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婚約破棄されたパール様

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ウルスラは俺と第二王子のやり取りを見ても、肩を竦めるだけで口出しをするつもりはないらしい。

「ブリギッタ殿下・・その、あの?」
「はい、セツ様」

ブリギッタ殿下は挨拶にしてはちょっぴり熱いキスをした後、俺の声に応じて顔を上げた。

「ブリギッタ殿下、私の質問に嘘偽りなくお答えいただけますか?」

「聖女様に嘘はつきません」

「では、パール様の死の経緯を詳しく教えて頂けますか?パウル陛下は私を伴侶とする為に、パール様との婚約を破棄したと聞きました。それは確かな事でしょうか?」

ブリギッタ殿下は俺の手を優しく握った後に手を放すと、数歩下がり再び膝をついた。そして、口を開く。

「聖女召喚に応じて下さったセツ様を、陛下は生涯の伴侶にと望まれました。ですが、ハロンステーン公爵の孫娘であるパール嬢は、真っ向から反対したのです。聖女が男性である特殊性を指摘し、セツ様を側室にするようにと望みました。そして、己をパウル陛下の正妃にするように迫ったのです」

うーん。パール様の意見は、正当なものだと思うけどな。聖女が男では子供は生めない。ならば、側室という名の男妾として静かに過ごすのがよいのではないのか?そして、婚約者のパール様が正妃となり、陛下と仲良く子作りをして・・家族を持ち・・。

俺は思わず唇を噛み締めていた。なんだか、気分がもやもやする。

「セツ様?」

「ブリギッタ殿下・・私にはパール様の意見に正当性を感じます。それに、婚約破棄をするなど、陛下のやり方はあまりに強引です。もしかして、別の思惑があったのではありませんか?」

「別の思惑とは?」

「パール様は公爵の孫娘。傀儡の王を完全に脱するためには、彼女は邪魔な存在ですよね?だから、彼女と婚約破棄したかった。だけど、陛下が聖女の存在を持ち出しても・・パール様は折れなかった。私の頬を白いバラで叩いたあの方は、意志が強く純情な方だったに違いないです」

ブリギッタ殿下が俺の言葉に苦い表情を浮かべた。

「意志が強く純情・・時にはその性質が人を愚かにするのでしょう。パール嬢は母親と共謀して、聖女様を暗殺しようとした。そして、処刑されたのです」

俺は白バラを手に持った少女を思い出していた。記憶の片隅にあったパール嬢の姿が、鮮やかによみがえる。

「でも、私は危険な目にあった事はないですよ?それなのに暗殺容疑なのですか、殿下?」

「それは・・」
「ブリギッタ殿下、答えて下さい」

第二王子が言葉を濁したので、俺は突っ込んで聞いてみる。だが、答えは別の方向から返ってきた。返事をしたのはウルスラだった。

「セツ様の毒味役が三人亡くなっています。その事からもお分かりですね?貴方の毒殺を目論んだ人間がいたのです。そして、その犯人はパール様と彼女の母君でした」

俺は驚いてウルスラを見た。


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