文字の大きさ
大
中
小
31 / 32
30 相思相愛?
たった今、理想の男性を見つけてしまった。厳ついゴリラのような顔立ちがとても好みよ。お父様もどちらかと言えばゴリラ寄りだし、似たようなタイプがいて本当に嬉しい。今までなぜ気がつかなかったのかしら? ただ体つきはお父様には遠く及ばない。それなりに鍛えてはいるようで、もやしのような細い身体ではないけれど、もう少しだけ筋肉が欲しいところだ。
でも、とても私を優しい瞳で見つめてくれる。なんというか、運命みたいなものを感じてしまうわ。私は思わず手を伸ばし、優しくゴリラ顔の頬を撫でた。
「貴男はどなたですか? できたら私と結婚していただけませんこと? あ、大丈夫ですわ。旦那様とは『白い結婚』ですからね。揉める材料はなにひとつございません。でも、なぜ貴方は旦那様の席にいらっしゃるの?」
軽率にも私の口が勝手に動いていた。旦那様、ごめんなさい。やっぱり、私はイケメンは苦手なの。お父様に似たお顔が好きなのですわ。
☆彡 ★彡
(オーガスタム視点)
なぜか、愛しのエメラルドが私の頬をそっと撫でた。
なぜだ? 今までこのようなスキンシップはなかった。結婚してからすでに2年の歳月が経ち、今では夜会や舞踏会にお茶会などは一緒に出席しているが、身体を触ることができるのはダンスの時だけだ。
カレーが口の横に付いていても、見とれるほど美しいエメラルドに、戸惑いながらも微笑みかけた。しかし、次の瞬間に頬をピンクに染めて言った妻の言葉に耳を疑った。
「貴男はどなたですか? できたら私と結婚していただけませんこと? あ、大丈夫ですわ。旦那様とは『白い結婚』ですからね。揉める材料はなにひとつございません」
「医者だ! 医者を呼べ! エメラルドが大変だぁーー!」
私は声の限りに叫び、カールもアーバンもエメラルドの言葉に驚愕していた。
「なんてこった! 記憶喪失ですか? 奥様、このアーバンはわかりますか?」
「えぇ、料理長でしょう? 今日のカレーも最高よ!」
「おっ、奥様。では、私はわかりますか?」
「うん、執事のカールよね。お昼を食べるようになったのはとても良いことよ。今度は3時のおやつも食べるようにしましょうね!」
「奥様、私とこいつはわかりますか?」
「あぁ、タヌキとキツネよ。醤油職人の新しい作業服を作ってあげるから楽しみにしていてね」
次々と質問がなされた結果、私以外はちゃんとわかっているらしい。
なぜだ? エリアス侯爵家お抱えの医者が言うには、原因不明とのことだった。
☆彡 ★彡
急遽、アドリオン男爵家に義両親をお迎えするための馬車を向かわせた。エメラルドはエリアス侯爵家にたくさんの魔石を持ち込み、便利で画期的なものを開発していた。そのひとつに魔石を使った蹄鉄がある。これにより馬の蹄の摩耗を防ぎ、走る際の衝撃も軽減できた。しかも、魔石の効果で通常の10倍の距離を、わずかな労力で走ることができる。そのため、わずか数時間後にはアドリオン男爵夫妻は私の目のまえにいた。
アドリオン男爵領で有名だという錬金術師ラディスラスという老人と、高名な医者や祈祷師、植物や薬草の専門家である草木師なども一緒だった。さすがに大金持ちのアドリオン男爵家だ。娘の一大事に思いつく限りの人材を引き連れて来てくださったのだ。
「これは病気ではないです。もっと、人為的なものだと思います。おそらく、錬金術師による秘薬を飲まされたのだではないでしょうか」
錬金術師ラディスラスは、それぞれの専門家の意見を総合し、そのように結論づけた。しかし、私も使用人もエメラルドにそのような物を飲ませるわけがない。
「いったい誰の仕業なのだろう? とにかく、エメラルドには私が別人に見えるのですね?」
「そのようですね。どうやら、エリアス侯爵夫人にはエリアス侯爵閣下がゴリラ顔・・・・・・げふんげふん、ではなくて野性的なお顔に見えているようです。そして、ここが大事なのですが、エリアス侯爵夫人にとってはお父様でいらっしゃるアドリオン男爵様が、理想の男性らしいのです」
私は義父であるアドリオン男爵をじっと観察した。なるほど、紛れもないゴリラ顔! ということは・・・・・・これは僥倖だ!
