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61~最終話
62e、【終】兜を被ってスハスハしていたら
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「ここに二人を夫婦と認めます」
冷静な大司教が告げる。
その言葉を聞いた瞬間、それまでの緊張が霧散して、大きな喜びが私を包んだ。
よ、よかったーーー!
つつがなく式を終えられた!!
これで、正式にグレニスと夫婦になれたのだ!
グレニスを見上げてにっこりと微笑むと、このうえなく幸せな心地で、ガポッと兜を被った。
すぅぅぅぅぅぅ……っ!
狭い空間に私と香りの二人きり。
うっとりと酩酊していた気分が次第に落ち着いてくると、なにやら場内がどよめいていることに気付いた。
何かあったのだろうか?
トラブルでなければいいのだけれど……。
目のスリット位置が合わないため、私からは周囲を確認できない。
微かな不安を抱いてグレニスの方へと手を伸ばせば、力強い腕が安心させるように、ぐっと腰を抱き寄せてくれた。
「大丈夫、何も問題ない」
「よかった……」
ほっと息を吐く。
グレニスが大丈夫だと言うなら安心だ。
視界不良のため腰を抱くグレニスに半分身体を預けるようにしながら、再び身廊を歩んでどよめく会場を後にした。
このあとは確か、バルコニーに出て市民に結婚を御披露目するのだ。
グレニスにエスコートされて通路を進む。
すっかりと身体を預けきって進行方向も何もグレニスに任せ、蒸し上げられた汗の香りの吸引に勤しんでいると、不意に立ち止まったグレニスがコンコンと兜をノックしてきた。
「?」
足音の響き方からして、まだバルコニーには出ていないようだけれど……。
「市民に可愛い顔を見せてやってくれ」
ああ、そうだった。顔見せなのだから、兜は脱がなくては。
兜に手をかければ、グレニスの大きな手が重なってスポッと兜を取り上げた。
「……ふっ、すごく幸せそうな顔をしているぞ。頬が真っ赤だ」
分厚い革越しの指先が、そっと頬を撫でる。
後ろでは、マニーが大慌てで乱れた髪を直してくれている。ごめん。
「こんなに愛らしい姿を見せてやらねばならないとはな……」
兜を付添人に預けながら、グレニスが渋い表情で呟いた。
通路の先に明かり差すバルコニーからは、まだ姿を見せていないにも関わらず市民の歓声が聞こえてくる。
私の用意が整うのを待って、グレニスが手を差し出した。
「さあ、行こうか奥さん?」
表情の険しさが緩み、ふっと笑顔を見せる。
グレニスがいてくれれば、怖いものなんて何もない。
そして優しいグレニスの心は、私が守ってあげるから。
「はい、旦那様!」
湧き上がる幸せに、満面の笑みでグレニスの手を取った。
~ 完 ~
■ ■ ■ ■ ■ ■
あとがき
これにて堂々完結———!
……と見せかけて、実はまだエピローグが数話続きます!٩( ᐛ )و<初夜初夜ソイヤッサー!!
ストックが尽きましたので、エピローグは週一(日曜日)更新となります。
今しばらくお付き合いくださいませ(uωu*)
冷静な大司教が告げる。
その言葉を聞いた瞬間、それまでの緊張が霧散して、大きな喜びが私を包んだ。
よ、よかったーーー!
つつがなく式を終えられた!!
これで、正式にグレニスと夫婦になれたのだ!
グレニスを見上げてにっこりと微笑むと、このうえなく幸せな心地で、ガポッと兜を被った。
すぅぅぅぅぅぅ……っ!
狭い空間に私と香りの二人きり。
うっとりと酩酊していた気分が次第に落ち着いてくると、なにやら場内がどよめいていることに気付いた。
何かあったのだろうか?
トラブルでなければいいのだけれど……。
目のスリット位置が合わないため、私からは周囲を確認できない。
微かな不安を抱いてグレニスの方へと手を伸ばせば、力強い腕が安心させるように、ぐっと腰を抱き寄せてくれた。
「大丈夫、何も問題ない」
「よかった……」
ほっと息を吐く。
グレニスが大丈夫だと言うなら安心だ。
視界不良のため腰を抱くグレニスに半分身体を預けるようにしながら、再び身廊を歩んでどよめく会場を後にした。
このあとは確か、バルコニーに出て市民に結婚を御披露目するのだ。
グレニスにエスコートされて通路を進む。
すっかりと身体を預けきって進行方向も何もグレニスに任せ、蒸し上げられた汗の香りの吸引に勤しんでいると、不意に立ち止まったグレニスがコンコンと兜をノックしてきた。
「?」
足音の響き方からして、まだバルコニーには出ていないようだけれど……。
「市民に可愛い顔を見せてやってくれ」
ああ、そうだった。顔見せなのだから、兜は脱がなくては。
兜に手をかければ、グレニスの大きな手が重なってスポッと兜を取り上げた。
「……ふっ、すごく幸せそうな顔をしているぞ。頬が真っ赤だ」
分厚い革越しの指先が、そっと頬を撫でる。
後ろでは、マニーが大慌てで乱れた髪を直してくれている。ごめん。
「こんなに愛らしい姿を見せてやらねばならないとはな……」
兜を付添人に預けながら、グレニスが渋い表情で呟いた。
通路の先に明かり差すバルコニーからは、まだ姿を見せていないにも関わらず市民の歓声が聞こえてくる。
私の用意が整うのを待って、グレニスが手を差し出した。
「さあ、行こうか奥さん?」
表情の険しさが緩み、ふっと笑顔を見せる。
グレニスがいてくれれば、怖いものなんて何もない。
そして優しいグレニスの心は、私が守ってあげるから。
「はい、旦那様!」
湧き上がる幸せに、満面の笑みでグレニスの手を取った。
~ 完 ~
■ ■ ■ ■ ■ ■
あとがき
これにて堂々完結———!
……と見せかけて、実はまだエピローグが数話続きます!٩( ᐛ )و<初夜初夜ソイヤッサー!!
ストックが尽きましたので、エピローグは週一(日曜日)更新となります。
今しばらくお付き合いくださいませ(uωu*)
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