12 / 22
本編
第6話 抜擢
しおりを挟む
洗濯の山と格闘を始めて早3日……
「だいぶ少なくなってきたんじゃない?毎日追加されるけどっ」
もう、ゼルダさんに頼まなくなったらしく、毎日追加で持ってこられるけど、洗濯カゴ置き場の地面が見え始めている。
最初は地面すら見えなかったもんね。
「シュリさん」
「ん?」
洗濯籠を持って立ち上がった時、後ろから声を掛けられた。扉付近で1人の騎士が立っていて、私を手招きし呼んでいた。
「どうしました?クロム様」
この方は、シルヴァン副団長の補佐をしている方だ……そんな方が、なぜ私を呼ぶのか……
まさか……
顔が青ざめていく……
クロム様が不思議そうな顔をして、「大丈夫ですか?」と聞いてくるが、全然大丈夫じゃない!!
「団長達がシュリさんをお呼びです。共に来て頂けますか?」
(やっぱり~~~!!!!)
断罪を待つ気分でクロム様に付いていく。
前を歩くクロム様にバレないよう、頭の中で考えを整理する。
やっぱりバレたんだよね……私がルーファス様やジークベルト様が目当てだって……
チラシに書かれた、処罰の文字を思い浮かべ……どんな処罰が下されるのか…考える。
(王都追放かしら……処刑は無いよね。まさか、国外追放なんてことも無いと思いたい)
前を行くクロム様を観察してみる。
私を忌避する態度は見れない。
どうして?
シルヴァン様なら、嬉嬉として私の事を隊に言いそうなものだし……
因みにカミナやリオナ、メルナの事は知れ渡っているよ。
カミナは仕事もせずにシルヴァン様のお尻を追い掛け回す痴女。
リオナとメルナは兵舎を抜け出しては、王太子や第2王子を探しに城へ行っていたらしく評判は悪かった。
「着きました」
兵舎の上階、応接室の前でクロム様は止まった。自然に私の足も止まる。
扉をノックし入室の許可を貰う。
部屋の中には、
レオン王太子殿下、グレイグ王兄殿下、ルーファス宰相、ジークベルト騎士団長、シルヴァン副団長がいた。
「っ!!」
(いやぁ、入りたくないぃ~~!)
「シュリ、此方へ」
シルヴァン様が立ち上がり、私の元に来ると席に案内してくれた。
場所は……ジークベルト様の隣ぃ?!
シルヴァン様が座っていた場所に私を座らせ、自分は後ろに立った。
なんですか?なんですか?
私に最後の望みを叶えてくれてるんですか?!
はっ!
まさか、思い出を胸に出てけとか言うんですか?!
などと、悶々と何が起きたのか考えていると、レオン王太子が声を掛けてきた。
「君が、シュリか?」
レオン王太子殿下が、微笑んで私を見た。顔は笑っているが、絶対なにか企んでいる顔だ……あれは。
だってレオン王太子は、笑顔で毒を吐く腹黒キャラだもん。
「は、はい。シュリと申します」
「あぁ、そんなに硬くならないでいい」
いや、無理です。
だってあんた、王太子じゃん。……腹黒だけど。
「はは、無理だろ。お前は王太子なんだから」
「伯父上……」
いま、レオン王太子に声をかけた方はグレイグ様。この方も「天翼と黒竜の花嫁」の攻略対象なんだよ。2人とも背中に大きな翼を持つんだけど……今は仕舞っているかな?無いと普通の人間みたい。
グレイグ様はレオン様と違って、腹黒さは無く、見た目通りの人物。正義感に溢れ頼りになる兄貴的な人。
「まぁ、良いです。君を呼んだのには、理由がある。実は、聖女を迎えに行くのだが、君も同行して欲しい」
「……は?」
「ジークベルトとシルヴァンには許可を貰ってある」
驚いて隣にいるジークベルト様を見た。
自分の最推しだとか、イケメンだとか、考えずに……そんな重要な案件になぜ自分が?と目で訴えた。
「適任だからだ」
ジークベルト様は、それしか言わない。
てきにん?適任?!
そんな訳ないでしょう?!私はゲームにも登場しないモブでもない人間だよ?!
聖女を迎えにって事は……アーリアの事だよね?!シンシア様とライラシア様はいるから。
って事は、ゲームが始まるプロローグの段階の…アーリア覚醒イベントだよね?!
私みたいなモブの中のモブが行くなんて聞いてないんですけど!!
「混乱するのも分かります。ですが今回、聖女様を迎えるにあたり、同行する人間の選抜が問題になりまして」
「まぁ、単直に言うと、信用出来ない奴ばかりという事だな!」
「?」
信用出来ない?
