兄皇帝は妹皇女を深く愛する

青空一夏

文字の大きさ
6 / 7

迎えに来た皇帝(エリザベス視点)

「皇帝がお迎えに来ましたよ、エリザベス様!!」
「快楽園」の女将がバタバタと走ってくる音がして勢いよく「レディ・マドンナ」の執務室を開けた。


「え?嘘!!まさか‥‥」
お兄様には会いたいけど会えない。

私は娼婦に墜とされて、例え実際には客をとっていなくても娼館の女なんだもの。


「会いたくない‥‥」
私は俯いて首を横に振った。


私はお兄様の皇帝としての立場を悪くしたくない。
娼婦に墜ちた妹皇女、しかも不義の子、誰が父親かもわからない私なんかがそばにいてはいけないんだ。










連日、「快楽園」に通いつめる皇帝にさすがに醜聞になりつつあった。

新しい皇帝は女好きらしい、しかも下品な娼婦がお好きらしい、などと噂が広まっていった。

まずいわ、お兄様を「快楽園」に来ることをやめさせなければいけない。

私は、わざと下品な化粧をして胸のあいたドレスを着た。

お兄様がいつものように「快楽園」に来たので、下級娼婦らしい匂いを漂わせながら会いにいった。

二人で安っぽい密室にはいると、お兄様はすぐに私を抱きしめた。

「会いたかったよ。なぜ、すぐに会ってくれなかった?」

半年のあいだに、すっかり皇帝らしく精悍な顔つきになっているお兄様はますます素敵だ。

でも、私はそんなことを思っちゃいけない。

「この生活は私には合っているようです。だから、ここにいます。もう、来ないでください」

「え?」
ショックで、すっかり青ざめたお兄様を残して私はさっさとその部屋をあとにした。

バタバタと駆け足で「レディ・マドンナ」に戻るとヘレナに抱きついて泣いた。

ヘレナはなにも言わなかった。








お兄様は「快楽園」にパッタリと来なくなった。

そして、なぜか、「快楽園」のなかが改装されるときいた。

またお兄様が来る頃には私専用の部屋が快楽園に作られていた。

「ここがいいならここにいればいい。でも、わたし以外の客をとることはできない」
お兄様がそう言って私を抱きしめた。

「えっと、私は娼婦なんですよ?たくさんの男に抱かれたいんです!!」
やけっぱちで、心にもないことを言った私をお兄様がベッドに押し倒して言った。

「わたしが、たくさんしてあげよう。誰にも抱かせない」

「そうじゃなくて!!お兄様は皇帝なんですよ?私といてはだめです!私はそばにいたいけど、いてはいけないんです」

「なんで?娼婦に墜ちたからか?誰に何度抱かれても、君はわたしのものだ。娼婦だろうがなんだろうが、わたしの大事な女性なことにはかわりはない。例え、他の男の子供がそのお腹にいたって、わたしの子として全力で愛そう」


「‥‥お兄様はバカなんですか。」

「あぁ、妹ばかだ。わたしはエリザベスと血が繋がっていなくて本当に嬉しい!君を皇妃にできるからね」

「娼婦が皇妃だなんて‥‥他の国に笑われます」

「ならば、そんな国はわたしが滅ぼそう‥‥エリザベスのために」

私はもう降参した。私への愛がダダ漏れしている皇帝の胸に飛び込んだ。







私は王宮にいて離れの宮殿で夫の皇帝と紅茶を飲んでいた。

離れの宮殿はすっかり綺麗に修復されていたが、庭園はわざと野の花が咲くように放っておいた。

ここにシートを広げてサンドイッチを並べて夫と並んで食べるの。

「私、大きくなったらお兄様のお嫁さんのなりたい」

昔の私が言いたかった言葉を思い出してつぶやく。

「いいとも。何度でも、式をあげよう」
お兄様は私を幸せそうに抱いた。

感想 2

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】離縁されるお母様を幸せにする方法

山葵
恋愛
僕は愛するお母様の為に頑張るんだ!

番ではないと言われた王妃の行く末

にのまえ
恋愛
 獣人の国エスラエルの王妃スノーは、人間でありながら“番”として選ばれ、オオカミ族の王ローレンスと結婚した。しかし三年間、彼に番と認められることも愛されることもなく、白い結婚のまま冷遇され続ける。  それでも王妃として国に尽くしてきたスノーだったが、ある日、ローレンスが別の令嬢レイアーを懐妊させ、側妃として迎えると知る。ついに心が折れたスノーは離縁を決意し、国を去ろうとする。  しかしその道中、レイアー嬢の実家の襲撃に遭い、スノーは命を落とす寸前、自身の命と引き換えに広域回復魔法で多くの命を救う。  これでスノーの、人生は終わりのはずだった。  だが次に目を覚ますと、スノーは三年前の結婚式当日に戻っていた。何度死んでも、何度拒絶しても、結婚式の誓いの瞬間へと戻される。  番から逃れようと、スノーは何度も死を選ぶが――。

それは確かに真実の愛

宝月 蓮
恋愛
レルヒェンフェルト伯爵令嬢ルーツィエには悩みがあった。それは幼馴染であるビューロウ侯爵令息ヤーコブが髪質のことを散々いじってくること。やめて欲しいと伝えても全くやめてくれないのである。いつも「冗談だから」で済まされてしまうのだ。おまけに嫌がったらこちらが悪者にされてしまう。 そんなある日、ルーツィエは君主の家系であるリヒネットシュタイン公家の第三公子クラウスと出会う。クラウスはルーツィエの髪型を素敵だと褒めてくれた。彼はヤーコブとは違い、ルーツィエの嫌がることは全くしない。そしてルーツィエとクラウスは交流をしていくうちにお互い惹かれ合っていた。 そんな中、ルーツィエとヤーコブの婚約が決まってしまう。ヤーコブなんかとは絶対に結婚したくないルーツィエはクラウスに助けを求めた。 そしてクラウスがある行動を起こすのであるが、果たしてその結果は……? 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

過保護な公爵は虚弱な妻と遊びたい

黒猫子猫
恋愛
公爵家当主レグルスは、三カ月前に令嬢ミアを正妻に迎えた。可憐な外見から虚弱な女性だと思い、過保護に接しなければと戒めていたが、実際の彼女は非常に活発で明るい女性だった。レグルスはすっかりミアの虜になって、彼女も本来の姿を見せてくれるようになり、夫婦生活は円満になるはずだった。だが、ある日レグルスが仕事を切り上げて早めに帰宅すると、ミアの態度はなぜか頑なになっていた。そればかりか、必死でレグルスから逃げようとする。 レグルスはもちろん、追いかけた。 ※短編『虚弱な公爵夫人は夫の過保護から逃れたい』の後日談・ヒーロー視点のお話です。これのみでも読めます。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

《完結》戦利品にされた公爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
戦いの《戦利品》として公爵邸に連れて行かれた公爵令嬢の運命は?

上手に騙してくださらなかった伯爵様へ

しきど
恋愛
 アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。  文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。  彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。  貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。  メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。