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なぜならば・・・・・・すっかり回復した金のドラゴン王が、私とセオドリック王太子殿下を乗せて王都まで飛んでくれたからだった。
子ドラゴン達は、私の側を離れたくないらしく一緒に行きたがった。セオドリック王太子殿下が頭を撫でると、首を傾げながらじっと殿下を見つめる。そして、自らセオドリック王太子殿下の膝にちょこんと座った。もう一頭は私の膝に当たり前のように座る。
「なにかすっかり懐いてしまったようです。ついさっきまでは怯えていたのですよ」
「やはりアンジェリーナ様のラスクのお蔭でしょうね。聖女様の焼くパンは一口食べただけでも生きる力が湧きますし、穏やかで優しい気持ちになれますから」
セオドリック王太子殿下が私の髪をそっと撫でた。金のドラゴン王は私達が背中に乗りやすくする為、地面にお腹をこすりつけ身体を低くした。私達が乗ると驚くほどの早さで空を切るように羽ばたく。けれど、私達の身体にはあまり振動は伝わらない。私達が落ちないように気を遣ってくれているのがわかった。なので、少しも怖くはなかった。
ここから王都までは3日ほどかかる道のりも、ドラゴン王の背中に乗るとほんの一瞬に思えた。馬車を走らせるにはある程度整備された道を通る必要があり、遠回りを強いられることも多い。でも、ドラゴンなら目的地まで一直線で飛んでいける。眼下に見る景色も素晴らしくて、これほど早いドラゴンに乗っていながらも、寛げているのが不思議だった。
黄金のドラゴン王の身体が陽光に煌めく。寄り添うように飛行する銀のドラゴンの身体も同じように、陽の光を浴びて神秘的な輝きをみせた。大人のドラゴンは巨大で恐ろしいけれど、しなやかで美しい。腕の中の子ドラゴンもとても愛らしくて、いつの間にか私達の腕のなかで眠ってしまった。
「可愛い子達ですね。子犬のように小さくて人懐っこいのに、この子達がわずか数年で大人になるのが信じられません」
「そうですね。このぶんだと、アンジェリーナ様の側にずっと居そうです」
セオドリック王太子殿下がお笑いになる。そんなことができたらいいな、と思う。
(人間もドラゴンも同じくこの世に生きる者として、一緒に暮らせて支え合うことはできないのかな?)
まもなく王宮が見えてきて、王宮で働く役人達が私達にいち早く気がついた。
「ドラゴンの襲撃だ」
「この世の終わりだ」
迂闊な人達だ。まもなく、ドラゴンの背中に私とセオドリック王太子殿下が乗っているのを認めると、今度は満面の笑みで見当違いのことを口にしていた。
「聖女様はドラゴンを操る能力がおありなんだ」
「人間は遂にドラゴンを支配できるようになったのだ」
不愉快な声に私は眉をひそめた。
(なぜ、そんなふうにしか考えられないの?)
「ドラゴンと人間は対等だ。これからはお互いが助け合うべきだ。種族が違ってもわかり合えることはたくさんある」
セオドリック王太子殿下はドラゴン王から降りるなり、ピシャリとその人達を窘めた。私とセオドリック王太子殿下の意見は少しのすれ違いもなくぴったりと合っている。これから私とセオドリック王太子殿下で、ドラゴンとの新しい世界を築き上げるんだ!
❁.。.:*:.。.✽.
