召喚聖女が十歳だったので、古株の男聖女はまだ陛下の閨に呼ばれるようです

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
14 / 30

内乱かよ!?


俺の言葉に第二王子は意外そうに首を傾けた。そして、尋ねる。

「パウル陛下から国の情勢をお聞きになっていないのですか、セツ様?」

俺はウルスラに視線を向けると、代わりに返事をしてくれた。

「セツ様は三十歳になるまで、陛下により情報を規制されていました。その為、今のセツ様は世の中の情勢を、全くご存じないのです」

「そうだったのですね」

俺はちょっと可哀想な男を演じることにした。ハニートラップってやつだ。いや、三十歳男がハニートラップとか正気か・・俺。

「・・恥ずかしいのですが、二十代の私は陛下の鳥籠で、惰性のままに生きてきました。聖女という名の男妾・・己の事をそう思っていました」

俺が俯きがちにそう呟くと、ブリギッタ殿下は慌てて口を開く。

「セツ様、貴方は聖女です!男妾などと己を卑下するものではありません。セツ様をこの様に追い詰めるとは、陛下には失望しました!」

おう!?

第二王子が思った以上に、俺の適当な話に食い付いてきた。まずい、陛下をフォローしなくては。俺に結婚を申し込んでくれた唯一の人だしな。

「ブリギッタ殿下、それは誤解です。陛下は私を追い詰める様な事はなさっていません。私は聖女として召喚されましたが、異世界に馴染めず・・心を病んでしまいました。私の弱い心を見抜いた陛下は、己の鳥籠に囲い外部の喧騒から守ってくださったのです」

「セツ様」

「ですが、私も三十歳です。陛下が情報の規制を解いたことからも、私に鳥籠から飛び立てと促しているのだと思います。私は陛下の男妾ではなく・・陛下を支える親友になりたいと思っております。ブリギッタ殿下、どうか私に国の情勢を教えて下さい」

俺はブリギッタ殿下に対して頭を下げた。ただし、聖女としての威厳を保つ為にすぐに顔を上げる。

ブリギッタ殿下と視線が絡み合う。やがて、殿下はゆっくりと言葉を紡いだ。

「承知しました、聖女様。セツ様の質問にはできうる限りお答え致します。ウルスラ、お前もセツ様の問には誠実に対応するように」

「承知しました、ブリギッタ殿下」

ウルスラ・・面倒だと表情に現れているぞ。それに比べて、ブリギッタ殿下の優しい微笑み。さて、情報収集だ。

「それでは、ブリギッタ殿下。エクストランド王国がどの国と対立しているのかを教えて頂けますか?」

俺の言葉に第二王子がウルスラに視線を向ける。ウルスラは黙って立ち上がると、執務机に向かった。そして、卓上の用紙を手にすると戻ってくる。

「これは、エクストランド王国の地図ですね?」

地図を手渡された俺はそれを見つめる。ブリギッタ殿下は地図を指差しながら、説明を始めた。

「この地に、アイナ・ハロンステーン公の領地があります。公爵が我が国より独立してハロンステーン公国を樹立すると宣言しました。そして、エクストランド王国に宣戦布告を行ったのです」

「え、それって・・内乱ですか?」
「そうなります、聖女様」

あのお馬鹿なパウル陛下は、内乱が起こるような内政をおこなっているの?

◆◆◆◆◆

あなたにおすすめの小説

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? 騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。

クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~

槿 資紀
BL
イェント公爵令息のリエル・シャイデンは、生まれたときから虚弱体質を抱えていた。 公爵家の当主を継ぐ日まで生きていられるか分からないと、どの医師も口を揃えて言うほどだった。 そのため、リエルの代わりに当主を継ぐべく、分家筋から養子をとることになった。そうしてリエルの前に表れたのがアウレールだった。 アウレールはリエルに献身的に寄り添い、懸命の看病にあたった。 その甲斐あって、リエルは奇跡の回復を果たした。 そして、リエルは、誰よりも自分の生存を諦めなかった義兄の虜になった。 義兄は容姿も能力も完全無欠で、公爵家の次期当主として文句のつけようがない逸材だった。 そんな義兄に憧れ、その後を追って、難関の王立学院に合格を果たしたリエルだったが、入学直前のある日、現公爵の父に「跡継ぎをアウレールからお前に戻す」と告げられ――――。 完璧な義兄×虚弱受け すれ違いラブロマンス

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。