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第7章 その裁定、本当に必要ですか?
第79話 ずっと第二王子のターン
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「エーリック、そなたの言い分を訊ねたい」
オルメリアの指名を受け、前に出たエーリックは居住まいを正した。
「……忌憚の無い発言をお許しいただけますでしょうか?」
「許します。存分に意見を述べなさい」
オルメリアは当然とばかり頷き、発言を促した。
「まず、ウェル……グロラッハ嬢との婚約についてですが――」
エーリックは言質を取るとオーウェンの世迷い言を論破しにかかった。
「兄上が指摘されたような、私が母エレオノーラに懇請した事実はございません。第一この婚約は王妃殿下からの薦めであるのは周知の事実です」
エーリックの言葉に国王、王妃だけではなく周囲の者達も頷く。
「それに、私はグロラッハ嬢とはお見合いの場で初めて顔を合わせたのです。兄上が糾弾された横恋慕などありようがありません」
「なるほど……」
オルメリアが相槌を打ってくれてエーリックは内心でホッと安堵のため息を吐いた。本来ならもっと婉曲に発言せねばならないからだ。
「次に王族である私の立場に逆らえずグロラッハ嬢が婚約を承諾したとの事ですが――」
だが、オーウェンが直接的に難詰してきた以上は、エーリックもそれに応じなければならないと判断したのである。だから、はっきりとオーウェンを批判した。
「それを言ってしまえば私は誰とも婚約できなくなってしまいます」
「その通りですね」
王妃の同意に周囲の者達も自然と首肯している。誰もがエーリックの発言の方を支持しているのは明白で、オーウェンはジリジリと焦り始めた。
「それにグロラッハ嬢は私との婚約を快諾してくれました」
「そ、それはグロラッハ嬢が貴様に逆らえず――」
「黙りなさい。今はエーリックが陳述する場です」
「ぐっ!」
エーリックに食ってかかろうとしたがオルメリアに窘められ、オーウェンは口を噤んで拳を握り締めた。
「続けなさい」
「感謝いたします」
実の息子の暴走をオルメリアが止めてくれたのでエーリックは心から謝意を示した。
「婚約後、私はグロラッハ嬢との良好な関係を築いて参りました。ところが、学園に入学してから貴族子息達が彼女に付き纏い始めたのです……」
エーリックは学園でウェルシェが悩まされている男性被害について詳細を説明した。
「子弟達は公衆の面前でさえ執拗に迫ってきたのですか?」
「はい」
一般的に複数の男に言い寄られるのは、貴族社会において令嬢側に問題ありと評価される傾向がある。エーリックの発言は一歩間違えればウェルシェの評判を落とすものだ。
「そこで、私とグロラッハ嬢は対策を講じました」
だから、エーリックはウェルシェに非が無い事を上手く説明しなければならない。
「どのような内容か伺っても?」
幸い王妃オルメリアはエーリックの肩を持ってくれているようだった。
オルメリアの指名を受け、前に出たエーリックは居住まいを正した。
「……忌憚の無い発言をお許しいただけますでしょうか?」
「許します。存分に意見を述べなさい」
オルメリアは当然とばかり頷き、発言を促した。
「まず、ウェル……グロラッハ嬢との婚約についてですが――」
エーリックは言質を取るとオーウェンの世迷い言を論破しにかかった。
「兄上が指摘されたような、私が母エレオノーラに懇請した事実はございません。第一この婚約は王妃殿下からの薦めであるのは周知の事実です」
エーリックの言葉に国王、王妃だけではなく周囲の者達も頷く。
「それに、私はグロラッハ嬢とはお見合いの場で初めて顔を合わせたのです。兄上が糾弾された横恋慕などありようがありません」
「なるほど……」
オルメリアが相槌を打ってくれてエーリックは内心でホッと安堵のため息を吐いた。本来ならもっと婉曲に発言せねばならないからだ。
「次に王族である私の立場に逆らえずグロラッハ嬢が婚約を承諾したとの事ですが――」
だが、オーウェンが直接的に難詰してきた以上は、エーリックもそれに応じなければならないと判断したのである。だから、はっきりとオーウェンを批判した。
「それを言ってしまえば私は誰とも婚約できなくなってしまいます」
「その通りですね」
王妃の同意に周囲の者達も自然と首肯している。誰もがエーリックの発言の方を支持しているのは明白で、オーウェンはジリジリと焦り始めた。
「それにグロラッハ嬢は私との婚約を快諾してくれました」
「そ、それはグロラッハ嬢が貴様に逆らえず――」
「黙りなさい。今はエーリックが陳述する場です」
「ぐっ!」
エーリックに食ってかかろうとしたがオルメリアに窘められ、オーウェンは口を噤んで拳を握り締めた。
「続けなさい」
「感謝いたします」
実の息子の暴走をオルメリアが止めてくれたのでエーリックは心から謝意を示した。
「婚約後、私はグロラッハ嬢との良好な関係を築いて参りました。ところが、学園に入学してから貴族子息達が彼女に付き纏い始めたのです……」
エーリックは学園でウェルシェが悩まされている男性被害について詳細を説明した。
「子弟達は公衆の面前でさえ執拗に迫ってきたのですか?」
「はい」
一般的に複数の男に言い寄られるのは、貴族社会において令嬢側に問題ありと評価される傾向がある。エーリックの発言は一歩間違えればウェルシェの評判を落とすものだ。
「そこで、私とグロラッハ嬢は対策を講じました」
だから、エーリックはウェルシェに非が無い事を上手く説明しなければならない。
「どのような内容か伺っても?」
幸い王妃オルメリアはエーリックの肩を持ってくれているようだった。
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