あなたのお嫁さんになりたいです!~そのザマァ、本当に必要ですか?~

古芭白あきら

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第一部 その婚約、本当に必要ですか?

第14話 腹黒令嬢と専属侍女

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「いいですかお嬢様、白は何色にも染められます」

 何だかんだ言いながらカミラは可愛い主人が大好きである。

「ですが、逆に黒は何ものにも染まりません」

 だが、そんな気持ちをおくびにも出さない彼女も大概であった。

「何が言いたいのよ」
「白に変えようといくら頑張っても黒は黒のままなのですよ」

 何か生暖かく見守られるような目を向けられて、いよいよウェルシェはむぅっとむくれた。

「貴族の婚姻は綺麗事ではないわ」
「さようでございますね」

 カミラは無表情のままうんうん頷く。

「私の結婚にはグロラッハ領民の生活と幸せがかかっているのよ」
「重々承知しております」

 ウェルシェを腹黒だと思っているが、別に犯罪を好んでいるのではないとカミラは十分に理解していた。

「結婚してもエーリック様にボロは出さないし、領地も発展させてみせるわ。エーリック様も領民もみんなみんな幸せにしてみせるの」
「お嬢様には造作もない事かと」

 ウェルシェの腹黒はみなを幸福にしようとしているものだ。ただ、彼女は天邪鬼なだけで、その性根は領民をおもんばかる真っ直ぐなものである。

「その為だったらいくらだって黒くなってみせるわよ」
「ご立派な決意でございます」

 ウェルシェはまだ15歳にして貴族の自覚を持っており、カミラは尊敬すべき主人に仕えられている幸運に感謝していた。

「ですが、お嬢様……私はちゃんと見ていましたよ」
「な、なによ」

 だが、同時にカミラは可愛い主人だからこそ決して甘やかさない。

「殿下を手玉に取って楽しまれていましたよね?」
「そ、そんな事ないわよ?」
「私にはバッチリ見えておりましたよ」

 韜晦とうかいするウェルシェにはぁっと盛大なため息を吐き出しカミラは止めの一撃を放った。

「恥ずかしがる素振りで顔を隠しても、手の隙間から口の端が上がって笑っていたのが」

 自分の本性を知る侍女から胡乱げなジト目で見られたウェルシェの目は盛大に泳ぎまくったのだった……
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