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41~50話

49c、これは違うの!

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「急な訪問にも関わらず、夕食の席へお招きいただきありがとうございます」

「いやいやっ、そんなにかしこまらずにジェルム侯爵もどうぞここを我が家と思って楽になさってください! なーんて言っては侯爵家に失礼ですかね、ははは」

 お父様とお母様が並んで座り、テーブルを挟んだ対面にグレニスと私が座る。

 お兄様は奥さんと子どもと家族水入らずでタウンハウスに住んでいるし、お姉様は遠方に嫁いでいてたまに顔を見せにくる程度なので、この場にはいない。

「ありがとうございます。お二人も、私のことはどうぞグレニスとお呼びください。私に対しての敬語も不要です」

「え……えー、そうかい? それなら……」


 運ばれてくる料理はどれも懐かしい味がする。
 もっと美味しい料理はいくらでもあるだろうけれど、幼い頃から慣れ親しんだ味は優しくするりと身体に染み込んでいくようだ。

 ちらりとグレニスを盗み見れば、皿にはまだ私と同程度の料理が残っている。
 どうやら食べる速度を落としてみんなと合わせてくれているらしい。
 目が合うと、グレニスは『やればできるだろう』と言わんばかりにニヤリと口端を上げてみせた。

「リヴ、向こうでのお勤めはどうだったの?」

 はっとして正面のお母様に視線を移す。

「うん、叱られることも多かったけど、やりがいがあって楽しかったわ! お掃除のコツとか、シミ抜きの方法なんかも習ったのよ」

 うんうんと興味深そうに聞いてくれるお母様に、嬉しくなってあれもこれもと話して聞かせる。
 やはり私も、手紙だけでは話し足りていなかったようだ。
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