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チュートリアル(入学前)
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前列にジョナスが加わり、ウィードも参加したがりましたが、彼の活かし方は後列で遊撃の方が輝きます。ゴーシュはベルンハルトを背負い、侍祭様の隣で待機している。リズもファイアスの後ろに立ち、兄の援護をしています。あそこは強力ですね……
ファイアス ソードナイト HP:30 MP:10 A:25 D:25
志願してくるような腕に自信のある自警団の方達で、平均ステータスが18。騎士団で20の中で、ピカイチの能力値を誇っています。
その後ろから、兄に迫るステータスのリズが援護をしているので当然でしょう。流石は兄妹、お互いの息ピッタリで……だからこそ他と差が付き、突出しそうになる。
重装備の壁役で敵を足止め攻撃を引きつけ、攻撃に専念する攻撃役で撃破、傷付いた壁を回復役が回復。
シミュレーションRPGに限らず、色々なゲームの基本的役割分担です。
ヘレスティアで例えるなら、タンクがファイアス、アタッカーがウィード、ヒーラーがヘレスティアですね。今は私と侍祭様がヒーラーです。マリアルイゼは本当は、これでもかって位アタッカーなんですが、この人数を侍祭様一人で捌くのは無理があります。
ゲームみたいに都合良く役割分担を担えるだけのバランスの良い編成は、実際に緊急出動する場合、絵に描いた餅ですね……
平和の続いたレースアリア大陸のリーンガルド王国ですから、こんな大規模な闘いはマリアルイゼの知っている記憶にはありません。対魔物用の対策が行き渡っていなくても当たり前の事です。
そして、ある程度の治安維持で実戦を経験しているベテランがいたとしても……そんな強者から呪いの餌食になっていく……。
このまま進めば、次の生贄はファイアスかリズか……最初はファイアスが呪いにでもなれば、なんてゲーム脳でお気楽に考えていた私の能天気さこそ、呪われるべきでした。
父が倒れ、兄まで倒れたら……心優しいリズがどんな思いをして、またどんな無茶をするか……
妹が倒れたら、妹思いなファイアスがどんな思いをするか……
自分の身に置き換えられて、やっと気付けた。人を呪わば穴二つ……身にしみて恐ろしい言葉です。
特に私は悪役令嬢なんだから、人を呪っても自滅しかない可能性がある……策士を気取って、策に溺れる運命の元に生まれたと言っても過言では無い。
だったら運命に逆らうには、どうすればいいのか?簡単だ、『清く、正しく』生きよう……聖女の如く。例え、この身は女凶神であろうとも……慎ましく生きれば『悪役令嬢』の運命なんて関係ない。
だから目立たず、日陰者となり、縁の下の力持ちとなり、この戦線を支えよう。ファイアスの好感度はどうするのかって?好感度や信頼は、上げる物ではありません。築く物です。少しづつ積み重なり、それが礎となり大輪の花を咲かせるのです……
大体、喪女の私とコミュ障のワタクシに、異性を落とせとかが不可能なのです。ゲームなら数々のイケメンを落として来ましたが、リアルとなると無理ゲーですわ!
ウィード位の男の子だったら弟感覚で上手くいきましたが、ファイアス君は男ですからね。
リズに上手く取り保って貰える様にお願いしましょう……私の運命、人任せ……
「よし!行けるぞ、リズ!このまま突っ切る!」
「はい、背中は任せて下さい!お兄様!」
「出過ぎていますわっ!自重なさいっ!」
……他を置き去りにする勢いで進もうとする兄妹に、無意識で叫んでいた。私は何を言っている?慎ましく生きるんじゃなかったのか?
