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42.冒険者ギルド
しおりを挟む夏の長期休暇の前の最終日、
中等部のどの学生も晴れやかな表情であった。
恐らくこれほどの表情をするのは、
何か月ぶりであろうか。
補講のある学生も1週間だけであり、
それさえ終われば、長い休みに突入できた。
誠一、リシェーヌ、シエンナたちは、
ヴェルの補講が終わり次第、隊商の護衛に
出発する予定であった。
「アル、この一週間はどうするの?」
最終の講義が終わり、リシェーヌが尋ねた。
「トレーニングと復習かな。特にすることないし」
「ふーん、ご両親に会ったりしないんだ。
じゃ、一緒に冒険者ギルドで手頃な依頼を受けない?」
誠一の目が光った。
VRゲームにありがちなギルド依頼のイベントと
錯覚していた。
元の世界に戻ることが最終目的とはいえ、
最近の誠一には、この世界を知る、楽しむ
というような心境の変化があった。
「やろう!まずは、薬草集めとか、
何だろどぶさらいとかのFランクの依頼からでしょ」
若干、興奮気味の誠一が捲し立てた。
誠一の剣幕に押されて、
少々、動揺するリシェーヌだった。
「えっ、えっその、まあ、取り敢えず
ギルドで依頼を見てからね。
じゃあ、一緒にやるということで」
二人はその足でギルドに向かった。
ヴェルは学院でそのまま補講開始、
シエンナは、実家に戻る準備を始めていた。
街中を歩く二人は、周囲の注目を浴びていた。
黄金の髪の美男子とダークグリーンの髪の美少女が
何やら楽しそうに歩いている様に
誰しもが目を向けていた。
無論、羨望、妬みを持つ者もいただろうが、
大半は暖かく見守るような視線を送っていた。
周りの視線を感じる誠一は、落ち着かなかった。
リシェーヌと歩いているなら、仕方ないなと諦め、
極力、気にしないようにしていた。
「うーん、アルと街中を一緒に歩くと
女性のきつい視線を感じるね。
もてる男は違います。
私は何も悪くないのに仕方ありませんね」
とんでも発言をするリシェーヌであった。
この娘、頭が非常に良いにも関わらず、
たまにとんでもないことを言い出すと
常々思う誠一だった。
ギルドに到着すると、依頼の掲示されている
ボードを二人で眺めながら、あれこれと依頼について話した。
「ランクねー。
まあ、定番だけど最低ランクスタートだよね。
となると、薬草の採取や倉庫の運搬作業になるね。
迷宮や遺跡探索のためのガイドブックも
ランクが低レベルのところしか購入できそうにないかな」
誠一が冒険者証と照らし合わせて、感想を述べた。
「むっ、二人だから依頼発注時にチーム名を決めないと。
この採取依頼を受けない?
採取できる場所からすると途中で色々と
getできるかもしれない」
誠一は頷き、了解した。
「アル、受付に行こ。あと、チーム名決めてね」
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