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71.鍛冶場6

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「よっしゃー!ヨークさんの鍛えた武具ゲット」
ヴェルが叫んだ。
「おいおい、俺の鍛えたのは譲れんぞ。
そんなことがバレたら、組合から追い出されて、
商流から切り離されちまうよ。
譲れるのはラッセルの試作品や練習に
打った品だけだ」
ヨークが慌てて、ヴェルの言葉を訂正した。

「うーん、それでも問題ないです。
ラッセルさんの製作する武具は
少し変わってそうですしね」
リシェーヌは納得しているようだった。

ラッセルは製作した武器を見せるために
3人を案内した。
一般的には流通していないような形状の武器が
無造作に並んでいた。
ヴェルとリシェーヌは珍しそうに眺め、
手に取り、ラッセルに説明を求めた。
しかし、誠一にとって、それらの武器は、
ファンタジー系のVRで良く見るものばかりであった。

斬る・突く・叩く・引っかけるといった多様な用途を
持つハルバート。

のこぎりのような形状の刃を両側に持ち、
傷口を広げ、死に誘うフランベルジェ。

刃の逆側に櫛のような形状を持たせて、
剣を破壊するソード・ブレイカー。

三日月のような形状でリシェーヌくらいの
大きさの刃を持つデスサイス。

刃がなく柄の先端に魔晶石が
埋め込まれている魔術刀。

興味津々の二人にラッセルも余程、
うれしかったらしく、熱心に説明していた。

デスサイスを持ち、振り回すリシェーヌの姿が
あまりにも誠一のイメージに合致していたが、
当の本人は首を傾げていた。

「うーん、なんだろ、この違和感。
そうだ、これ、大きな草刈り鎌だ」
憑き物が落ちたような納得した表情で答えた。

その言葉にラッセルが悔しそうな表情をした。
「ぐううっ、師匠と同じことを」

次にリシェーヌは魔術刀を試した。
魔晶石の先から1.5mほどの刃を模した光が
発現されていた。
リシェーヌの眉間に皺が寄った。そして、柄を手放した。
「これ無理。こんなの維持できるほどの魔力を
内包している人間なんていないから。
歴代の著名な魔術師でも無理。
魔王や魔神の武器でも作ったの?」

ラッセルは納得したようだった。
「うん、納得できました。
いままで誰も刃の形状を発現することが
できなかったからね。
剣とそこから魔術を射出するようにすれば、
有用になるね。
これは次の創作意欲が湧いたよ」
リシェーヌはあきれたように柄を
ラッセルに返した。

「これいいな、ハルバート?これはいい。
ラッセルさん、これを俺の短槍と
同じサイズにできない?」
ヴェルは、身振り手振りでサイズを
説明していたが、ラッセルはラッセルで
ハルバートの機能性について、説明していた。

つまり、会話がかみ合っていなかった。
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