「孤軍奮闘で切り開いても、敵の数はまだ多く、開いたものの再び塞がっては何の意味もありません!逸る気持ちを堪え、今は我慢の時でしょう!」
それでも止まらない……戦場の喧騒にあって、ワタクシの声は良く響き渡る。戦場の渦中にあって、私の頭の中は冷静に現状を見通せている。
離れた別動隊もまだ、厳しい状況だが持ち堪えている。こっちが圧力を掛ける事で、あっちの包囲網が薄れている。計らずも今は、挟撃している形だ。
進むよりも、確実に敵を倒していった方が、どちらの生存率も高まる。
周囲の被害を気にしながら私が魔法で撃破するよりも、数のプレッシャーを与えた方が、より効率的に、より長時間、敵の目をこちらに引き付けていられる。
勇者達の無双は此方の進軍を速めるが、急がば回れ。『戦果を上げる』よりも『被害を抑える』方が優先だ。合流したら終わりでは無いのだから。
「右翼から増援が来ます!後列は援護を右寄りに!左翼、進軍!敵増援を逆に包囲してやりなさい!」
「なっ!?勝手に指示を出すな!どうしてそんな事が分かる!」
「お兄様、マリーゼ様にはイーグルアイがあります!従って下さい!」
「若、お下がりを!突出しては敵の的です!それに間違いありません、こちらに向かってくる一群が見えまする!」
ファイアスの抗議の声は、リズとお目付役のジェイク様が留めてくれた。確かに、指揮系統が二つあっては混乱する……頭では分かっていても、意思が止まらない。『もう誰にも倒れて欲しくない』から……
「ファイアス様……今は指揮を忘れ、唯一振りの剣となりなさい!貴方なら、友軍の場所まで切り開けます。ワタクシなら、その場所へ導けます。思うところはあるでしょうが、全員無事に帰還する為に今は忘れて下さい!」
「しかし!」
「貴官も将ならっ!気に食わない相手の一人や二人、利用して御覧なさい!ワタクシも、この危機を脱するべく貴方を利用します。唯の利害の一致、お互いに己の目的遂行の為、いがみ合ってる時ではありません!」
どこがどう聞いたら『清く、正しく』なのか……『利用出来る者は利用しろ』、絶対に聖女の言葉じゃない。そうですね……全く以てその通りですね!
私の運命人任せ……そんな事出来る訳ない!公式任せにしてたら座して死ぬだけです!公式に祈っても、祈る対象は敵だ!私は凶神なんだから……清くも、正しくもない。
こうして無駄になるかもしれないけれど、行き当たりばったりで足掻いているだけ……何が悪い!?ベル叔父様が助けられました。結果には大満足です!
今だってそうだ!ファイアス攻略の正解ルートは『危なっかしくて、放っておけない、守って上げたくなる様な女の子』でいるのが正解だ。残念ながらワタクシは、黙って大人しく守られているだけのお姫様じゃない!
「クソッ!……分かった、皆の命が掛かっている……だが、忘れるな!俺はまだ、アンタを信用している訳じゃない!」
「分かっておりますわ、結果で応えるのみです!」
そうだ!ワタクシはマリアルイゼ!ヘレスティアじゃない!目的の為には手段を選ばない女だ!清く正しくなんて柄じゃない!
大体、決意して出来る様だったら『健康の為に早寝・早起き。将来の為に勉強して仕事して、無駄な散財をせず貯金。偶の休日には運動で汗を流す』みたいな聖人君子の生活だって出来るはずです。絶対無理ですね!それが出来るなら『喪女』で『ゲーマー』なんて前世送ってませんから!
正解だと分かっていても選べない人間がいるんです!
でもそんな人間が役に立てる場所が今ここにある!こんな状況、何度も仮想している、有効な手段は山の様に思い付く、盤面だって見えている!足りなかったのはユニットを動かす権利だけでした。今、それを手に入れた……後は、ステージクリアするだけです!
ゲーム感覚が抜けない訳じゃない、一番得意な事で想定し、結果を出すんだ!私は、私だ!『喪女』で、『ゲーマー』で……
「さぁ……それでは、ここから『悪役令嬢』の本領発揮と参りますわ!」
……イヤイヤ、悪役令嬢が本領発揮したら破滅しかないんじゃない?ともセルフでツッコんでしまいますが……修羅場からの逆転劇に、悪役の存在は必要不可欠です!真っ赤な正義も此方にいます!
