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31~40話
34a、痛くなんてない。大丈夫。
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グレニスはその晩もまた城に泊まり込んだようで、翌朝の早朝鍛練には現れなかった。
こんなことなら噛りついてでももっと嗅ぎためておくんだった。
次は一体いつ帰ってくるのだろう。
昨日たっぷりと嗅いだ香りの余韻でなんとか一日を乗り切り、夕食を終えて部屋に戻る。
先に入室したマニーが床から封筒を拾いあげた。
「えーっと、これはリヴ宛てね」
屋敷にまとまって届けられる使用人宛の郵便物を、管理人がこうしてドア下の隙間から滑り込ませる形で各部屋に届けておいてくれるのだ。
この方式に慣れるまでは、何度か自分の靴跡のついた封筒を開ける羽目にもなった。
「ありがとう。……あら? 実家からだわ」
封筒裏の見慣れたお父様の署名に首を傾げつつ、ベッドに腰かけて封を切る。
定期的に送っている近況報告への返信は半月ほど前に受け取ったばかりだし……。次の返信の機会も待たずわざわざ手紙を送ってくるなんて、一体何事だろう。
懐かしい香りのする便箋を取り出して、真剣に目を通した。
三枚綴りの便箋に書いてある内容のほとんどは、舞ってきた花びらがお母様の髪について花の女神かと思っただの、食べ過ぎで太ったからとお母様の指示で自分の食器だけ一回り小さい物に変えられてしまっただの、いつも通りの惚気ともつかないどうでもいい内容ばかりで。
もう読まなくてもいいんじゃないかと呆れ半分でおざなりに視線を滑らせていけば、最後の数行が目に留まった。
こんなことなら噛りついてでももっと嗅ぎためておくんだった。
次は一体いつ帰ってくるのだろう。
昨日たっぷりと嗅いだ香りの余韻でなんとか一日を乗り切り、夕食を終えて部屋に戻る。
先に入室したマニーが床から封筒を拾いあげた。
「えーっと、これはリヴ宛てね」
屋敷にまとまって届けられる使用人宛の郵便物を、管理人がこうしてドア下の隙間から滑り込ませる形で各部屋に届けておいてくれるのだ。
この方式に慣れるまでは、何度か自分の靴跡のついた封筒を開ける羽目にもなった。
「ありがとう。……あら? 実家からだわ」
封筒裏の見慣れたお父様の署名に首を傾げつつ、ベッドに腰かけて封を切る。
定期的に送っている近況報告への返信は半月ほど前に受け取ったばかりだし……。次の返信の機会も待たずわざわざ手紙を送ってくるなんて、一体何事だろう。
懐かしい香りのする便箋を取り出して、真剣に目を通した。
三枚綴りの便箋に書いてある内容のほとんどは、舞ってきた花びらがお母様の髪について花の女神かと思っただの、食べ過ぎで太ったからとお母様の指示で自分の食器だけ一回り小さい物に変えられてしまっただの、いつも通りの惚気ともつかないどうでもいい内容ばかりで。
もう読まなくてもいいんじゃないかと呆れ半分でおざなりに視線を滑らせていけば、最後の数行が目に留まった。
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