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11~20話

11d、これじゃない気がする

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 グレニスのを呼んでしまうと、恐らく、きっと、絶対、怒られる気がするし。
 この人たちはニコニコとして親切そうだし。

 そうだそうだ、これは名案だ。
 何も汗だくで甲冑を身につけているのはグレニスだけじゃない。
 見渡す限り、ここはこんなにも魅惑的な甲冑で溢れているではないか!!

 そうと決まれば二人組の騎士を見上げ、たまたま先に目が合った片方へと声をかけた。

「あの、すみませんが……ちょっと兜を貸していただけませんか?」

「兜? 別に構いませんが……あっ、女性には重いでしょうから気をつけてください」

 断られる可能性も考えていたけれどあっさりと快諾され、気遣わしげにそうっと兜を手渡される。
 あの日グレニスの兜に触れてあんなに怒られたのはなんだったのか。あれか。断りもなく触れたのがいけなかったのか。

 昼間の日差しを浴び続けた兜は、こんなに日が傾いてもなお、じわりと熱を宿していた。

「では失礼して……」

 両手でしっかりと兜を持ち、期待たっぷりにこくりと唾を飲み込む。
 いざ鼻を寄せようと被り口をこちらに向ければ、まだ距離があるにも関わらずむわっと香りが立ち込めた。
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