状況は劣悪、被害は甚大、戦況は終わりが見えない……それがどうした!どんと来いです!難易度が上がる程、燃える人種がいるんです!ここからはゲーマーらしくで行こう!
ファイアス ソードナイト HP:30 MP:10 A:25 D:25
志願してくるような腕に自信のある自警団の方達で、平均ステータスが18。騎士団で20の中で、ピカイチの能力値を誇っています。
その後ろから、兄に迫るステータスのリズが援護をしているので当然でしょう。流石は兄妹、お互いの息ピッタリで……だからこそ他と差が付き、突出しそうになる。
重装備の壁役で敵を足止め攻撃を引きつけ、攻撃に専念する攻撃役で撃破、傷付いた壁を回復役が回復。
シミュレーションRPGに限らず、色々なゲームの基本的役割分担です。
ヘレスティアで例えるなら、タンクがファイアス、アタッカーがウィード、ヒーラーがヘレスティアですね。今は私と侍祭様がヒーラーです。マリアルイゼは本当は、これでもかって位アタッカーなんですが、この人数を侍祭様一人で捌くのは無理があります。
ゲームみたいに都合良く役割分担を担えるだけのバランスの良い編成は、実際に緊急出動する場合、絵に描いた餅ですね……
平和の続いたレースアリア大陸のリーンガルド王国ですから、こんな大規模な闘いはマリアルイゼの知っている記憶にはありません。対魔物用の対策が行き渡っていなくても当たり前の事です。
そして、ある程度の治安維持で実戦を経験しているベテランがいたとしても……そんな強者から呪いの餌食になっていく……。
このまま進めば、次の生贄はファイアスかリズか……最初はファイアスが呪いにでもなれば、なんてゲーム脳でお気楽に考えていた私の能天気さこそ、呪われるべきでした。
父が倒れ、兄まで倒れたら……心優しいリズがどんな思いをして、またどんな無茶をするか……
妹が倒れたら、妹思いなファイアスがどんな思いをするか……
自分の身に置き換えられて、やっと気付けた。人を呪わば穴二つ……身にしみて恐ろしい言葉です。
特に私は悪役令嬢なんだから、人を呪っても自滅しかない可能性がある……策士を気取って、策に溺れる運命の元に生まれたと言っても過言では無い。
だったら運命に逆らうには、どうすればいいのか?簡単だ、『清く、正しく』生きよう……聖女の如く。例え、この身は女凶神であろうとも……慎ましく生きれば『悪役令嬢』の運命なんて関係ない。
だから目立たず、日陰者となり、縁の下の力持ちとなり、この戦線を支えよう。ファイアスの好感度はどうするのかって?好感度や信頼は、上げる物ではありません。築く物です。少しづつ積み重なり、それが礎となり大輪の花を咲かせるのです……
大体、喪女の私とコミュ障のワタクシに、異性を落とせとかが不可能なのです。ゲームなら数々のイケメンを落として来ましたが、リアルとなると無理ゲーですわ!
ウィード位の男の子だったら弟感覚で上手くいきましたが、ファイアス君は男ですからね。
リズに上手く取り保って貰える様にお願いしましょう……私の運命、人任せ……
「よし!行けるぞ、リズ!このまま突っ切る!」
「はい、背中は任せて下さい!お兄様!」
「出過ぎていますわっ!自重なさいっ!」
……他を置き去りにする勢いで進もうとする兄妹に、無意識で叫んでいた。私は何を言っている?慎ましく生きるんじゃなかったのか?