そんな訳ないと思うけど……、城に使える人たちは身元も、能力もある人達ばかり。
私が混乱していると、後ろにいたシルヴァン様が説明してくれる。
「聖女様の世話に、侍女をつける話になったのですが…レオン様や私が行く事で、侍女の選抜が上手くいきませんでした」
ああー、そりゃ、レオン様やシルヴァン様が行くなら、みんな目がハートになるだろうな。仕事にならないかもね。
「なので、あなたに話が行きました」
うんうんと納得していたら、後ろから爆弾発言された。
「は?!なんで私?!」
王太子やグレイグ様の前で不敬だと思ったが、声に出てしまった時点で諦めた。
「あなたは、……仕事は真面目に行っていましたから。だから、お願い出来ませんか?」
ルーファス様の言葉は嬉しかったが、素直に喜べない自分がいた。仕事はのはの所だけ強調された気がするから。
だからなのか、中々頷けない私にレオン様は、ニコリと笑みを深め、最後の切り札と言わんばかりに言い募った。
「引き受けられない?ならば、こちらにも考えがあるよ。君さぁ、仕事は真面目だけど…ルーファスやジークが目当てだよね?処罰……受けたいの?」
「っ!!」
やっぱり、バレてる~~~!!
「引き受けてくれるよね?」
「……」
「シュリ」
「わ、分かりました。引き受させて頂きます」
完全に脅されました。
笑顔のレオン様は怖くて……絶対に逆らってはいけない何かを感じます。
「脅すようなことを言って悪かったな。だが、お前は真面目に仕事をしている、辞めさせるような事は無いから安心しろ」
グレイグ様が慰めるように言ってくれますが……脅された後では信用に欠けますっ
青ざめた顔で、俯き頷く私は、この時の皆の表情に気付きませんでした。
レオン様は、グレイグ様に睨みつけられ少しバツが悪そうに……
ルーファス様とシルヴァン様は、申し訳なさそうに……
ジークベルト様は少し悲しそうに……
ジークベルト様の手がシュリの頭の上に伸び、そっと撫でた。
「っ!」
シュリがバッと顔を上げると、悲しそうな顔をしたジークベルトと、目が合った。
「では、シュリ頼んだぞ。出発は、4日後だ」
「畏まりました」
「だいぶ少なくなってきたんじゃない?毎日追加されるけどっ」
もう、ゼルダさんに頼まなくなったらしく、毎日追加で持ってこられるけど、洗濯カゴ置き場の地面が見え始めている。
最初は地面すら見えなかったもんね。
「シュリさん」
「ん?」
洗濯籠を持って立ち上がった時、後ろから声を掛けられた。扉付近で1人の騎士が立っていて、私を手招きし呼んでいた。
「どうしました?クロム様」
この方は、シルヴァン副団長の補佐をしている方だ……そんな方が、なぜ私を呼ぶのか……
まさか……
顔が青ざめていく……
クロム様が不思議そうな顔をして、「大丈夫ですか?」と聞いてくるが、全然大丈夫じゃない!!
「団長達がシュリさんをお呼びです。共に来て頂けますか?」
(やっぱり~~~!!!!)
断罪を待つ気分でクロム様に付いていく。
前を歩くクロム様にバレないよう、頭の中で考えを整理する。
やっぱりバレたんだよね……私がルーファス様やジークベルト様が目当てだって……
チラシに書かれた、処罰の文字を思い浮かべ……どんな処罰が下されるのか…考える。
(王都追放かしら……処刑は無いよね。まさか、国外追放なんてことも無いと思いたい)
前を行くクロム様を観察してみる。
私を忌避する態度は見れない。
どうして?
シルヴァン様なら、嬉嬉として私の事を隊に言いそうなものだし……
因みにカミナやリオナ、メルナの事は知れ渡っているよ。
カミナは仕事もせずにシルヴァン様のお尻を追い掛け回す痴女。
リオナとメルナは兵舎を抜け出しては、王太子や第2王子を探しに城へ行っていたらしく評判は悪かった。
「着きました」
兵舎の上階、応接室の前でクロム様は止まった。自然に私の足も止まる。
扉をノックし入室の許可を貰う。
部屋の中には、
レオン王太子殿下、グレイグ王兄殿下、ルーファス宰相、ジークベルト騎士団長、シルヴァン副団長がいた。
「っ!!」
(いやぁ、入りたくないぃ~~!)
「シュリ、此方へ」
シルヴァン様が立ち上がり、私の元に来ると席に案内してくれた。
場所は……ジークベルト様の隣ぃ?!
