華燭の城

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「神儀が終わったばかりだというのに、これはまた賑やかな事だな。
 シュリ、素晴らしい良い舞だったぞ」

 そう声を掛けながら満面の笑みで部屋に入って来たのは、シュリの実父であり現国王だった。
 横には母である皇后と、弟皇子のジーナもいる。


「父上、ありがとうございます」

 シュリが横たえた体を起こしながら頭を下げると、
「兄様! 本当に美しかった!」
 ジーナが飛び付くように足元に駆け寄り、抱き付き、ニコニコと微笑んだ。

「そうか、それはよかった。
 今日は調子が良さそうだね、ジーナ。
 お前が早く元気になるようにと、その祈りも込めて舞ったんだよ」

「うん、大丈夫! こんな病気すぐに治るよ!」

 シュリが足にすがる弟の頭を優しく撫でると、まだ幼い年の離れた弟は、嬉しそうに目を細め兄の顔を見上げた。



「あの……申し訳ございませんが……」
 
 その和やかな場に言い難そうに入ってきたのは、近衛の兵だった。

「どうした?」

 現王がその近衛の様子にわずかな異変を感じ取る。 

「はい……それが……。
 シュリ様と……皇子と国王にどうしても謁見したいと言う者が……」

「今、神儀が終わったばかりだ。
 各国の来賓の方々にはしばらく後に順にお目にかかる。
 そうお伝えして、少しの間、待っていただくように……」

「あいにくだが、ワシは待たされるのが好きではない」

 現王の声を遮り、低い声が響いた。


 入口横に立っていた近衛が、その声の主を圧し留めようと入口を塞ぐ。
 
 だが、その制止も聞かず、それどころか手で振り払うようにして脇に押し退け、ズカズカと入って来る大きな男の影は、現王よりも年上に見える。

 その顔は50代だろうか……。
 年相応にシワは刻まれているものの色は浅黒く、一見しただけでもわかる程の広い肩幅に太い腕、ずっしりと重い筋肉を持った強健そのものと言えるその男は、後ろに銃を持った兵を数人従えていた。

 その姿に和やかだった部屋の空気が一変する。


「お客人、申し訳ないが我が国は戦さを放棄した中立の国。
 銃を……しかもこの神聖な神儀の日に、ここへ持ち込むなど許可した覚えは無い。
 お話ならば相応の場所で伺いましょう。
 時と場をわきまえ、今すぐここから退去願いたい」

 いつになく厳しい口調で現王がいましめた。




 ――ザッ……!
 
 途端に銃兵達が動いた。

 男の前に歩み出ると、無言のまま鋭い眼つきで持っていた銃を一斉に構え上げる。
 それは統制のとれた軍隊の動き。
 合図など無い。

 いや、初めから決められていたのかもしれない。
 銃での威嚇、発砲も構わないと……。

 そう思わせる程、何の迷いも無く、一切表情を変えることも無く、一国の王家にどこの国の者かも知れぬ一兵卒が、躊躇なく銃を向けたのだ。


 いきなりの出来事だった。
 一瞬で全ての銃口がシュリ達に向っていた。
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