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8 断罪ーその1
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🌷 この女は妻の座を脅かす女の敵(王妃陛下視点)
「恐れながら国王陛下に申しあげます。『子供も産めない役立たず』と王妃陛下のことを、そこの女性がなじりました」
私の昔からの友人のイブ・カイデン公爵夫人も涙をにじませた。
「はい、私も聞きました。『なんで子供も産めない役立たずが、ここで偉そうにしているのか』と言ったのですわ」
カリン・メロン公爵夫人も私の友人。やはり、不妊で悩んでいた。
「なんだと? 我が妃にそのようなことを! 」
国王陛下は額に青筋をたてて、声を荒げた。
ーーそうじゃないのよ! この女はアメリアから聞いていたイシド伯爵家の婿の愛人キャサリンだろう。この女がアメリアのことを、そう表現したのはわかっていた。私に向かって言った言葉ではないこともわかる。
けれど子供を望んでいてできない女にとって『子供も産めない役立たず』の言葉が、どれだけ心をえぐるものか産める女にはわからないでしょうね。
自分の力ではどうしようもないことを責められる不条理。それでも跡継ぎを産むことは大事な女性としての役割なことは否定できない。
その言葉に私は王妃としての役割を果たせない自分を顧みて改めて悲しみがこみあげた。この女が誰に向かって言ったかは問題じゃない。私の友人の高位貴族達は同じ悩みを抱える夫人達だ。わかり合い、慰め励まし合う私達の友情は固い。もちろん、そこにはアメリアも入っているわ。
私は「子供も産めない役立たず」の言葉に、多くの悩んでいる不妊症の女性達の悲しみも感じて泣いたのだった。この女は邪悪で思いやりがなさ過ぎる。こんな女はこの私が厳しく罰を与えなければならないわ。
「国王陛下、この女は私に裁かせていただけますか? このように妻の座を脅かし、我が物顔で不貞を働き子供を産めない女性をバカにする女は、もはや人の心をもたない獣とおなじです。奴隷に落として家畜以下の扱いを受けて当然ですわ」
「え? ちょっと待ってよ。奴隷? なんでよ? 当主は愛人を囲えるでしょう? ・・・・・・だったら・・・・・・私は愛人の立場でいいわよ。妻の座は脅かさないわ・・・・・・約束する。だから、奴隷にだけは勘弁してください! 奴隷なんて馬や牛以下じゃないのぉお」
🌼 王妃陛下の心まで傷つけるなんて許さない! (アメリア視点)
「どこまでおバカさんなのでしょう? イアンは当主ではありませんよ。当主は私です。イシド伯爵家は私の実家ですから、イアンには跡継ぎに口を出す資格はありませんよ」
私は泣いていらっしゃる王妃陛下に、とても申し訳なく思っていた。不妊というデリケートな問題は私達王妃陛下の取り巻きの共通の悩みでもあった。もちろん、話や趣味が合うこともあって元から仲良しの私達だが、貴族の女性が妊娠しづらいのは昔からの課題だった。
「王妃様のお考えに賛成ですわ。もとから平民のキャサリンですから、反省の為にも奴隷落ちでよろしいのではないでしょうか? それから、この女性と夫に慰謝料と今までの利息をつけての横領したお金の返還を求めます。全てのものを返し終わる頃には老人になっているでしょうが」
「え? お金なんて一銭もないわよ。冗談は言わないでよ。イアンは正当なイシド伯爵家の当主だと言ったわよね? そうでしょう?」
「え? いや、俺は婿だけれど・・・・・・院長がいなければ、大事な病院はめちゃくちゃになるぞ! アメリアは看護師の資格もないじゃないか? お前に病院の切り盛りができるわけがない! しかもイシド伯爵家は代々、病院の院長が当主だったから私が当主だろう?」
「ふっ。どうすればそんなおめでたい解釈ができるのですか? 違いますよ。病院の院長=当主になるわけではなく、当主はその家系の血を濃く受け継ぐ者がなります。この場合では言えば私。そして、次の当主はカーティス。アネットも、もちろん伯爵家の血を継ぐ者です。それに、イアンがいなくても私の病院は少しも困りませんわ」
「ふざけるな! 自分も不倫しておいて、俺を責めるなんてなぁーー。相手は誰だよ? まさか、言えない相手かよ? 使用人とかだったら俺は認めないぞ!」