「孤軍奮闘で切り開いても、敵の数はまだ多く、開いたものの再び塞がっては何の意味もありません!逸る気持ちを堪え、今は我慢の時でしょう!」
それでも止まらない……戦場の喧騒にあって、ワタクシの声は良く響き渡る。戦場の渦中にあって、私の頭の中は冷静に現状を見通せている。
離れた別動隊もまだ、厳しい状況だが持ち堪えている。こっちが圧力を掛ける事で、あっちの包囲網が薄れている。計らずも今は、挟撃している形だ。
進むよりも、確実に敵を倒していった方が、どちらの生存率も高まる。
周囲の被害を気にしながら私が魔法で撃破するよりも、数のプレッシャーを与えた方が、より効率的に、より長時間、敵の目をこちらに引き付けていられる。
勇者達の無双は此方の進軍を速めるが、急がば回れ。『戦果を上げる』よりも『被害を抑える』方が優先だ。合流したら終わりでは無いのだから。
「右翼から増援が来ます!後列は援護を右寄りに!左翼、進軍!敵増援を逆に包囲してやりなさい!」
「なっ!?勝手に指示を出すな!どうしてそんな事が分かる!」
「お兄様、マリーゼ様にはイーグルアイがあります!従って下さい!」
「若、お下がりを!突出しては敵の的です!それに間違いありません、こちらに向かってくる一群が見えまする!」
ファイアスの抗議の声は、リズとお目付役のジェイク様が留めてくれた。確かに、指揮系統が二つあっては混乱する……頭では分かっていても、意思が止まらない。『もう誰にも倒れて欲しくない』から……
「ファイアス様……今は指揮を忘れ、唯一振りの剣となりなさい!貴方なら、友軍の場所まで切り開けます。ワタクシなら、その場所へ導けます。思うところはあるでしょうが、全員無事に帰還する為に今は忘れて下さい!」
「しかし!」
「貴官も将ならっ!気に食わない相手の一人や二人、利用して御覧なさい!ワタクシも、この危機を脱するべく貴方を利用します。唯の利害の一致、お互いに己の目的遂行の為、いがみ合ってる時ではありません!」
どこがどう聞いたら『清く、正しく』なのか……『利用出来る者は利用しろ』、絶対に聖女の言葉じゃない。そうですね……全く以てその通りですね!
私の運命人任せ……そんな事出来る訳ない!公式任せにしてたら座して死ぬだけです!公式に祈っても、祈る対象は敵だ!私は凶神なんだから……清くも、正しくもない。
こうして無駄になるかもしれないけれど、行き当たりばったりで足掻いているだけ……何が悪い!?ベル叔父様が助けられました。結果には大満足です!
今だってそうだ!ファイアス攻略の正解ルートは『危なっかしくて、放っておけない、守って上げたくなる様な女の子』でいるのが正解だ。残念ながらワタクシは、黙って大人しく守られているだけのお姫様じゃない!
「クソッ!……分かった、皆の命が掛かっている……だが、忘れるな!俺はまだ、アンタを信用している訳じゃない!」
「分かっておりますわ、結果で応えるのみです!」
そうだ!ワタクシはマリアルイゼ!ヘレスティアじゃない!目的の為には手段を選ばない女だ!清く正しくなんて柄じゃない!
大体、決意して出来る様だったら『健康の為に早寝・早起き。将来の為に勉強して仕事して、無駄な散財をせず貯金。偶の休日には運動で汗を流す』みたいな聖人君子の生活だって出来るはずです。絶対無理ですね!それが出来るなら『喪女』で『ゲーマー』なんて前世送ってませんから!
正解だと分かっていても選べない人間がいるんです!
でもそんな人間が役に立てる場所が今ここにある!こんな状況、何度も仮想している、有効な手段は山の様に思い付く、盤面だって見えている!足りなかったのはユニットを動かす権利だけでした。今、それを手に入れた……後は、ステージクリアするだけです!
ゲーム感覚が抜けない訳じゃない、一番得意な事で想定し、結果を出すんだ!私は、私だ!『喪女』で、『ゲーマー』で……
「さぁ……それでは、ここから『悪役令嬢』の本領発揮と参りますわ!」
……イヤイヤ、悪役令嬢が本領発揮したら破滅しかないんじゃない?ともセルフでツッコんでしまいますが……修羅場からの逆転劇に、悪役の存在は必要不可欠です!真っ赤な正義も此方にいます!
状況は劣悪、被害は甚大、戦況は終わりが見えない……それがどうした!どんと来いです!難易度が上がる程、燃える人種がいるんです!ここからはゲーマーらしくで行こう!
応援ありがとうございます!
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