巡りくる季節の途中で

 小さい頃に出会ったあの子は、あたしのヒーローだった。

『きみ、つよいね。リクは、よわい子だから』

 春の満開の桜も、夏の蝉時雨の暑さも、秋の木漏れ日の落ち葉も、冬の積雪の冷たさも、全部ぜんぶ通り過ぎても、もう、あの子に会えることは、なかった。

 巡りくる季節の途中、また会えたと思ったのに、あたしのことは覚えていなかった。
 相変わらず人気者のヒーローは、やっぱり時々、寂しそうな目をしていた。
 本当は──

『ぼくは、つよくなんてない』

 小さい頃から体が弱くて、心まで弱くなってしまった梨紅と、いつもみんなの中心にいる憧れの存在、一葉。
 十年後に再び再会した二人は、お互いの弱さと強さを認め合っていく……

表紙:自作
24h.ポイント 56pt
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