私達は国王陛下夫妻にカスコイン伯爵とヒルダ様の悪行を説明した。
「カスコイン伯爵・・・・・・なんて愚かな子でしょう。情けないです。こうなっては北の塔に一生監禁するしかないでしょう」
王妃殿下を涙を溜めてそうおっしゃった。
「いや、国外追放だ。もうこの国には置いておけぬわい」
国王陛下も諦めの表情だった。
「世界でも一番戒律の厳しい修道院に行かせるのはいかがでしょうか? 国外追放しても異国で犯罪を犯せば、結局は我が国の責任になります」
セオドリック王太子殿下の言葉に、私はとても冷たい提案をした。
「カスコイン伯爵は処刑してください。たくさんの人がいる大広場で公開処刑になさってください」
私は聖女らしからぬことを提案した。さきほどまで、彼には生きて償うことを願っていたのに・・・・・・けれど、これは必要なことだった。彼が出直す為に・・・・・・それは・・・・・・
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※次回、やっと断罪ですよ。カスコイン視点。
子ドラゴン達は、私の側を離れたくないらしく一緒に行きたがった。セオドリック王太子殿下が頭を撫でると、首を傾げながらじっと殿下を見つめる。そして、自らセオドリック王太子殿下の膝にちょこんと座った。もう一頭は私の膝に当たり前のように座る。
「なにかすっかり懐いてしまったようです。ついさっきまでは怯えていたのですよ」
「やはりアンジェリーナ様のラスクのお蔭でしょうね。聖女様の焼くパンは一口食べただけでも生きる力が湧きますし、穏やかで優しい気持ちになれますから」
セオドリック王太子殿下が私の髪をそっと撫でた。金のドラゴン王は私達が背中に乗りやすくする為、地面にお腹をこすりつけ身体を低くした。私達が乗ると驚くほどの早さで空を切るように羽ばたく。けれど、私達の身体にはあまり振動は伝わらない。私達が落ちないように気を遣ってくれているのがわかった。なので、少しも怖くはなかった。
ここから王都までは3日ほどかかる道のりも、ドラゴン王の背中に乗るとほんの一瞬に思えた。馬車を走らせるにはある程度整備された道を通る必要があり、遠回りを強いられることも多い。でも、ドラゴンなら目的地まで一直線で飛んでいける。眼下に見る景色も素晴らしくて、これほど早いドラゴンに乗っていながらも、寛げているのが不思議だった。
黄金のドラゴン王の身体が陽光に煌めく。寄り添うように飛行する銀のドラゴンの身体も同じように、陽の光を浴びて神秘的な輝きをみせた。大人のドラゴンは巨大で恐ろしいけれど、しなやかで美しい。腕の中の子ドラゴンもとても愛らしくて、いつの間にか私達の腕のなかで眠ってしまった。
「可愛い子達ですね。子犬のように小さくて人懐っこいのに、この子達がわずか数年で大人になるのが信じられません」
「そうですね。このぶんだと、アンジェリーナ様の側にずっと居そうです」
セオドリック王太子殿下がお笑いになる。そんなことができたらいいな、と思う。
(人間もドラゴンも同じくこの世に生きる者として、一緒に暮らせて支え合うことはできないのかな?)
まもなく王宮が見えてきて、王宮で働く役人達が私達にいち早く気がついた。
「ドラゴンの襲撃だ」
「この世の終わりだ」
迂闊な人達だ。まもなく、ドラゴンの背中に私とセオドリック王太子殿下が乗っているのを認めると、今度は満面の笑みで見当違いのことを口にしていた。
「聖女様はドラゴンを操る能力がおありなんだ」
「人間は遂にドラゴンを支配できるようになったのだ」
不愉快な声に私は眉をひそめた。
(なぜ、そんなふうにしか考えられないの?)
「ドラゴンと人間は対等だ。これからはお互いが助け合うべきだ。種族が違ってもわかり合えることはたくさんある」
セオドリック王太子殿下はドラゴン王から降りるなり、ピシャリとその人達を窘めた。私とセオドリック王太子殿下の意見は少しのすれ違いもなくぴったりと合っている。これから私とセオドリック王太子殿下で、ドラゴンとの新しい世界を築き上げるんだ!
❁.。.:*:.。.✽.
私達は国王陛下夫妻にカスコイン伯爵とヒルダ様の悪行を説明した。
「カスコイン伯爵・・・・・・なんて愚かな子でしょう。情けないです。こうなっては北の塔に一生監禁するしかないでしょう」
王妃殿下を涙を溜めてそうおっしゃった。
「いや、国外追放だ。もうこの国には置いておけぬわい」
国王陛下も諦めの表情だった。
「世界でも一番戒律の厳しい修道院に行かせるのはいかがでしょうか? 国外追放しても異国で犯罪を犯せば、結局は我が国の責任になります」
セオドリック王太子殿下の言葉に、私はとても冷たい提案をした。
「カスコイン伯爵は処刑してください。たくさんの人がいる大広場で公開処刑になさってください」
私は聖女らしからぬことを提案した。さきほどまで、彼には生きて償うことを願っていたのに・・・・・・けれど、これは必要なことだった。彼が出直す為に・・・・・・それは・・・・・・
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※次回、やっと断罪ですよ。カスコイン視点。
応援ありがとうございます!
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