シルヴァン様が座っていた場所に私を座らせ、自分は後ろに立った。
なんですか?なんですか?
私に最後の望みを叶えてくれてるんですか?!
はっ!
まさか、思い出を胸に出てけとか言うんですか?!
などと、悶々と何が起きたのか考えていると、レオン王太子が声を掛けてきた。
「君が、シュリか?」
レオン王太子殿下が、微笑んで私を見た。顔は笑っているが、絶対なにか企んでいる顔だ……あれは。
だってレオン王太子は、笑顔で毒を吐く腹黒キャラだもん。
「は、はい。シュリと申します」
「あぁ、そんなに硬くならないでいい」
いや、無理です。
だってあんた、王太子じゃん。……腹黒だけど。
「はは、無理だろ。お前は王太子なんだから」
「伯父上……」
いま、レオン王太子に声をかけた方はグレイグ様。この方も「天翼と黒竜の花嫁」の攻略対象なんだよ。2人とも背中に大きな翼を持つんだけど……今は仕舞っているかな?無いと普通の人間みたい。
グレイグ様はレオン様と違って、腹黒さは無く、見た目通りの人物。正義感に溢れ頼りになる兄貴的な人。
「まぁ、良いです。君を呼んだのには、理由がある。実は、聖女を迎えに行くのだが、君も同行して欲しい」
「……は?」
「ジークベルトとシルヴァンには許可を貰ってある」
驚いて隣にいるジークベルト様を見た。
自分の最推しだとか、イケメンだとか、考えずに……そんな重要な案件になぜ自分が?と目で訴えた。
「適任だからだ」
ジークベルト様は、それしか言わない。
てきにん?適任?!
そんな訳ないでしょう?!私はゲームにも登場しないモブでもない人間だよ?!
聖女を迎えにって事は……アーリアの事だよね?!シンシア様とライラシア様はいるから。
って事は、ゲームが始まるプロローグの段階の…アーリア覚醒イベントだよね?!
私みたいなモブの中のモブが行くなんて聞いてないんですけど!!
「混乱するのも分かります。ですが今回、聖女様を迎えるにあたり、同行する人間の選抜が問題になりまして」
「まぁ、単直に言うと、信用出来ない奴ばかりという事だな!」
「?」
信用出来ない?
そんな訳ないと思うけど……、城に使える人たちは身元も、能力もある人達ばかり。
私が混乱していると、後ろにいたシルヴァン様が説明してくれる。
「聖女様の世話に、侍女をつける話になったのですが…レオン様や私が行く事で、侍女の選抜が上手くいきませんでした」
ああー、そりゃ、レオン様やシルヴァン様が行くなら、みんな目がハートになるだろうな。仕事にならないかもね。
「なので、あなたに話が行きました」
うんうんと納得していたら、後ろから爆弾発言された。
「は?!なんで私?!」
王太子やグレイグ様の前で不敬だと思ったが、声に出てしまった時点で諦めた。
「あなたは、……仕事は真面目に行っていましたから。だから、お願い出来ませんか?」
ルーファス様の言葉は嬉しかったが、素直に喜べない自分がいた。仕事はのはの所だけ強調された気がするから。
だからなのか、中々頷けない私にレオン様は、ニコリと笑みを深め、最後の切り札と言わんばかりに言い募った。
「引き受けられない?ならば、こちらにも考えがあるよ。君さぁ、仕事は真面目だけど…ルーファスやジークが目当てだよね?処罰……受けたいの?」
「っ!!」
やっぱり、バレてる~~~!!
「引き受けてくれるよね?」
「……」
「シュリ」
「わ、分かりました。引き受させて頂きます」
完全に脅されました。
笑顔のレオン様は怖くて……絶対に逆らってはいけない何かを感じます。
「脅すようなことを言って悪かったな。だが、お前は真面目に仕事をしている、辞めさせるような事は無いから安心しろ」
グレイグ様が慰めるように言ってくれますが……脅された後では信用に欠けますっ
青ざめた顔で、俯き頷く私は、この時の皆の表情に気付きませんでした。
レオン様は、グレイグ様に睨みつけられ少しバツが悪そうに……
ルーファス様とシルヴァン様は、申し訳なさそうに……
ジークベルト様は少し悲しそうに……
ジークベルト様の手がシュリの頭の上に伸び、そっと撫でた。
「っ!」
シュリがバッと顔を上げると、悲しそうな顔をしたジークベルトと、目が合った。
「では、シュリ頼んだぞ。出発は、4日後だ」
「畏まりました」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
693
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる