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間章
間話 藤堂正道の仲間
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「宣戦布告したのはいいけど、勝ち目あるの?」
「それを今考えているところだ、左近も考えてくれ」
「せ、先輩! 考えてなかったんですか!」
左近と俺と伊藤は青島中央公園で今後の対策を練っていた。
押水に宣戦布告したことを左近に報告すると、じゃあどうするのって話しになり、俺達は作戦会議を開くことになった。
作戦会議を始めたが、具体的な策が何も出てこない。
「あ~あ、先輩があそこまで啖呵を切るから期待していたのに、がっかりです」
「俺はただ押水にラブレターの件と桜井さんの事を確認しておきたかっただけだ。勝算があってのことじゃない」
「ううっ……私、考えていたんだけどな」
「考えていた? 伊藤さん、何か案があるの?」
左近の問いに、伊藤は慌てたように手を左右に振る。
「あ、すみません。そういうことじゃなくて。もし、彼を倒す方法があるのなら、リクエストがありまして……」
「具体的にはなんだい?」
伊藤はますます恐縮して、声が小さくなる。
「ええっと、そうですね……例えば、嫉妬かな?」
「嫉妬?」
「だって、彼の行動のせいで多くの人が嫉妬しましたよね? 彼にも嫉妬する気持ちを思い知ってほしいと思いまして」
伊藤の要望に、左近は同意するようにうなずく。
「なるほどね。それなら僕は全校生徒の前で、恥をかいてほしいかな。風紀委員を辞めさせられた恥辱をはらしたいから」
「いいですね。それなら私は……」
伊藤も左近も、押水への恨みつらみを並び立てる。気持ちは分かるが、今はそんなことをしている暇はない。二人の悪口合戦をたしなめる。
「おいおい、どんどん話がそれてないか? 俺達は今、押水を倒す方法を探しているだろ? 左近達が提案しているのは、願望じゃないか」
「いいじゃない、願望でも。それが押水君を倒す方法につながるかもしれないじゃない。正道はないの?」
そんなもの、あるに決まっているだろう。
「……女のことで痛い目にあってほしい」
「あるじゃないですか。どんどんいいましょうよ。私、メモをとるので」
押水を倒す方法はさっぱり案が出てこないのに、どんなひどい目にあってほしいかの要望はとめどなく出てくる。
いかん、俺もつい楽しくなってきた。
伊藤のメモしたノートはすぐに文字で一杯になる。
「ふう、やりきりましたね」
「伊藤、満足したらダメだろ。まだ、何も方法が見つかってないぞ」
「そ、そうでしたね」
テレたように笑う伊藤につい俺も苦笑してしまう。
「伊藤さん、ちょっとノート見せて」
「どうぞ」
伊藤からノートを受け取った左近は、書かれている内容をチェックし始めた。
ペンを手にとり、ノートに線を入れたり、丸をつけたり、色々と書き込む。
「左近、何をしているんだ?」
「使えそうなものがないか判断しているの。今は少しでもヒントになるようなものがほしいからね」
考えなしに出した要望が本当に使えるのだろうか? 左近はすべての項目をチェックし終えた後、ぼそっとつぶやいた。
「……いけるかも」
「本当か!」
「うん。準備が必要だけど、いいことを思いついたよ」
左近め、何か悪だくみを思いつきやがったな。
左近の口元がつり上がるときは、大抵ろくなことを考えていない。だが、今はそれが頼もしく思える。
「正道、伊藤さん。ちょっと、時間をくれる? 案がまとまったら、手伝ってほしいんだ」
「おう」
「任せてください!」
ここは左近に任せよう。俺達は左近を信じて待つのみだ。
二日後、左近から連絡を受けた俺と伊藤は青島中央公園に集まっていた。三人がそろったところで、左近が話を始める。
「それじゃあ、作戦会議を始めようか」
会議を始めようとしたとき、一人の少女が俺達を指さしてきた。
「ママー、あの人たち何してるの?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
「……」
「……」
