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迎えに来た皇帝(エリザベス視点)
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「皇帝がお迎えに来ましたよ、エリザベス様!!」
「快楽園」の女将がバタバタと走ってくる音がして勢いよく「レディ・マドンナ」の執務室を開けた。
「え?嘘!!まさか‥‥」
お兄様には会いたいけど会えない。
私は娼婦に墜とされて、例え実際には客をとっていなくても娼館の女なんだもの。
「会いたくない‥‥」
私は俯いて首を横に振った。
私はお兄様の皇帝としての立場を悪くしたくない。
娼婦に墜ちた妹皇女、しかも不義の子、誰が父親かもわからない私なんかがそばにいてはいけないんだ。
☆
連日、「快楽園」に通いつめる皇帝にさすがに醜聞になりつつあった。
新しい皇帝は女好きらしい、しかも下品な娼婦がお好きらしい、などと噂が広まっていった。
まずいわ、お兄様を「快楽園」に来ることをやめさせなければいけない。
私は、わざと下品な化粧をして胸のあいたドレスを着た。
お兄様がいつものように「快楽園」に来たので、下級娼婦らしい匂いを漂わせながら会いにいった。
二人で安っぽい密室にはいると、お兄様はすぐに私を抱きしめた。
「会いたかったよ。なぜ、すぐに会ってくれなかった?」
半年のあいだに、すっかり皇帝らしく精悍な顔つきになっているお兄様はますます素敵だ。
でも、私はそんなことを思っちゃいけない。
「この生活は私には合っているようです。だから、ここにいます。もう、来ないでください」
「え?」
ショックで、すっかり青ざめたお兄様を残して私はさっさとその部屋をあとにした。
バタバタと駆け足で「レディ・マドンナ」に戻るとヘレナに抱きついて泣いた。
ヘレナはなにも言わなかった。
☆
お兄様は「快楽園」にパッタリと来なくなった。
そして、なぜか、「快楽園」のなかが改装されるときいた。
またお兄様が来る頃には私専用の部屋が快楽園に作られていた。
「ここがいいならここにいればいい。でも、わたし以外の客をとることはできない」
お兄様がそう言って私を抱きしめた。
「えっと、私は娼婦なんですよ?たくさんの男に抱かれたいんです!!」
やけっぱちで、心にもないことを言った私をお兄様がベッドに押し倒して言った。
「わたしが、たくさんしてあげよう。誰にも抱かせない」
「そうじゃなくて!!お兄様は皇帝なんですよ?私といてはだめです!私はそばにいたいけど、いてはいけないんです」
「なんで?娼婦に墜ちたからか?誰に何度抱かれても、君はわたしのものだ。娼婦だろうがなんだろうが、わたしの大事な女性なことにはかわりはない。例え、他の男の子供がそのお腹にいたって、わたしの子として全力で愛そう」
「‥‥お兄様はバカなんですか。」
「あぁ、妹ばかだ。わたしはエリザベスと血が繋がっていなくて本当に嬉しい!君を皇妃にできるからね」
「娼婦が皇妃だなんて‥‥他の国に笑われます」
「ならば、そんな国はわたしが滅ぼそう‥‥エリザベスのために」
私はもう降参した。私への愛がダダ漏れしている皇帝の胸に飛び込んだ。
☆
私は王宮にいて離れの宮殿で夫の皇帝と紅茶を飲んでいた。
離れの宮殿はすっかり綺麗に修復されていたが、庭園はわざと野の花が咲くように放っておいた。
ここにシートを広げてサンドイッチを並べて夫と並んで食べるの。
「私、大きくなったらお兄様のお嫁さんのなりたい」
昔の私が言いたかった言葉を思い出してつぶやく。
「いいとも。何度でも、式をあげよう」
お兄様は私を幸せそうに抱いた。
「快楽園」の女将がバタバタと走ってくる音がして勢いよく「レディ・マドンナ」の執務室を開けた。
「え?嘘!!まさか‥‥」
お兄様には会いたいけど会えない。
私は娼婦に墜とされて、例え実際には客をとっていなくても娼館の女なんだもの。
「会いたくない‥‥」
私は俯いて首を横に振った。
私はお兄様の皇帝としての立場を悪くしたくない。
娼婦に墜ちた妹皇女、しかも不義の子、誰が父親かもわからない私なんかがそばにいてはいけないんだ。
☆
連日、「快楽園」に通いつめる皇帝にさすがに醜聞になりつつあった。
新しい皇帝は女好きらしい、しかも下品な娼婦がお好きらしい、などと噂が広まっていった。
まずいわ、お兄様を「快楽園」に来ることをやめさせなければいけない。
私は、わざと下品な化粧をして胸のあいたドレスを着た。
お兄様がいつものように「快楽園」に来たので、下級娼婦らしい匂いを漂わせながら会いにいった。
二人で安っぽい密室にはいると、お兄様はすぐに私を抱きしめた。
「会いたかったよ。なぜ、すぐに会ってくれなかった?」
半年のあいだに、すっかり皇帝らしく精悍な顔つきになっているお兄様はますます素敵だ。
でも、私はそんなことを思っちゃいけない。
「この生活は私には合っているようです。だから、ここにいます。もう、来ないでください」
「え?」
ショックで、すっかり青ざめたお兄様を残して私はさっさとその部屋をあとにした。
バタバタと駆け足で「レディ・マドンナ」に戻るとヘレナに抱きついて泣いた。
ヘレナはなにも言わなかった。
☆
お兄様は「快楽園」にパッタリと来なくなった。
そして、なぜか、「快楽園」のなかが改装されるときいた。
またお兄様が来る頃には私専用の部屋が快楽園に作られていた。
「ここがいいならここにいればいい。でも、わたし以外の客をとることはできない」
お兄様がそう言って私を抱きしめた。
「えっと、私は娼婦なんですよ?たくさんの男に抱かれたいんです!!」
やけっぱちで、心にもないことを言った私をお兄様がベッドに押し倒して言った。
「わたしが、たくさんしてあげよう。誰にも抱かせない」
「そうじゃなくて!!お兄様は皇帝なんですよ?私といてはだめです!私はそばにいたいけど、いてはいけないんです」
「なんで?娼婦に墜ちたからか?誰に何度抱かれても、君はわたしのものだ。娼婦だろうがなんだろうが、わたしの大事な女性なことにはかわりはない。例え、他の男の子供がそのお腹にいたって、わたしの子として全力で愛そう」
「‥‥お兄様はバカなんですか。」
「あぁ、妹ばかだ。わたしはエリザベスと血が繋がっていなくて本当に嬉しい!君を皇妃にできるからね」
「娼婦が皇妃だなんて‥‥他の国に笑われます」
「ならば、そんな国はわたしが滅ぼそう‥‥エリザベスのために」
私はもう降参した。私への愛がダダ漏れしている皇帝の胸に飛び込んだ。
☆
私は王宮にいて離れの宮殿で夫の皇帝と紅茶を飲んでいた。
離れの宮殿はすっかり綺麗に修復されていたが、庭園はわざと野の花が咲くように放っておいた。
ここにシートを広げてサンドイッチを並べて夫と並んで食べるの。
「私、大きくなったらお兄様のお嫁さんのなりたい」
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「いいとも。何度でも、式をあげよう」
お兄様は私を幸せそうに抱いた。
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