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34.始まりの迷宮 クリア
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最深部では、動ける者たちが
怪我人や意識のない者を安置させ、
周囲を警戒しながら、地上からの救援を待っていた。
誠一は、リシェーヌの姿を瞳に焼き付けた直後、
意識を失っていた。
急激な力の解放に身体が付いていけず、
骨折、筋繊維の断裂等々が起こっていた。
ヴェルも複数個所を骨折していたが、
意識は繋ぎとめていた。
入り口の前で警戒に当たっているシエンナが
リシェーヌに話しかけた。
「ちょっと、あのさっきから情けない呻き声を
発しているあほをなんとしなさいよ。
リシェーヌ、あんた、ご指名を受けているでしょ。
キスでもしてやれば、静かになるでしょ。
うるさいったら、ありゃしない。
せめて、手でも握ってやりなさいよ。
あれでも逃げずに立ち向かったんだから」
「むっ、シエンナにその役は譲る。
視界を遮れば、あなたでも問題ない。
ここは任せて、ファブの方へ向かって」
涙を流しながら、痛みと自分の功績を
訴えるファブリッツィオに視線すら
向けずに答えるリシェーヌだった。
「ならば、仕方ないのう。
わしが代わりにその役目を請け負うとするか」
言い合いをしていたリシェーヌとシエンナの
二人の瞳にその言葉の主が映ると、
二人は安堵の表情を浮かべた。
「「学院長」」
二人の言葉は重なった。
学院長は二人に微笑みかけ、ファブリッツィオに
近づくと杖を軽く彼に向かってかざした。
「リシェーヌぅー、愛してるぅー。
そっそれは二人にはまだ、早すぎるー」
いい夢を見ているのだろう。
酷い怪我を追っているにも関わらず、
にやにやした表情で更にうるさくなる
ファブリッツィオであった。
シエンナはお腹を抱えて笑っていた。
ヴェルは、笑うと苦しいため、必死に笑いを
堪えていた。
リシェーヌは、顔を真っ赤にして、
言いようのない怒りの矛先をどこに
向けていいか分からず、プルプルしていた。
「この魔石の大きさからすると、オーガかのう。
戦闘の詳細は後ほどとして、誰が止めを刺したのかな?」
「アルです。
みんなが倒れ、もう駄目だと絶望した時に
アルフレート・フォン・エスターライヒが
最後に立ち向かい、オーガの首を刎ねました」
瞳を輝かせて、誇らしげに語るシエンナだった。
「そうかそうか、ならば、慣例に従って、
この魔石の所有者はアルフレート君とするかのう」
学院長は一瞬、倒れている誠一に目を向けた。
「さて、後続が追い付いてきたようだな。
地上に戻るとするかのう」
学院長の言葉に話せる者は、
「はい」と力いっぱい返事をした。
怪我人や意識のない者を安置させ、
周囲を警戒しながら、地上からの救援を待っていた。
誠一は、リシェーヌの姿を瞳に焼き付けた直後、
意識を失っていた。
急激な力の解放に身体が付いていけず、
骨折、筋繊維の断裂等々が起こっていた。
ヴェルも複数個所を骨折していたが、
意識は繋ぎとめていた。
入り口の前で警戒に当たっているシエンナが
リシェーヌに話しかけた。
「ちょっと、あのさっきから情けない呻き声を
発しているあほをなんとしなさいよ。
リシェーヌ、あんた、ご指名を受けているでしょ。
キスでもしてやれば、静かになるでしょ。
うるさいったら、ありゃしない。
せめて、手でも握ってやりなさいよ。
あれでも逃げずに立ち向かったんだから」
「むっ、シエンナにその役は譲る。
視界を遮れば、あなたでも問題ない。
ここは任せて、ファブの方へ向かって」
涙を流しながら、痛みと自分の功績を
訴えるファブリッツィオに視線すら
向けずに答えるリシェーヌだった。
「ならば、仕方ないのう。
わしが代わりにその役目を請け負うとするか」
言い合いをしていたリシェーヌとシエンナの
二人の瞳にその言葉の主が映ると、
二人は安堵の表情を浮かべた。
「「学院長」」
二人の言葉は重なった。
学院長は二人に微笑みかけ、ファブリッツィオに
近づくと杖を軽く彼に向かってかざした。
「リシェーヌぅー、愛してるぅー。
そっそれは二人にはまだ、早すぎるー」
いい夢を見ているのだろう。
酷い怪我を追っているにも関わらず、
にやにやした表情で更にうるさくなる
ファブリッツィオであった。
シエンナはお腹を抱えて笑っていた。
ヴェルは、笑うと苦しいため、必死に笑いを
堪えていた。
リシェーヌは、顔を真っ赤にして、
言いようのない怒りの矛先をどこに
向けていいか分からず、プルプルしていた。
「この魔石の大きさからすると、オーガかのう。
戦闘の詳細は後ほどとして、誰が止めを刺したのかな?」
「アルです。
みんなが倒れ、もう駄目だと絶望した時に
アルフレート・フォン・エスターライヒが
最後に立ち向かい、オーガの首を刎ねました」
瞳を輝かせて、誇らしげに語るシエンナだった。
「そうかそうか、ならば、慣例に従って、
この魔石の所有者はアルフレート君とするかのう」
学院長は一瞬、倒れている誠一に目を向けた。
「さて、後続が追い付いてきたようだな。
地上に戻るとするかのう」
学院長の言葉に話せる者は、
「はい」と力いっぱい返事をした。
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