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彼女たちも、同じ境遇
しおりを挟む「エド、あの女よ!あの女がギルをたぶらかして、わたしに酷いこと言ったのよ!」
涙目のアリアがわたしを指差して叫ぶ。安っぽい涙だ、と冷めた気持ちで彼女を見てしまう。
エドワードは無表情のままで、ギル王子も少し戸惑っているのを感じる。視界の端で、ギル王子が拳を握り締めたのが見えた。その拳の上からそっと自分の手のひらを重ねて、握り締める。
ギル王子がびっくりした目をわたしに向けた後、少し笑ってから視線を二人へと向ける。
「父上、玉座を明け渡しください。この国は、あなたに任せられません」
「……」
できるだけ静かな声で要求するギル王子。
でも、エドワードは何も言わない。その様子にアリアは余計に熱くなって苛立っているようだった。エドワードから離れたアリアが立ち上がる。
「処刑よ!処刑なさい!叛逆しようとするなんて…っ!」
アリアが甲高い声で叫べば数人の兵士たちがわたしとギル王子を囲う。一人の兵士が剣を振りかぶった――その時、だった。
「――お待ちください」
凛とした声が響く。兵士たちの隙間から見えたのは…
「リリス様…」
「ごきげんよう、王妃様」
リリスはにっこりと、穏やかな笑みを浮かべて笑っている。リリスの後ろから、何人かの令嬢がぞろぞろと入ってきた。
あの場にいた令嬢たちと、他にも知らない令嬢たちおそよ二十人ほど近い人数だ。そしてその後ろからは帝国とギル王子に付いた兵士たちがいる。
「王子と皇女を処刑するならば、わたくしたちを殺してからどうぞ」
リリスがまた一歩前に出る。兵士たちは動揺しているようで、リリスがこちらに歩み寄って来るたびに後ずさっている。
「な、何よ……その女を殺しなさい!」
「リリス様を殺すならわたくし達も」
一人、また一人一歩前に出る。
気付かなかったが令嬢だけではなく、平民も紛れているようだった。
兵士たちが固まっている。
(この人たち、ここにいる兵士や貴族の奥さんなんだ)
兵士たちがお互い気まずそうな顔をして見合っている。ニコルに至っては陰に隠れて青い顔をしているのが見えた。
「何をしているの…?はやく、はやく殺しなさい!」
アリアの叫びに皆動かない。手にしていた剣は鞘にしまい、それごと地面へと落としていく。
降伏の意、なんだろう。
「どうしてよ……」
アリアの呟きだけが、玉座に響いていた。
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