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105.乾いた感情6
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「いやいや、何か方法があるから、
ここへ封印したんでしょ。
もっと成長させてから、ここに封印したかったんじゃ?」
誠一はみっともなく喚き叫んだ。
彼女にクリスタルの中でもいいから、
瞳を開き、自分を見て欲しかった。
「あるにはあるが、その可能性にかけるのかのう?
君の一生をかけることになるやもしれぬ。
それでも到達できぬ公算の方が高いがのう」
最早、誠一にとってNPCがどうこう、
ゲーム上の架空のキャラクターが
どうこうのようなことは頭からすっかり
消えていた。
ただ単に彼女の瞳を見たい、
彼女と話したい、彼女と物語と紡ぎたい、
それだけだった。
「太古の神殿、またの名を祈りの神殿と
呼ばれる遺跡がある。
遥か昔、神々の恩恵が薄かった頃、
人々が己の病を回復することを祈り、
己が朽ち果てていくことを呪い、
怨嗟の声が絶えず木霊していた場所じゃ。
その最深部には、全ての病や怪我を
治す霊薬・エリクサーが安置されていると
言われている。
一方で全てのものを腐らせる毒薬が
安置されているとも言われている」
一度、ファウスティノは言葉を切った。
誠一は彼の視線から目を離さずに次の言葉を待った。
「ふむ、良い目じゃ。
エヴァニアの言う通りじゃったのう」
「もう一つは、神々から下賜されることかのう。
良く分からぬが課金、排出率という
縛りがあるようじゃ。
エリクサーほどの秘宝となると
神々にとっても何かしらの制約が
あるかもしれん」
誠一はファウスティノの話を聞いて、
神から下賜されることは諦めた。
恐らくプレーヤーは無課金者であることは
容易に想像できた。
それにエリクサークラスのアイテムを
引き当てるには相当な金額が必要なことも
理解していた。
通常排出率0.001%、イベント時に
数万円の課金でやっと当たる激レアアイテムであった。
無課金者にそれを求めるのは無理であった。
早々に諦めて、祈りの神殿を攻略することに決めた。
「太古の神殿を攻略します。場所を教えてください」
「無理じゃよ。
同学年でトップですらない君では
遺跡にすら到達することはできまい。
本気で攻略する気ならば、残りの学院生活で
ただの一度も譲らずに主席で卒業しなさい。
なおかつ、卒業までに最低でも中ランクの迷宮を
攻略しなさい。
そうすれば、自ずと道は見えてくるだろう」
ファウスティノは敢えて、道の標が己の限界を
悟り諦めることも含まれている点を言わなかった。
しかし、誠一はそのことも理解した上で
ファウスティノからリシェーヌへ視線を移し、呟いた。
「リシェーヌ、君の物語をここで終わらせない」
ここへ封印したんでしょ。
もっと成長させてから、ここに封印したかったんじゃ?」
誠一はみっともなく喚き叫んだ。
彼女にクリスタルの中でもいいから、
瞳を開き、自分を見て欲しかった。
「あるにはあるが、その可能性にかけるのかのう?
君の一生をかけることになるやもしれぬ。
それでも到達できぬ公算の方が高いがのう」
最早、誠一にとってNPCがどうこう、
ゲーム上の架空のキャラクターが
どうこうのようなことは頭からすっかり
消えていた。
ただ単に彼女の瞳を見たい、
彼女と話したい、彼女と物語と紡ぎたい、
それだけだった。
「太古の神殿、またの名を祈りの神殿と
呼ばれる遺跡がある。
遥か昔、神々の恩恵が薄かった頃、
人々が己の病を回復することを祈り、
己が朽ち果てていくことを呪い、
怨嗟の声が絶えず木霊していた場所じゃ。
その最深部には、全ての病や怪我を
治す霊薬・エリクサーが安置されていると
言われている。
一方で全てのものを腐らせる毒薬が
安置されているとも言われている」
一度、ファウスティノは言葉を切った。
誠一は彼の視線から目を離さずに次の言葉を待った。
「ふむ、良い目じゃ。
エヴァニアの言う通りじゃったのう」
「もう一つは、神々から下賜されることかのう。
良く分からぬが課金、排出率という
縛りがあるようじゃ。
エリクサーほどの秘宝となると
神々にとっても何かしらの制約が
あるかもしれん」
誠一はファウスティノの話を聞いて、
神から下賜されることは諦めた。
恐らくプレーヤーは無課金者であることは
容易に想像できた。
それにエリクサークラスのアイテムを
引き当てるには相当な金額が必要なことも
理解していた。
通常排出率0.001%、イベント時に
数万円の課金でやっと当たる激レアアイテムであった。
無課金者にそれを求めるのは無理であった。
早々に諦めて、祈りの神殿を攻略することに決めた。
「太古の神殿を攻略します。場所を教えてください」
「無理じゃよ。
同学年でトップですらない君では
遺跡にすら到達することはできまい。
本気で攻略する気ならば、残りの学院生活で
ただの一度も譲らずに主席で卒業しなさい。
なおかつ、卒業までに最低でも中ランクの迷宮を
攻略しなさい。
そうすれば、自ずと道は見えてくるだろう」
ファウスティノは敢えて、道の標が己の限界を
悟り諦めることも含まれている点を言わなかった。
しかし、誠一はそのことも理解した上で
ファウスティノからリシェーヌへ視線を移し、呟いた。
「リシェーヌ、君の物語をここで終わらせない」
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