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第1章 その婚約、本当に必要ですか?
第13話 腹黒令嬢と専属侍女
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「今日はとても楽しい時間でした。またお会いできる日を楽しみにしております」
そう言葉を残してエーリックは地に足がつかないような、どこかふわふわした様子で帰っていった。
こうしてウェルシェとエーリックの顔合わせは恙なく終わったのだが……
「あらあら、大丈夫かしら」
エーリックを見送っていたウェルシェは彼の様子にくすりと笑った。
そこには先程までの純真無垢な妖精の如き愛らしい面影は全くない。
エーリックの姿が完全に見えなくなると、ウェルシェは四阿に戻って座る。時を待たずして侍女のカミラがスッと音もなくお茶を用意した。
目でカミラに礼をしたウェルシェはお茶を一口含んで口を潤した。
とても息の合った主従である。
「ちょっと頼りなさそうだけど素直そうだし善良な方のようで安心したわ」
「さようでございますね」
豹変した主人の態度に驚く様子も見せずにカミラは相槌を打った。
「これなら結婚後は私が主導権を握れそうね」
「もう既に握っているではありませんか」
カミラはふぅ、とため息を吐いた。
「私はエーリック殿下が憐れでなりません」
「あら、エーリック様にとっては理想のお嫁さんを娶れるんだからWin-Winじゃない?」
幻想的な白銀の髪と神秘的な翠緑の瞳、透き通る白い肌にほっそりとした小柄な令嬢は触れれば消えてしまうのではないかと思われるほど幻想的な美姫。
エーリックの目にはウェルシェがさぞ儚く麗しい姫君の如く映っただろう。
「私みたいな完璧美少女が婚約者なんてエーリック様も果報者よね」
「そうですね、お嬢様はまさに穢れなき妖精の如き絶世の美少女――」
ふふんと笑い、そうだろそうだろと頷くウェルシェを眺めながらカミラは思う。
自分の主人は完全無欠――見た目だけなら……
「――中身はこんなんですが」
「こんなのとは何よッ!」
エーリックと談笑していた時はあんなにお淑やかだったのに今は見る影もない。まったく自分の主人は猫被りにかけては右に出る者はいないとカミラは感心する。
「私の見たところ殿下は清楚可憐な女性が好みのようです」
「だからぁ、私って完全に殿下のどストライクでしょ?」
「ええ、そうですね……」
胸を張って主張するウェルシェの姿は決してエーリックの好みではないとカミラは確信する。
「完全なバッタもんですけどね」
「酷ッ!」
自分の侍女から歯に衣着せぬ物言いをされて、ウェルシェはばんばんテーブルを叩く。しかし、一筋縄ではいかないデキる侍女カミラはまったく動じない。
「穢れの無い純白の皮が剥けて中から真っ黒黒介が飛び出してきたら、エーリック殿下は卒倒してしまいますよ」
「失礼ね!」
ウェルシェは不満そうに口を尖らせる。
そんな態度は年相応に可愛らしい。
「私の猫の皮は簡単に剥がれないわよ!」
「……そう言う問題ではないかと」
呆れながらも、内心ではズレたところもちょっと可愛いと思うカミラであった。
そう言葉を残してエーリックは地に足がつかないような、どこかふわふわした様子で帰っていった。
こうしてウェルシェとエーリックの顔合わせは恙なく終わったのだが……
「あらあら、大丈夫かしら」
エーリックを見送っていたウェルシェは彼の様子にくすりと笑った。
そこには先程までの純真無垢な妖精の如き愛らしい面影は全くない。
エーリックの姿が完全に見えなくなると、ウェルシェは四阿に戻って座る。時を待たずして侍女のカミラがスッと音もなくお茶を用意した。
目でカミラに礼をしたウェルシェはお茶を一口含んで口を潤した。
とても息の合った主従である。
「ちょっと頼りなさそうだけど素直そうだし善良な方のようで安心したわ」
「さようでございますね」
豹変した主人の態度に驚く様子も見せずにカミラは相槌を打った。
「これなら結婚後は私が主導権を握れそうね」
「もう既に握っているではありませんか」
カミラはふぅ、とため息を吐いた。
「私はエーリック殿下が憐れでなりません」
「あら、エーリック様にとっては理想のお嫁さんを娶れるんだからWin-Winじゃない?」
幻想的な白銀の髪と神秘的な翠緑の瞳、透き通る白い肌にほっそりとした小柄な令嬢は触れれば消えてしまうのではないかと思われるほど幻想的な美姫。
エーリックの目にはウェルシェがさぞ儚く麗しい姫君の如く映っただろう。
「私みたいな完璧美少女が婚約者なんてエーリック様も果報者よね」
「そうですね、お嬢様はまさに穢れなき妖精の如き絶世の美少女――」
ふふんと笑い、そうだろそうだろと頷くウェルシェを眺めながらカミラは思う。
自分の主人は完全無欠――見た目だけなら……
「――中身はこんなんですが」
「こんなのとは何よッ!」
エーリックと談笑していた時はあんなにお淑やかだったのに今は見る影もない。まったく自分の主人は猫被りにかけては右に出る者はいないとカミラは感心する。
「私の見たところ殿下は清楚可憐な女性が好みのようです」
「だからぁ、私って完全に殿下のどストライクでしょ?」
「ええ、そうですね……」
胸を張って主張するウェルシェの姿は決してエーリックの好みではないとカミラは確信する。
「完全なバッタもんですけどね」
「酷ッ!」
自分の侍女から歯に衣着せぬ物言いをされて、ウェルシェはばんばんテーブルを叩く。しかし、一筋縄ではいかないデキる侍女カミラはまったく動じない。
「穢れの無い純白の皮が剥けて中から真っ黒黒介が飛び出してきたら、エーリック殿下は卒倒してしまいますよ」
「失礼ね!」
ウェルシェは不満そうに口を尖らせる。
そんな態度は年相応に可愛らしい。
「私の猫の皮は簡単に剥がれないわよ!」
「……そう言う問題ではないかと」
呆れながらも、内心ではズレたところもちょっと可愛いと思うカミラであった。
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