華燭の城

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 披露目の宴は、身分が高く、国の中でも重要と位置付けされる者、いわば国への貢献度、有益性の高い者から順に招かれ、幾日にもわたって執り行われるという。
 
 初日の今日、この城へ呼ばれた者達も近隣諸国の要人をはじめ、国内の役人でも最高位といわれる重役達ばかりで、その家族までもが招待されていた。


「始まるぞ。
 今日、皇帝閣下がお見えにならないのは残念だが、わかっているだろうな? シュリ」
 正面扉の中央に立ち、入場を待つガルシアは、自分の後ろにいるシュリにそう呟いた。


 そして、その扉は開かれた。


 華やかな管弦の演奏が一段と大きくなり、自国の高官は深々と頭を垂れ、将校・士官達は最礼を尽くし、他国からの招待客は割れんばかりの拍手を送った。

 漆黒の装いに銀の飾り、左肩から純白のストールを身に纏い、腰に王位継承の証とされる奉剣を携えたシュリが場内へ足を踏み入れると、一同からはその美しさに、ため息と感嘆の声が上がる。

「あれがシュリ様……」
「なんと美しい皇子でしょう……!」

 招かれた要人の妻達は、室内に充満する化粧と香水の匂いの中で、うっとりと甘い視線を送った。
 シュリはそんな視線を気にも留めず、約束通り、その華やかな祝宴の場で主役としての役目を立派に果たしていた。
 ガルシアの一歩後ろに控え、次々と紹介されていく高位の役人やその家族に、穏やかな笑みで応えていく。
 その立ち居振る舞いは凛として非の打ち所がなく、王族として、神の子として生まれ持った真の気品があった。

 当初は、シュリが要らぬ事を話し出すのではないか……と、内心穏やかでなかったガルシアも、宴が進むにつれ、そのシュリの態度と姿に安堵し、上機嫌になっていた。
 祝いにと、皆が差し出す各国の豪華で珍しい品々もガルシアを大いに喜ばせた。

 だが、多くの人間が集まれば、その全ての者の意志が一つ……とは言い難く、中には何かはかりごとあってなのか、シュリを試そうとしているのか、あえて外国の言葉を用いて話し掛けたり、異国の文化や歴史、果てには数学や物理学、天文にまで、皇子のご意見を伺いたい……と話を持ち掛ける者さえもいた。

 そんな時、ガルシアはそれを止めもせず、ニヤリと笑って冷たい目でシュリを見る。
 シュリがどれほどの才を持っているのか、どう答えを返すのか……。
 それを試しているようであり、またそれに対するシュリの返答にも十二分に満足していた。


 人々が美味い酒と料理、奏で続けられる音楽と美しき皇子の姿に酔い、宴も最高潮に達した頃だった。

「おい、道を開けろ!」
 人波をかき分けるようにして、一人の高官がガルシアの前へと歩み出た。

 それは葬儀の日、長老に続いて声をあげた、あの赤毛の男だった。
 隣には、年こそ違うが顔立ちのよく似た若い男を連れている。

「陛下! シュリ様! この度はお喜び申し上げます!」

 大きく腕を広げた後、過剰にも見える振る舞いで深々と腰を折りながら、胸に手を当て挨拶を述べた後、男はシュリの方へと身を向けた。
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