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55 遭遇

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 旅程は順調に進んでいた。

 あたりまえの話だが、辺境を奥へ進むにつれ出現する魔物のレベルは上がっていった。普通ならかなり手を焼くところだ。被害が出ていてもおかしくない。

 だが、食欲に取り憑かれた冒険者たちは、本来感じるはずの恐怖を美味いメシに対するモチベーションに換え、程好い精神状態で魔物に挑んでいた。

 結果、被害どころか手傷を負う者すらほとんどなく、破竹の快進撃と言うにふさわしい状況が生まれていた。

「これはこれで、成果として十分な気がするな」

「だよな。食糧事情が劇的に改善されるわけだから、功績としちゃあでかいよな」

 ケントとしてもそう思わなくもないのだが、その判定を下すのは自分ではない。となれば、万全を尽くしたいところだ。

「ここまで来たんだ。行けるところまで行く」

「オッケー、とことんまでつきあうぜ」

 もともとその予定なのだ。冒険者たちにも否やはなかった。

「フローリアは大丈夫か?   キツかったりしないか?」

 気遣って訊いてみたのだが、フローリアの返事はあっさりしたものだった。

「これでも皇女将軍と呼ばれる身ですから、心配は要らないわ」

「そう言えばそうでした」

 ケントは苦笑しつつ、意識を前へ戻した。かなり奥まで入り込んで来ているはずだが、この先どうなっているかの情報がほとんどないため、自分たちの現在位置がどの辺なのかがまったくわからない。

「ゴライオさんがサイクロプスに遭遇したのって、もっと奥地なんですか?」

「もう少し行ったあたりだと思うんだが、必死だったせいでよく覚えてねえんだよ」

「そうですか」

 できれば疲労が溜まる前の良いコンディションの時に当たりたいと思うのだ。その方が勝率が上がるはずである。

 そんなケントの願いが届いたのか、不意に辺りを圧する咆哮が轟いた。

「ーーーーー!」

 人間の声帯からは出すことができないであろう叫びが空気を震わせる。

「くっ!?」

 不意に強烈な威圧を食らう形になり、その場に昏倒する者が続出する。

 続けて轟音と共に大地が激しく揺れた。これにはケントも足を取られ、転倒する。

「何だっ!?」

 意味不明の喚声、咆哮が大気を震わせ、何かの激しいぶつかり合いに大地が鳴動する。

 何かただならぬことが起こっているのは確実だったが、それが何なのかは見当もつかなかった。ただひとつ理解できたのは、このままここにいるのはヤバい、という生存本能に基づく危険察知の警告だった。

 これは勝率がどうこう言う相手じゃない。考えが甘すぎた。

「逃げた方がよくないですか?」

「だな。どう考えてもこの空気はヤバすぎる」

 撤退に移ろうとした一行だったが、それは少々遅きに失した。

「!?」

 一際大きな叫び声が響いたかと思うと、何か巨大なものが飛んできた。

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