公園には、俺達のような高校生が他にはいないので、かなり目立っている。
伊藤は子供に指をさされ、それを注意する母親の言葉を聞いて、恥ずかしそうにうつむいている。
「いや、先輩も同類ですからね?」
「俺は別になんとも思ってないぞ」
「嘘です! 拳が震えているじゃないですか」
ああ、風紀委員室が懐かしい。早く戻りたい。
「ねえ、話を進めてもいい?」
「左近はこの状況について、何か思うことはないのか?」
何の恥じらいもない左近を見て、俺はつい尋ねてしまう。
「無いよ。それに時間がないし、早く終わらせよう。明日で決着をつける」
「橘先輩、思っていたんですけど、そんなにあせる必要があるんですか? もっと慎重にいくべきでは? 急いては事を仕損じるとも言いますし」
「実はね、伊藤さん、今の風紀委員長が正道を風紀委員から追放しようと動いているの。もし、正道まで風紀委員を辞められたら、押水君に手出しできなくなる」
「つ、追放って、本当に崖っぷちですよね、私達」
伊藤の言うとおりだな。このままだと、押水の都合のいい学園ができてしまう。なんとしても阻止しなければならない。
「僕達の目的は、二つ。一つは押水君から女の子達を引きはがすこと。もう一つは、事実確認だ。こっちは僕に任せてほしい。押水君から女の子を引きはがす件は正道と伊藤さんの力を貸してほしい」
「任せてください、橘先輩!」
「具体的には何をしたらいい」
左近が、俺達に紙を手渡す。その紙にそれぞれの役割が記載されていた。
「この案は、僕達の思い付きを組み合わせて作ったものだから、でたとこ勝負になるところが多い。一応、仕掛けはいくつかしておいたけど、必ず成功する保証はないし、失敗する可能性が高い。それでも、僕達はやり遂げなければならない」
俺も伊藤も左近の意見に同意するようにうなずく。
左近の案がダメなら、もうお手上げだ。失敗は許されない。それでも、やり遂げてみせる。
「正道、この写真、持っていて。高城先輩が正道を陥れようとしたときに役立つから。これで時間が稼げるはずだ」
左近から受け取った写真を見ると、一目で左近の思惑が分かった。これなら、風紀委員長とやりあえる。相変わらず、いい仕事してる。
高城先輩にも借りがあるからな。風紀委員を辞めさせられた左近と伊藤の仇をとらせてもらおう。
決意を新たにしていると、伊藤が手を俺達の前に差し出してきた。手の甲を上にして、俺達を見つめている。
「先輩、橘先輩。願掛けしませんか?」
「いいね。なんか青春っぽい」
「俺達がやろうとしていることは、人をはめようとしていることだがな」
俺と左近は伊藤の手の甲に自分達の手を重ねる。
「僭越ながら、私、伊藤ほのかが音頭を取らせていただきます。ファイト、と私が言いますので、先輩方は、いっ○つ! この一声、お願いします」
「それは不味いだろ。オーでいいだろ」
「そうですか? なら、それでいきますね」
チームプレイなんて俺らしくない。大抵のことは俺一人で厄介事を対応してきた。
今回の相手は、初めて出会うタイプの問題児で戸惑うことが多かった。
だが、今は違う。俺には左近と、頼もしい後輩の伊藤がいる。こんな切羽詰まったときに少し不謹慎だが、頬が緩んでしまう。
伊藤が大きく息を吸い、音頭を取る。
「では、いきますよ! ファイトーーーーー!」
「「「オォー」」」
掛け声と共に、俺達は手を真上に上げた。
不思議な気分だ。力がみなぎってくる。負ける気がしない。
押水一郎、勝負だ!
「あ、先輩。一応、神社に願掛けにいきませんか?」
「伊藤……なんで、お前はそう力が抜けるようなことをいうんだ」
さっきの音頭は何のためにしたと思ってるんだ。せっかく、結束力を高めたのに。
「だ、だって、神様にもお願いしたほうがいいと思って」
本当に大丈夫なのか? しまらないな。
まあ、少しは肩の力を抜いたほうがいいかもしれない。
「……いくか」
「いいんですか?」
「珍しいね、正道がそんなこというなんて」
「空気を読んだまでだ」
「……」
なぜ、二人とも黙る。
「いや……正道の成長がうれしくて……」
「先輩もやればできる子じゃないですか」
「……先にいくぞ」
さて、これから神社にいくとして、お賽銭はどうする?
少なくとも、五円はやめておくか。変な縁を結ばれたら困るしな。
「それを今考えているところだ、左近も考えてくれ」
「せ、先輩! 考えてなかったんですか!」
左近と俺と伊藤は青島中央公園で今後の対策を練っていた。
押水に宣戦布告したことを左近に報告すると、じゃあどうするのって話しになり、俺達は作戦会議を開くことになった。
作戦会議を始めたが、具体的な策が何も出てこない。
「あ~あ、先輩があそこまで啖呵を切るから期待していたのに、がっかりです」
「俺はただ押水にラブレターの件と桜井さんの事を確認しておきたかっただけだ。勝算があってのことじゃない」
「ううっ……私、考えていたんだけどな」
「考えていた? 伊藤さん、何か案があるの?」
左近の問いに、伊藤は慌てたように手を左右に振る。
「あ、すみません。そういうことじゃなくて。もし、彼を倒す方法があるのなら、リクエストがありまして……」
「具体的にはなんだい?」
伊藤はますます恐縮して、声が小さくなる。
「ええっと、そうですね……例えば、嫉妬かな?」
「嫉妬?」
「だって、彼の行動のせいで多くの人が嫉妬しましたよね? 彼にも嫉妬する気持ちを思い知ってほしいと思いまして」
伊藤の要望に、左近は同意するようにうなずく。
「なるほどね。それなら僕は全校生徒の前で、恥をかいてほしいかな。風紀委員を辞めさせられた恥辱をはらしたいから」
「いいですね。それなら私は……」
伊藤も左近も、押水への恨みつらみを並び立てる。気持ちは分かるが、今はそんなことをしている暇はない。二人の悪口合戦をたしなめる。
「おいおい、どんどん話がそれてないか? 俺達は今、押水を倒す方法を探しているだろ? 左近達が提案しているのは、願望じゃないか」
「いいじゃない、願望でも。それが押水君を倒す方法につながるかもしれないじゃない。正道はないの?」
そんなもの、あるに決まっているだろう。
「……女のことで痛い目にあってほしい」
「あるじゃないですか。どんどんいいましょうよ。私、メモをとるので」
押水を倒す方法はさっぱり案が出てこないのに、どんなひどい目にあってほしいかの要望はとめどなく出てくる。
いかん、俺もつい楽しくなってきた。
伊藤のメモしたノートはすぐに文字で一杯になる。
「ふう、やりきりましたね」
「伊藤、満足したらダメだろ。まだ、何も方法が見つかってないぞ」
「そ、そうでしたね」
テレたように笑う伊藤につい俺も苦笑してしまう。
「伊藤さん、ちょっとノート見せて」
「どうぞ」
伊藤からノートを受け取った左近は、書かれている内容をチェックし始めた。
ペンを手にとり、ノートに線を入れたり、丸をつけたり、色々と書き込む。
「左近、何をしているんだ?」
「使えそうなものがないか判断しているの。今は少しでもヒントになるようなものがほしいからね」
考えなしに出した要望が本当に使えるのだろうか? 左近はすべての項目をチェックし終えた後、ぼそっとつぶやいた。
「……いけるかも」
「本当か!」
「うん。準備が必要だけど、いいことを思いついたよ」
左近め、何か悪だくみを思いつきやがったな。
左近の口元がつり上がるときは、大抵ろくなことを考えていない。だが、今はそれが頼もしく思える。
「正道、伊藤さん。ちょっと、時間をくれる? 案がまとまったら、手伝ってほしいんだ」
「おう」
「任せてください!」
ここは左近に任せよう。俺達は左近を信じて待つのみだ。
二日後、左近から連絡を受けた俺と伊藤は青島中央公園に集まっていた。三人がそろったところで、左近が話を始める。
「それじゃあ、作戦会議を始めようか」
会議を始めようとしたとき、一人の少女が俺達を指さしてきた。
「ママー、あの人たち何してるの?」
「しっ! 見ちゃいけません!」
「……」
「……」
公園には、俺達のような高校生が他にはいないので、かなり目立っている。
伊藤は子供に指をさされ、それを注意する母親の言葉を聞いて、恥ずかしそうにうつむいている。
「いや、先輩も同類ですからね?」