「黙れ! 下郎が!」
国王陛下の怒声がイアンの頭の上に落ち、イアンは腰を抜かしてその場にへたりこんだのだった。
「恐れながら国王陛下に申しあげます。『子供も産めない役立たず』と王妃陛下のことを、そこの女性がなじりました」
私の昔からの友人のイブ・カイデン公爵夫人も涙をにじませた。
「はい、私も聞きました。『なんで子供も産めない役立たずが、ここで偉そうにしているのか』と言ったのですわ」
カリン・メロン公爵夫人も私の友人。やはり、不妊で悩んでいた。
「なんだと? 我が妃にそのようなことを! 」
国王陛下は額に青筋をたてて、声を荒げた。
ーーそうじゃないのよ! この女はアメリアから聞いていたイシド伯爵家の婿の愛人キャサリンだろう。この女がアメリアのことを、そう表現したのはわかっていた。私に向かって言った言葉ではないこともわかる。
けれど子供を望んでいてできない女にとって『子供も産めない役立たず』の言葉が、どれだけ心をえぐるものか産める女にはわからないでしょうね。
自分の力ではどうしようもないことを責められる不条理。それでも跡継ぎを産むことは大事な女性としての役割なことは否定できない。
その言葉に私は王妃としての役割を果たせない自分を顧みて改めて悲しみがこみあげた。この女が誰に向かって言ったかは問題じゃない。私の友人の高位貴族達は同じ悩みを抱える夫人達だ。わかり合い、慰め励まし合う私達の友情は固い。もちろん、そこにはアメリアも入っているわ。
私は「子供も産めない役立たず」の言葉に、多くの悩んでいる不妊症の女性達の悲しみも感じて泣いたのだった。この女は邪悪で思いやりがなさ過ぎる。こんな女はこの私が厳しく罰を与えなければならないわ。
「国王陛下、この女は私に裁かせていただけますか? このように妻の座を脅かし、我が物顔で不貞を働き子供を産めない女性をバカにする女は、もはや人の心をもたない獣とおなじです。奴隷に落として家畜以下の扱いを受けて当然ですわ」
「え? ちょっと待ってよ。奴隷? なんでよ? 当主は愛人を囲えるでしょう? ・・・・・・だったら・・・・・・私は愛人の立場でいいわよ。妻の座は脅かさないわ・・・・・・約束する。だから、奴隷にだけは勘弁してください! 奴隷なんて馬や牛以下じゃないのぉお」
🌼 王妃陛下の心まで傷つけるなんて許さない! (アメリア視点)
「どこまでおバカさんなのでしょう? イアンは当主ではありませんよ。当主は私です。イシド伯爵家は私の実家ですから、イアンには跡継ぎに口を出す資格はありませんよ」
私は泣いていらっしゃる王妃陛下に、とても申し訳なく思っていた。不妊というデリケートな問題は私達王妃陛下の取り巻きの共通の悩みでもあった。もちろん、話や趣味が合うこともあって元から仲良しの私達だが、貴族の女性が妊娠しづらいのは昔からの課題だった。
「王妃様のお考えに賛成ですわ。もとから平民のキャサリンですから、反省の為にも奴隷落ちでよろしいのではないでしょうか? それから、この女性と夫に慰謝料と今までの利息をつけての横領したお金の返還を求めます。全てのものを返し終わる頃には老人になっているでしょうが」
「え? お金なんて一銭もないわよ。冗談は言わないでよ。イアンは正当なイシド伯爵家の当主だと言ったわよね? そうでしょう?」
「え? いや、俺は婿だけれど・・・・・・院長がいなければ、大事な病院はめちゃくちゃになるぞ! アメリアは看護師の資格もないじゃないか? お前に病院の切り盛りができるわけがない! しかもイシド伯爵家は代々、病院の院長が当主だったから私が当主だろう?」
「ふっ。どうすればそんなおめでたい解釈ができるのですか? 違いますよ。病院の院長=当主になるわけではなく、当主はその家系の血を濃く受け継ぐ者がなります。この場合では言えば私。そして、次の当主はカーティス。アネットも、もちろん伯爵家の血を継ぐ者です。それに、イアンがいなくても私の病院は少しも困りませんわ」
「ふざけるな! 自分も不倫しておいて、俺を責めるなんてなぁーー。相手は誰だよ? まさか、言えない相手かよ? 使用人とかだったら俺は認めないぞ!」
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