「なんてことだ。その秘薬を飲ませた者にお礼を言いたい。つまり、今の私はエメラルドの理想の男性というわけだな? だったらこのままで良い。一生そのように見えていてほしい」
「私どもの娘を愛していらっしゃるのですね」
アドリオン男爵夫妻が満足そうに顔をほころばせた。私は迷いもなく頷いた。初対面の際にはとんでもないことをエメラルドに言ってしまったが、彼女と一緒にいると楽しくて自然と頬が緩むことを話した。
使用人達に気さくに話しかける人柄が素晴らしい。多くの知識と才能があって、珍しくも美味しい料理を考え出すことも天才としか思えない。それを美味しそうに頬張るところもたまらなく可愛い。エメラルドの良いところを数えだすときりがないことに気づく。
すっかり私はこの面白い妻に夢中なんだ。
これは間違いなく恋。妻に本気で恋することができるなんて私は最高に運が良い。
ほとんど、のろけ話に近いことを延々と義両親にしゃべってしまった。はっ、恥ずかしい・・・・・・
「しっかりと頑張ってエメラルドの心をつかみ、一日も早く可愛い孫の顔を見せてください」
ますます、にこにこと笑みを深めるアドリオン男爵に励まされた。
「はい!」
☆彡 ★彡
「ゴリちゃん。あーんして。お肉も、お魚も、お野菜も、たぁーくさん、食べてね。それから、もう少し筋肉をつけると、もっと素敵よ」
隣に座ったエメラルドがぴったりと体を寄せながら、優雅な仕草でフォークに刺さった肉を私の唇に近づけた。彼女は優しい微笑みを浮かべている。私はその一口の肉を味わいながら、妻の愛と思いやりに感動していた。
あれから、私がオーガスタムだということを説明し、エメラルドが秘薬を飲まされたのだという推察も話した。
「なんて、素敵なのでしょう。旦那様がこのように見えることは、私にとっては最高のご褒美ですわ」
エメラルドも私と同じで、この状況を喜んで受け入れるつもりのようだ。それからの食事時の私は、いつもこのようにエメラルドにベタベタに甘やかされている。
どうやら、私の顔がゴリラ顔に見えている間は、エメラルドの心は私のものだ。だから、いっぱい愛を伝えて私のことを、もっともっと好きになってもらおう! 私の目標は愛する妻に愛されること。この面白くて賢くて美しい妻を、私は決して離さないよ!
いったん、完結
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※こちらはいったん完結とし、明日はリクエストのトムのざまぁになります。更生編的ざまぁを予定しております。よろしくお願いします。
※カクヨムさんの「嫁コン」に参加しております。同じペンネームです。
でも、とても私を優しい瞳で見つめてくれる。なんというか、運命みたいなものを感じてしまうわ。私は思わず手を伸ばし、優しくゴリラ顔の頬を撫でた。
「貴男はどなたですか? できたら私と結婚していただけませんこと? あ、大丈夫ですわ。旦那様とは『白い結婚』ですからね。揉める材料はなにひとつございません。でも、なぜ貴方は旦那様の席にいらっしゃるの?」
軽率にも私の口が勝手に動いていた。旦那様、ごめんなさい。やっぱり、私はイケメンは苦手なの。お父様に似たお顔が好きなのですわ。
☆彡 ★彡
(オーガスタム視点)
なぜか、愛しのエメラルドが私の頬をそっと撫でた。
なぜだ? 今までこのようなスキンシップはなかった。結婚してからすでに2年の歳月が経ち、今では夜会や舞踏会にお茶会などは一緒に出席しているが、身体を触ることができるのはダンスの時だけだ。
カレーが口の横に付いていても、見とれるほど美しいエメラルドに、戸惑いながらも微笑みかけた。しかし、次の瞬間に頬をピンクに染めて言った妻の言葉に耳を疑った。
「貴男はどなたですか? できたら私と結婚していただけませんこと? あ、大丈夫ですわ。旦那様とは『白い結婚』ですからね。揉める材料はなにひとつございません」
「医者だ! 医者を呼べ! エメラルドが大変だぁーー!」
私は声の限りに叫び、カールもアーバンもエメラルドの言葉に驚愕していた。
「なんてこった! 記憶喪失ですか? 奥様、このアーバンはわかりますか?」
「えぇ、料理長でしょう? 今日のカレーも最高よ!」
「おっ、奥様。では、私はわかりますか?」
