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6 皇太子妃から逃れられないの?
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その少女が侍女達に連れてこられ床にねじ伏せられているのをあたしは悲しい思いで見つめていた。
ーーきっとその子は訳も分からずマリーナの指示に従っただけなのだ。そのような子供を使って卑劣なことをするなんて……もしかしたら漫画の原作の世界で皇帝陛下と皇后殿下が亡くなったのはマリーナのせいだったのかもしれない。でもこのような少女は漫画には出てこなかったし、ところどころストーリーが書き換えられているようだった。
「この少女が全て白状しました。マリーナ様に命令されて怪しげな薬を入れようとしたと。もちろん事前に防がせてもらいましたがね。だいたいこのような素人に皇帝陛下が毒殺できると思っているのですか? 愚かな人ですね」
宮廷の侍女長がマリーナを蔑んで睨んでいる。
あたしはマリーナよりその少女の方が気になる。
「その娘はどうなるですか」
あたしは皇帝陛下に尋ねた。
「死罪になる。もちろんその少女だけではなくマリーナもそのようになるだろう」
皇帝陛下と皇后殿下を毒殺しようと目論んだ者は全て死刑になるのはこの世界の常識だった。
「ちょっとお姉様。そんな少女を心配するよりも妹の私を心配するべきじゃありませんか?助けてください。お願い! 妹じゃありませんか」
マリーナは私にすがってきたけれど、このような事態になってはどうすることもできないのだった。
「薬はどういった作用のものなんですか?」
あたしの疑問に宮廷の薬師が横から返事をする。
「魔道士がよく使うものです。自然死を装えてゆっくりと死に至らしめる弱い毒です。およそ1年から2年ほどかけてゆっくりと体を蝕む怖い毒です。」
そんなものを盛らせたとあっては誰もマリーナを救うことはできない。
「なぜこのような無謀なことをしたのです? それほど皇太子が好きならば2人で手を取り合って駆け落ちでもすれば良かったのに…恋の為に身分を捨てる……ロマンチックでしょう?」
あたしはついそんな幻想的な言葉を口にしてしまう。
ー駆け落ちなんて恋愛小説や漫画の王道だもの!
「ロマンチック?」
マリーナは渋い顔つきで首をかしげている。
「父上、どうかマリーナに減刑をお願いします。このマリーナは根はいい子なんです。何とかなりませんか?」
マリーナに心酔している皇太子殿下は必死になって皇帝陛下にお願いをした。
「何とかだと? 皇帝を殺そうとした本来死罪にするべき人間を助けろと言うのか? どこまで愚かなんだ! お前は皇太子の器ではない。さきほど、ローズはいいことを言った。お前らにロマンチックなプレゼントをあげよう。廃太子してやるからその邪悪な女と賎民に墜ちよ! 死罪を見逃すのだ。それくらいの代償は払え」
皇帝陛下からそう言われた皇太子は青ざめて叫ぶ。
「皇太子の俺がいきなり賎民に?それは酷い!」
「酷くはない! このマリーナを庇うと言うのだからそれぐらいの覚悟を持って」
「俺はローズの夫ですよ。俺が賎民になったらローズも賎民になりますよ!」
「大丈夫だ。フィンリーがいる。ローズだってマリーナを贔屓する夫など嫌であろう? お前とローズは離縁し、フィンリーが皇太子になりローズはそのまま皇太子妃だ。とても妥当な案だと思う」
皇帝陛下はにっこりとあたしに笑いかけたのだった。
ーーだ、か、ら、妃がつく立場からは逃げたいんだってばぁーー。なんで皇太子妃のままなのぉ?
ーーきっとその子は訳も分からずマリーナの指示に従っただけなのだ。そのような子供を使って卑劣なことをするなんて……もしかしたら漫画の原作の世界で皇帝陛下と皇后殿下が亡くなったのはマリーナのせいだったのかもしれない。でもこのような少女は漫画には出てこなかったし、ところどころストーリーが書き換えられているようだった。
「この少女が全て白状しました。マリーナ様に命令されて怪しげな薬を入れようとしたと。もちろん事前に防がせてもらいましたがね。だいたいこのような素人に皇帝陛下が毒殺できると思っているのですか? 愚かな人ですね」
宮廷の侍女長がマリーナを蔑んで睨んでいる。
あたしはマリーナよりその少女の方が気になる。
「その娘はどうなるですか」
あたしは皇帝陛下に尋ねた。
「死罪になる。もちろんその少女だけではなくマリーナもそのようになるだろう」
皇帝陛下と皇后殿下を毒殺しようと目論んだ者は全て死刑になるのはこの世界の常識だった。
「ちょっとお姉様。そんな少女を心配するよりも妹の私を心配するべきじゃありませんか?助けてください。お願い! 妹じゃありませんか」
マリーナは私にすがってきたけれど、このような事態になってはどうすることもできないのだった。
「薬はどういった作用のものなんですか?」
あたしの疑問に宮廷の薬師が横から返事をする。
「魔道士がよく使うものです。自然死を装えてゆっくりと死に至らしめる弱い毒です。およそ1年から2年ほどかけてゆっくりと体を蝕む怖い毒です。」
そんなものを盛らせたとあっては誰もマリーナを救うことはできない。
「なぜこのような無謀なことをしたのです? それほど皇太子が好きならば2人で手を取り合って駆け落ちでもすれば良かったのに…恋の為に身分を捨てる……ロマンチックでしょう?」
あたしはついそんな幻想的な言葉を口にしてしまう。
ー駆け落ちなんて恋愛小説や漫画の王道だもの!
「ロマンチック?」
マリーナは渋い顔つきで首をかしげている。
「父上、どうかマリーナに減刑をお願いします。このマリーナは根はいい子なんです。何とかなりませんか?」
マリーナに心酔している皇太子殿下は必死になって皇帝陛下にお願いをした。
「何とかだと? 皇帝を殺そうとした本来死罪にするべき人間を助けろと言うのか? どこまで愚かなんだ! お前は皇太子の器ではない。さきほど、ローズはいいことを言った。お前らにロマンチックなプレゼントをあげよう。廃太子してやるからその邪悪な女と賎民に墜ちよ! 死罪を見逃すのだ。それくらいの代償は払え」
皇帝陛下からそう言われた皇太子は青ざめて叫ぶ。
「皇太子の俺がいきなり賎民に?それは酷い!」
「酷くはない! このマリーナを庇うと言うのだからそれぐらいの覚悟を持って」
「俺はローズの夫ですよ。俺が賎民になったらローズも賎民になりますよ!」
「大丈夫だ。フィンリーがいる。ローズだってマリーナを贔屓する夫など嫌であろう? お前とローズは離縁し、フィンリーが皇太子になりローズはそのまま皇太子妃だ。とても妥当な案だと思う」
皇帝陛下はにっこりとあたしに笑いかけたのだった。
ーーだ、か、ら、妃がつく立場からは逃げたいんだってばぁーー。なんで皇太子妃のままなのぉ?
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