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私はヴァネッサ・パッチーニ。パッチーニ男爵家に嫁いで来て3年経つけれど、ずっと子供はまだかと姑に言われてきた。
私だって子供は大好きだし妊娠したい。だから、一生懸命に子供が授かるように努力してきたつもりだった。そしてやっと子供を授かり、夫の誕生日にサプライズで報告しようと計画を立てる。
きっと姑と舅も夫も喜んでくれるはず。そう信じて疑わなかったのに・・・・・・
夫の誕生日当日、パッチーニ男爵家の一族の者が招待されて和やかな雰囲気で、それは始まった。
「実はね、重大発表があるのよ。このたび、息子ライモンドに子供ができました!」
姑が満面の笑みで声を張り上げたのだ。
(え? なんでわかったのかしら? お医者様には『言わないで』と口止めをしていたのに。でも、おめでたいことだから、つい言ってしまったのかも)
私が前に進み出ようとしたところ、夫が私を乱暴に突き飛ばし、若い女を前にそっと押し出した。
「この女性がわたしの子供を妊娠してくれました。ヴァネッサには申し訳ないけれど、3年子無しはやはり身体に欠陥があり離縁されても文句は言えないです。充分に慰謝料を払うから、ヴァネッサも快くわたしと別れてくれたまえ」
とんでもない内容を、朗らかな顔で言った夫に目眩がした。
「私も妊娠しました。やっと授かったから喜んでもらえると思ったのに」
私は震える声でそう言った。
「えぇーー? 今更妊娠しても遅いですよ。もうこのアントニエッタが出産間近なのよ。それに若いから、次々に孫を産んでくれるわ」
と姑。
「そうだとも、タイミングの悪い嫁だな。たっぷりと金を払うから息子と離縁しなさい。やっとできた子供なんてなにか障害を抱えているかもしれん」
舅は吐き捨てるように言う。
私はその舅の言葉に愕然とすると同時に、悲しみよりも怒りがどっと心に押し寄せた。
「わかりました。そこまでおっしゃるなら離縁します。もちろん、子供の為に慰謝料はきっちり受け取らせていただきます。これ以降は他人ですから、私の子供が産まれても会わせることはありませんし、つきまとわないと書面で約束してください。それが破られた場合は罰金を要求しますわ」
「ぶはっ! ヴァネッサはどうかしているよ。わたしの子供がこれから産まれると言うのに、君が産む子供なんて眼中にないさ」
夫は面白くて堪らないというように吹き出した。
「本当に生意気な嫁ね。あなたの産んだ子供なんかにつきまとうわけがないわよ」
姑はフフンと、鼻を鳴らす。
招待客はパッチーニ男爵家の身内ばかりで私を嘲笑う者しかいない。私の身内が一人も招待されていないから、この発表は計画的でずっと前から予定されていたのだろう。
こうして私の3年間の結婚生活が幕を閉じた。
私は実家のサントーニ男爵家に戻り、無事に子供を出産する。息子の名前はアルフィオ、あれから7年の歳月が経ち、とても立派に育っていた。
親バカだと笑われそうだけれど、とてもしっかりしていて優秀な子だった。それになにより気持ちが優しくて、子供だというのに私をとても労ってくれる。
(本当に産んで良かった)
そう思いながら暮らしていたら、すっかり忘れ去っていた忌々しい方達がいきなり訪ねてきたのだった。
「奥様、ヴァネッサ様。パッチーニ男爵とパッチーニ前男爵夫妻が先触れもなくいきなりお越しですが、どういたしましょうか?」
執事の言葉に私とお母様は戸惑った。
(今更、何の用なの?)
私だって子供は大好きだし妊娠したい。だから、一生懸命に子供が授かるように努力してきたつもりだった。そしてやっと子供を授かり、夫の誕生日にサプライズで報告しようと計画を立てる。
きっと姑と舅も夫も喜んでくれるはず。そう信じて疑わなかったのに・・・・・・
夫の誕生日当日、パッチーニ男爵家の一族の者が招待されて和やかな雰囲気で、それは始まった。
「実はね、重大発表があるのよ。このたび、息子ライモンドに子供ができました!」
姑が満面の笑みで声を張り上げたのだ。
(え? なんでわかったのかしら? お医者様には『言わないで』と口止めをしていたのに。でも、おめでたいことだから、つい言ってしまったのかも)
私が前に進み出ようとしたところ、夫が私を乱暴に突き飛ばし、若い女を前にそっと押し出した。
「この女性がわたしの子供を妊娠してくれました。ヴァネッサには申し訳ないけれど、3年子無しはやはり身体に欠陥があり離縁されても文句は言えないです。充分に慰謝料を払うから、ヴァネッサも快くわたしと別れてくれたまえ」
とんでもない内容を、朗らかな顔で言った夫に目眩がした。
「私も妊娠しました。やっと授かったから喜んでもらえると思ったのに」
私は震える声でそう言った。
「えぇーー? 今更妊娠しても遅いですよ。もうこのアントニエッタが出産間近なのよ。それに若いから、次々に孫を産んでくれるわ」
と姑。
「そうだとも、タイミングの悪い嫁だな。たっぷりと金を払うから息子と離縁しなさい。やっとできた子供なんてなにか障害を抱えているかもしれん」
舅は吐き捨てるように言う。
私はその舅の言葉に愕然とすると同時に、悲しみよりも怒りがどっと心に押し寄せた。
「わかりました。そこまでおっしゃるなら離縁します。もちろん、子供の為に慰謝料はきっちり受け取らせていただきます。これ以降は他人ですから、私の子供が産まれても会わせることはありませんし、つきまとわないと書面で約束してください。それが破られた場合は罰金を要求しますわ」
「ぶはっ! ヴァネッサはどうかしているよ。わたしの子供がこれから産まれると言うのに、君が産む子供なんて眼中にないさ」
夫は面白くて堪らないというように吹き出した。
「本当に生意気な嫁ね。あなたの産んだ子供なんかにつきまとうわけがないわよ」
姑はフフンと、鼻を鳴らす。
招待客はパッチーニ男爵家の身内ばかりで私を嘲笑う者しかいない。私の身内が一人も招待されていないから、この発表は計画的でずっと前から予定されていたのだろう。
こうして私の3年間の結婚生活が幕を閉じた。
私は実家のサントーニ男爵家に戻り、無事に子供を出産する。息子の名前はアルフィオ、あれから7年の歳月が経ち、とても立派に育っていた。
親バカだと笑われそうだけれど、とてもしっかりしていて優秀な子だった。それになにより気持ちが優しくて、子供だというのに私をとても労ってくれる。
(本当に産んで良かった)
そう思いながら暮らしていたら、すっかり忘れ去っていた忌々しい方達がいきなり訪ねてきたのだった。
「奥様、ヴァネッサ様。パッチーニ男爵とパッチーニ前男爵夫妻が先触れもなくいきなりお越しですが、どういたしましょうか?」
執事の言葉に私とお母様は戸惑った。
(今更、何の用なの?)
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