「うん、執事のカールよね。お昼を食べるようになったのはとても良いことよ。今度は3時のおやつも食べるようにしましょうね!」
「奥様、私とこいつはわかりますか?」
「あぁ、タヌキとキツネよ。醤油職人の新しい作業服を作ってあげるから楽しみにしていてね」
次々と質問がなされた結果、私以外はちゃんとわかっているらしい。
なぜだ? エリアス侯爵家お抱えの医者が言うには、原因不明とのことだった。
☆彡 ★彡
急遽、アドリオン男爵家に義両親をお迎えするための馬車を向かわせた。エメラルドはエリアス侯爵家にたくさんの魔石を持ち込み、便利で画期的なものを開発していた。そのひとつに魔石を使った蹄鉄がある。これにより馬の蹄の摩耗を防ぎ、走る際の衝撃も軽減できた。しかも、魔石の効果で通常の10倍の距離を、わずかな労力で走ることができる。そのため、わずか数時間後にはアドリオン男爵夫妻は私の目のまえにいた。
アドリオン男爵領で有名だという錬金術師ラディスラスという老人と、高名な医者や祈祷師、植物や薬草の専門家である草木師なども一緒だった。さすがに大金持ちのアドリオン男爵家だ。娘の一大事に思いつく限りの人材を引き連れて来てくださったのだ。
「これは病気ではないです。もっと、人為的なものだと思います。おそらく、錬金術師による秘薬を飲まされたのだではないでしょうか」
錬金術師ラディスラスは、それぞれの専門家の意見を総合し、そのように結論づけた。しかし、私も使用人もエメラルドにそのような物を飲ませるわけがない。
「いったい誰の仕業なのだろう? とにかく、エメラルドには私が別人に見えるのですね?」
「そのようですね。どうやら、エリアス侯爵夫人にはエリアス侯爵閣下がゴリラ顔・・・・・・げふんげふん、ではなくて野性的なお顔に見えているようです。そして、ここが大事なのですが、エリアス侯爵夫人にとってはお父様でいらっしゃるアドリオン男爵様が、理想の男性らしいのです」
私は義父であるアドリオン男爵をじっと観察した。なるほど、紛れもないゴリラ顔! ということは・・・・・・これは僥倖だ!
「なんてことだ。その秘薬を飲ませた者にお礼を言いたい。つまり、今の私はエメラルドの理想の男性というわけだな? だったらこのままで良い。一生そのように見えていてほしい」
「私どもの娘を愛していらっしゃるのですね」
アドリオン男爵夫妻が満足そうに顔をほころばせた。私は迷いもなく頷いた。初対面の際にはとんでもないことをエメラルドに言ってしまったが、彼女と一緒にいると楽しくて自然と頬が緩むことを話した。
使用人達に気さくに話しかける人柄が素晴らしい。多くの知識と才能があって、珍しくも美味しい料理を考え出すことも天才としか思えない。それを美味しそうに頬張るところもたまらなく可愛い。エメラルドの良いところを数えだすときりがないことに気づく。
すっかり私はこの面白い妻に夢中なんだ。
これは間違いなく恋。妻に本気で恋することができるなんて私は最高に運が良い。
ほとんど、のろけ話に近いことを延々と義両親にしゃべってしまった。はっ、恥ずかしい・・・・・・
「しっかりと頑張ってエメラルドの心をつかみ、一日も早く可愛い孫の顔を見せてください」
ますます、にこにこと笑みを深めるアドリオン男爵に励まされた。
「はい!」
☆彡 ★彡
「ゴリちゃん。あーんして。お肉も、お魚も、お野菜も、たぁーくさん、食べてね。それから、もう少し筋肉をつけると、もっと素敵よ」
隣に座ったエメラルドがぴったりと体を寄せながら、優雅な仕草でフォークに刺さった肉を私の唇に近づけた。彼女は優しい微笑みを浮かべている。私はその一口の肉を味わいながら、妻の愛と思いやりに感動していた。
あれから、私がオーガスタムだということを説明し、エメラルドが秘薬を飲まされたのだという推察も話した。
「なんて、素敵なのでしょう。旦那様がこのように見えることは、私にとっては最高のご褒美ですわ」
エメラルドも私と同じで、この状況を喜んで受け入れるつもりのようだ。それからの食事時の私は、いつもこのようにエメラルドにベタベタに甘やかされている。
どうやら、私の顔がゴリラ顔に見えている間は、エメラルドの心は私のものだ。だから、いっぱい愛を伝えて私のことを、もっともっと好きになってもらおう! 私の目標は愛する妻に愛されること。この面白くて賢くて美しい妻を、私は決して離さないよ!
