賞にもありつけ、何より子々孫々にまで語り継がれる栄誉となろうと。
ただホラズム軍側にも有利な点はあった。これが最初から逃走を目的とした企てであったこと。決して総崩れの後の敗走ではなかった。あくまで逃げ延びる、生き延びることを目的としての軍事行動であったこと。ゆえに追われるままに、バラバラとなって逃げ散るのではなく、軍勢を保つを得た。目的地も定まっておった。迷いもなかった。
更に言えばこの部隊はそもそも大軍であった。確かに追撃にかかるモンゴルの騎馬軍に比べれば少ないとはいえ、絶対数で五~六万といえば大軍という他ない。
それゆえ待ち受けるジェベの部隊の下に至ったホラズム軍は、逃走軍というより、まるで突撃部隊の如くの隊形と勢いを保って襲いかかって来た。
退く者は斬るぞとの、ジェベ以下、隊長たちの叱咤にもかかわらず、モンゴル兵はその突撃のいさましさにひるみ、道を開けた。ホラズム軍は勢いのままにジェベの部隊を突破した。
「追え。一兵たりとも逃がすな」
ジェベの命の下、その部隊も追撃に転じた。
モンゴル側
チンギス・カン:モンゴル帝国の君主。
シギ・クトク:チンギスの寵臣。戦場で拾われ正妻ボルテに育てられた。タタルの王族。
ジェベ:チンギスの臣。四狗の一人。ベスト氏族。
ホラズム側
スルターン・ムハンマド:ホラズム帝国の現君主。
人物紹介終了
チンギスは捕らえた敵から、これがサマルカンド内の騎馬軍総出の逃走であるを知るや、近衛隊万人隊並びにシギ・クトク万人隊を除く、全騎馬隊を追撃に発すると共に、次の命を徹底した。
「騎兵の逃走を許すな。スルターンとの合流を決して許すな。殺せ。捕らえよ」と。
更にチンギスは次のことに注意を喚起することも忘れなかった。
「スルターンが共に逃げておるかもしれぬ。見つけ次第、必ず生け捕りにせよ」と。
あの者が軍の支配者というならば、己と同じく常に最大の軍勢を手許に置くを望もう。これだけの軍勢を残して立ち去るなど、チンギスにはどうしてもうなずけぬ、信じ難きことであった。
それを受けて、自ずと追跡する兵の士気も上がった。是が非にも己がスルターンを捕らえんと。さすれば恩賞にもありつけ、何より子々孫々にまで語り継がれる栄誉となろうと。
ただホラズム軍側にも有利な点はあった。これが最初から逃走を目的とした企てであったこと。決して総崩れの後の敗走ではなかった。あくまで逃げ延びる、生き延びることを目的としての軍事行動であったこと。ゆえに追われるままに、バラバラとなって逃げ散るのではなく、軍勢を保つを得た。目的地も定まっておった。迷いもなかった。
更に言えばこの部隊はそもそも大軍であった。確かに追撃にかかるモンゴルの騎馬軍に比べれば少ないとはいえ、絶対数で五~六万といえば大軍という他ない。
それゆえ待ち受けるジェベの部隊の下に至ったホラズム軍は、逃走軍というより、まるで突撃部隊の如くの隊形と勢いを保って襲いかかって来た。
退く者は斬るぞとの、ジェベ以下、隊長たちの叱咤にもかかわらず、モンゴル兵はその突撃のいさましさにひるみ、道を開けた。ホラズム軍は勢いのままにジェベの部隊を突破した。
「追え。一兵たりとも逃がすな」
ジェベの命の下、その部隊も追撃に転じた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる