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第百五話
しおりを挟む「わからん…一体何が起こっているんだ…?」
情報屋オルグの情報通りに廃教会を訪れた俺を待っていたのは、3人の殺し屋だった。
俺を殺すために雇われた3人の殺し屋を返り討ちにした俺は、そのうちの一人から重大な情報を聞き出した。
『どういうことだ…?お前らの雇い主が帝国魔道士団…?』
『そうなんだ!!俺たちはあいつに雇われたんだ!!』
『嘘をつけ!!そんなはずはない!!』
『信じてくれっ!!俺は嘘は言ってないんだっ!』
驚いたことに、殺し屋は帝国魔道士団に雇われたと言い出したのだ。
そんなはずはないと俺は男にさらなる痛みを加えて(非常に心苦しかったが)問い詰めたのだが、しかしどうやら男は嘘を言っていなかったようだ。
『本当だな?本当の本当にお前は帝国魔道士団に雇われたんだな?』
『ああ…!!本当だ…!!嘘じゃねぇ!!だから殺さないでくれ!!』
俺は男をそのまま手刀で気絶させ、急いで廃教会を後にして貧民街の出口に向かって走った。
思考が絡まってまともに考えがまとまらない。
どういうことだ?
一体何が起きている?
俺は帝国魔道士団の入団試験でターゲットのジュースを追っていた。
そんな俺を罠に嵌めて殺そうとしたのが、また帝国魔道士団だった?
意味がわからない。
まさか事件は全て帝国魔道士団によって引き起こされたマッチポンプだったのか?
俺たちの実力を試すためにわざと殺し屋を雇ったとか?
いや…それならそんな回りくどいことなどせずに最初から彼らと俺たちで戦い、その実力を確認すればいい。
わざわざこんな回りくどいことをする意味は…?
「嫌な予感がする…急がないと…」
なんとなくだが、よくないことが起きている気がする。
貧民街を抜けた俺は、帝国ホテルを目指して、帝都の街を疾駆するのだった。
「7人…いや、8人いるな…」
それから二時間後。
今朝後にしたはずの帝国ホテルの312号室の前に俺は立っていた。
扉の前に立って、中の気配を探る。
部屋の中に確認できた気配は全部で八つ。
気配のうち、五つからは殺気が放たれていて、残り三つからは怯えるような気配が出ている。
「これは…」
どうやら嫌な予感が的中したようだ。
俺はそう思いながら恐る恐る扉に手をかける。
「アリウス…!!」
「アリウスくん…!」
中へ入って目に飛び込んできた光景に、俺は一瞬硬直する。
「やあ、アリウス・エラトール。遅かったね。君がビリだよ。賢い二人はもう先についている」
俺の姿を認めたディンがニヤリと笑った。
その足元には、ロープで体を縛られたシスティとヴィクトリアが転がっている。
「ディン…みなさんも…これはどういうことだ…!?」
俺は室内を見渡した。
壁を背にして室内に陣取っているのは、今朝の5人の帝国魔道士団の魔法使い。
ディン、ジーク、ファウマ、グリル、ネフィア。
そしてその5人に囲まれるようにして床に拘束された状態で転がっているのが、3人。
システィ、ヴィクトリア…そしてターゲットのジュースだ。
「うぅうう…」
ディンたちに渡された似顔絵とそっくりな幼子、ジュースは、恐怖ゆえか目尻に涙を溜めて今にも泣きそうになっている。
「ジュース…どうしてここに…?」
探せと言われたターゲットがどうしてここにいるのか。
システィとヴィクトリアが連れてきたのか?
だとしたらどうして二人は拘束されている?
俺の思考はますます混乱する。
「何が起きているのか、理解ができないと言った顔だね、アリウス」
俺がどうしていいかわからずに判断を迷っていると、ディンが話しかけてきた。
その片腕は、いつでも床に転がっている3人を仕留められるぞと言わんばかりに上がっていた。
帝国魔道士団の5人からは相変わらず殺気が放たれている。
俺が少しでも下手な動きを見せると、迷いなく四方から攻撃を喰いそうだ。
「さすがにこの状況だと君も様子を見ざるを得ないか…ふふ」
「…どういうことだ、ディン。なぜ二人を拘束している?」
「それを今から説明する。安心してくれ、アリウス・エラトール。もしかしたら僕たちが寝返ったとか思ってるかもしれないが、これも歴とした試験の一環だから」
ディンがニヤリと笑った。
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