いったん、完結
୨୧⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒୨୧
※こちらはいったん完結とし、明日はリクエストのトムのざまぁになります。更生編的ざまぁを予定しております。よろしくお願いします。
※カクヨムさんの「嫁コン」に参加しております。同じペンネームです。
感想 50
あなたにおすすめの小説
絆の糸が見える幼女は、辺境伯家の宝物になりました ~捨てられた私が本当の家族を見つけるまで~
由香雪山に捨てられた三歳の幼女リリアには、人と人を結ぶ「絆の糸」が見える力があった。
実の家族から伸びる糸は途切れそうなほど細い。
けれど、冷血辺境伯と呼ばれるアレクシスから伸びる糸は温かな金色に輝いていた。
前世では孤独だったリリアは、辺境伯家で初めて家族の愛を知る。
これは捨てられた幼女が、本当の家族の宝物になるまでの心温まる物語。
水魔法しか使えない私と婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた前世の知識をこれから使います
黒木 楓 伯爵令嬢のリリカは、婚約者である侯爵令息ラルフに「水魔法しか使えないお前との婚約を破棄する」と言われてしまう。
異世界に転生したリリカは前世の知識があり、それにより普通とは違う水魔法が使える。
そのことは婚約前に話していたけど、ラルフは隠すよう命令していた。
「立場が下のお前が、俺よりも優秀であるわけがない。普通の水魔法だけ使っていろ」
そう言われ続けてきたけど、これから命令を聞く必要もない。
「婚約破棄するのなら、貴方が隠すよう命じていた力をこれから使います」
飲んだ人を強くしたり回復する聖水を作ることができるけど、命令により家族以外は誰も知らない。
これは前世の知識がある私だけが出せる特殊な水で、婚約破棄された後は何も気にせず使えそうだ。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
死にゆく私に「愛さない」と誓った旦那様。約束通り、私は貴方を愛したまま、貴方の知らない場所で死んであげます。
しょくぱん「君を愛することはない」冷酷な公爵の言葉に、余命僅かなエリスは安堵した。愛されなければ、私の死で彼を傷つけることはない。彼女は彼を深く愛したまま、その心を隠して彼から逃亡する。一人静かに息を引き取るために。しかし彼女の死は、公爵の狂おしい後悔と執着を呼び覚ましてしまう。決して交わらない二人の、結末。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】婚約者は妹を選んだので、私は隣国の叔父の家を継ぎます ~新天地で見つける新しい出会いと居場所~
しばゎんゎん婚約者は妹を選んだ。
それなら、それで構わない。
そう思ったはずだった。
けれど、婚約破棄の直後、父が告げたのは予想外の言葉だった。
「セシリア、お前は隣国ベルンハルト王国のアレクシスに預ける」
子のいない叔父が率いる大商会。
そこで始まった新しい人生は、失うばかりだと思っていた私に、多くの出会いをもたらしてくれた。
豪快だが誰よりも聡い叔父。
新しい仲間たち。
そして、自分の能力も弱さも正しく見てくれる人。
数字を読み、人を繋ぎ、商いを支える力は、やがて商会だけでなく国を動かす仕事へと繋がっていく。
一方、私の代わりに婚約者を選んだ妹もまた、自分なりに努力しながら前へ進もうとしていた。
これは、婚約者に評価されなかった令嬢が、新天地で居場所と家族、そして本当の幸せを見つけていく物語。
※まもなく完結予定。14日以降1日1話ずつの投稿となります(夜予定)
存在感と取り柄のない私のことを必要ないと思っている人は、母だけではないはずです。でも、兄たちに大事にされているのに気づきませんでした
珠宮さくら
伯爵家に生まれた5人兄弟の真ん中に生まれたルクレツィア・オルランディ。彼女は、存在感と取り柄がないことが悩みの女の子だった。
そんなルクレツィアを必要ないと思っているのは母だけで、父と他の兄弟姉妹は全くそんなことを思っていないのを勘違いして、すれ違い続けることになるとは、誰も思いもしなかった。