「俺は別になんとも思ってないぞ」
「嘘です! 拳が震えているじゃないですか」
ああ、風紀委員室が懐かしい。早く戻りたい。
「ねえ、話を進めてもいい?」
「左近はこの状況について、何か思うことはないのか?」
何の恥じらいもない左近を見て、俺はつい尋ねてしまう。
「無いよ。それに時間がないし、早く終わらせよう。明日で決着をつける」
「橘先輩、思っていたんですけど、そんなにあせる必要があるんですか? もっと慎重にいくべきでは? 急いては事を仕損じるとも言いますし」
「実はね、伊藤さん、今の風紀委員長が正道を風紀委員から追放しようと動いているの。もし、正道まで風紀委員を辞められたら、押水君に手出しできなくなる」
「つ、追放って、本当に崖っぷちですよね、私達」
伊藤の言うとおりだな。このままだと、押水の都合のいい学園ができてしまう。なんとしても阻止しなければならない。
「僕達の目的は、二つ。一つは押水君から女の子達を引きはがすこと。もう一つは、事実確認だ。こっちは僕に任せてほしい。押水君から女の子を引きはがす件は正道と伊藤さんの力を貸してほしい」
「任せてください、橘先輩!」
「具体的には何をしたらいい」
左近が、俺達に紙を手渡す。その紙にそれぞれの役割が記載されていた。
「この案は、僕達の思い付きを組み合わせて作ったものだから、でたとこ勝負になるところが多い。一応、仕掛けはいくつかしておいたけど、必ず成功する保証はないし、失敗する可能性が高い。それでも、僕達はやり遂げなければならない」
俺も伊藤も左近の意見に同意するようにうなずく。
左近の案がダメなら、もうお手上げだ。失敗は許されない。それでも、やり遂げてみせる。
「正道、この写真、持っていて。高城先輩が正道を陥れようとしたときに役立つから。これで時間が稼げるはずだ」
左近から受け取った写真を見ると、一目で左近の思惑が分かった。これなら、風紀委員長とやりあえる。相変わらず、いい仕事してる。
高城先輩にも借りがあるからな。風紀委員を辞めさせられた左近と伊藤の仇をとらせてもらおう。
決意を新たにしていると、伊藤が手を俺達の前に差し出してきた。手の甲を上にして、俺達を見つめている。
「先輩、橘先輩。願掛けしませんか?」
「いいね。なんか青春っぽい」
「俺達がやろうとしていることは、人をはめようとしていることだがな」
俺と左近は伊藤の手の甲に自分達の手を重ねる。
「僭越ながら、私、伊藤ほのかが音頭を取らせていただきます。ファイト、と私が言いますので、先輩方は、いっ○つ! この一声、お願いします」
「それは不味いだろ。オーでいいだろ」
「そうですか? なら、それでいきますね」
チームプレイなんて俺らしくない。大抵のことは俺一人で厄介事を対応してきた。
今回の相手は、初めて出会うタイプの問題児で戸惑うことが多かった。
だが、今は違う。俺には左近と、頼もしい後輩の伊藤がいる。こんな切羽詰まったときに少し不謹慎だが、頬が緩んでしまう。
伊藤が大きく息を吸い、音頭を取る。
「では、いきますよ! ファイトーーーーー!」
「「「オォー」」」
掛け声と共に、俺達は手を真上に上げた。
不思議な気分だ。力がみなぎってくる。負ける気がしない。
押水一郎、勝負だ!
「あ、先輩。一応、神社に願掛けにいきませんか?」
「伊藤……なんで、お前はそう力が抜けるようなことをいうんだ」
さっきの音頭は何のためにしたと思ってるんだ。せっかく、結束力を高めたのに。
「だ、だって、神様にもお願いしたほうがいいと思って」
本当に大丈夫なのか? しまらないな。
まあ、少しは肩の力を抜いたほうがいいかもしれない。
「……いくか」
「いいんですか?」
「珍しいね、正道がそんなこというなんて」
「空気を読んだまでだ」
「……」
なぜ、二人とも黙る。
「いや……正道の成長がうれしくて……」
「先輩もやればできる子じゃないですか」
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